起
初連載です。よろしくお願いします。
ただの分割ともいう。
ジャンルとキーワードに困りました。
「お姉さま!大変ですうぅ!」
どこかの宿泊施設でドラマでも始まる気がするのは何故かしら?ちなみにここは昼時の王立学園の食堂ですの。申し遅れました。私は伯爵令嬢と申しまして、学園の1年生で現在14歳です。
「モブ子さん。こんな往来で大きな声を出すのははしたなくてよ。」
お姉さまと呼ばれていますが彼女と血縁関係はございません。なぜか私の金髪縦ロールが気に入ったとかですりすりさせてくださいと毎日のように纏わりついてきますの。ちなみに彼女は侯爵令嬢。私は伯爵令嬢。彼女の誕生日は私の一か月前なのにお姉さま呼び。解せませぬ・・・
まあ悪い子ではないですし、なぜかいろいろなところで情報通なので一緒にいるとたすかってはいるのですけれど・・・・
「わたし思い出したんですぅ。」
いきなり魔法陣でも綴りそうな勢いですがどうされたのでしょうか?
「また前世の記憶でいらっしゃるのですか?」
モブ子さんはたまに前世の記憶とやらで、ちょっとしたアドバイスをいただくのですが、不思議と、なかなかに有意義な話が多くわたくしも助かっております。それにしても前世の記憶があるというのであれば精神年齢は相当高いはず。なぜお姉さま呼び。解せ解せませぬ・・・。
「そうなんですぅ。実はこの世界は私が前世でやっていた中世ヨーロッパ風学園乙女ゲーム『ギャラクシープリンス~五つの色の王子様~2』の世界なんですぅ。」
いろいろわからないことがあったので乙女ゲームのことについて聞いてみた。
「乙女ゲーム?ゲームのことは以前に少し聞いていましたけれど、それはどういったものなのかしら?」
これまでも格闘術などでいろいろと参考にさせていただきましたから、彼女の情報の有用性は疑うまでもありません。
「えっとですねぇ~。ヒロインの女の子が攻略対象者と呼ばれる方々と恋愛を通して仲良くなって、最終的には結ばれるんですぅ。それでお姉さまは恋のスパイスとしてその二人の邪魔をする悪役令嬢で、攻略対象者の婚約者なんですぅ。そして行われるえげつない断罪!卒業パーティーの日に婚約破棄とともに死刑を言い渡されるんですぅ。」
ほうほう・・・。それは大変ですね。
「五色王子ということは、対象者はみな髪色の違う王子殿下たちなの?でも私は婚約なんてしていないのだけれど・・・・」
「婚約は多分近日中だと思いますぅ。かみんぐすーんってやつですぅ。2年生の始業式がゲームスタートでその時には婚約者になっていましたからぁ。」
いまは1年生の2月で、4月に始業式だから本当に近日中ですね。もう少し情報が欲しいですわね。
「それで私の相手はどなたなのかしら?卒業までの2年間も振り回されるのは面倒なので婚約しないように立ち回りたいのだけど。確かこの国の王子って、ご年齢が17歳の王太子青色1号、15歳の赤色2号、14歳の金色3号、13歳の銀色4号、11歳の黒色5号だったわよね。」
「なんか合成着色料みたいですぅ。せめて技の1号、力の2号、3・4がなくてブラックさんのカバンくらいおりじなりてぃがほしいですぅ。」
「なんか若い世代には通じなそうなネタですわね。名前がないことの文句はずぼらな作者に言ってほしいですわ。短編とかそれに毛が生えたような話のキャラクター名なんて誰の記憶にも残らないからめんどくさいという理由だそうですわよ。」
ため息をつきながら返すと
「いえいえ初代から来年リメイクされる話まで網羅した完璧な布陣ですぅ。〇ん太君もそういっていたので間違いないですぅ。」
「ふもっふ~?」
「お姉さま!それは違う生き物ですぅ。イルカとクジラくらい違う生き物ですぅ。」
たしかそれは大きさの違いだけだった気もするのだけれど・・・・・
「話を元に戻しましょうか。それでお相手は赤色2号それとも金色3号?確か青色1号は公爵令嬢様が婚約しておられたはずですし・・・・」
「赤髪の第二王子殿下ですぅ。2号とかはさすがにまずいと思いますぅ」
「そうは言ってもそろいもそろって俺様王子だし、歳と色くらいしか特色ないのよね。没個性ってやつ?」
あまり興味も持てないのでどうでもいいような感じで言うと、モブ子さんも同意する。
「同じ母親から生まれてますしねぇ。そういえばそれで思い出しましたぁ。このゲーム続編なんですけどぉ、前作のヒロインが今の王妃様で、逆ハーエンドを引き継いでいるんですぅ。だからこの世界はでぃーえぬえー鑑定とかはできないんですけどぉ、父親はみな違うんじゃないかって噂があっるんですよぉ。ちなみにその5人は20年前に断罪をやった現国王と取り巻きなんですぅ。国王陛下以外は実は前国王の隠し子だって設定でしたぁ。」
20年前の断罪劇は有名な話ですわ。確か断罪されたのは現公爵の姉で死刑台に送られたのでしたね。後に冤罪だと発覚し、そのせいもあって公爵家に王妹が降嫁し、さらに復権を助けるために令嬢と王太子との婚約が決まったはずです。また裏切り貶めるのでしょうか?さすがに今度は戦争でしょうね。
「取り巻きって、金色国王に青色宰相、赤色騎士団長と銀色祭司長、黒色学園長よね。青色1号が王太子って、いくら前王の血が入っているとはいえ大丈夫なの?上の世代は異母兄弟で穴兄弟、同世代は異父兄弟で穴兄弟(予定)・・・。なかなかマニアックな性癖ですこと。」
「お姉さま下品ですぅ。たしか1作目は悪役令嬢役が1人だったんですけどぉ、2作目は攻略対象それぞれに悪役令嬢がいてぇ、断罪されるとみんなお取り潰しになるんですよぉ。だから同じ国が舞台なのにえんでぃんぐのスチルはより豪華になってるんですぅ。」
「ッ!!」
その言葉で私の中で何かがつながった。
「そう・・・そういうことね。以前モブ子さんに教えてもらった前世の歴史で、中世から近世への変遷。その中で封建制度からの中央集権化というものがあったわね。王子たちを婚約者として送り込み領地と軍権を相続させそれを逆ハーレム要員として次の妃に持って帰る。そうすれば王家の権力はどんどん強化されていく・・・・。すでに国の要職は手にしているわけだし、絶対王政だったかしら?そういう感じに持っていくにはうまいやり方ね。前作五色は結婚もして嫁もいるのになかなかふしだらな話ですこと。」
「ゲームのインタビューではスチルが豪華なのは開発予算が増えたからって言ってましたぁ。でもそういえば去年宰相の肝いりで『婚姻関係になくても、婚約関係があれば財産を相続できる』って法改正がありましたぁ。」
これはもう間違いないわね。ヒロインが子供を作れることが前提であるけれど、変則的な父系相続と言うところかしら?きわめて合理的な話ですわね。もちろん私がそのような思惑通りに動く理由もないのだけれど・・・。
“バー――ン!”
考え事をしていると大きな音がして、食堂のドアが開き赤色2号が現れ近づいてきましたわ。平服の護衛騎士となぜか私の護衛も一緒のようね。上級貴族用の食堂のため入り口からここまでそれほどの距離はありませんわね。一応礼儀として立ち上がりカーテシーをしてみたのだけれど、2号は気にせず進んできて私を後ろの壁に押し付けるようにすると、壁に手をついて私のあごに手をかけてきましたわ。
「へぇ?君が伯爵令嬢ちゃん?なかなかかわいいね。今度君の婚約者になるように言われたからよろしく。大丈夫優しくするし、俺好みに染めあアーッ!」
“グシャッ!!”
そうして赤色2号は床に転がり気絶しましたわ。初登場から30秒のことでしたの。