喧嘩…なのかな?
食事も終え、男達は風呂に、女達は既に風呂から上がって部屋に集まっていた。
「やっぱり王室っ凄いですね、色々と豪華で」
マーナが楽しそうに言った。
「そう言えば、ノアさんって貴族なんですか?」
「えっと…なんて言えばいいのかな、元って感じかな」
ノアは微妙な表情で答えた。
「ノアさんの好きなタイプってなんですか?」
親睦を深めるために美咲が尋ねた。
「んー、一生懸命で優しい人かな」
「いいですね」
「じゃあ、ノアさんは恋したことあるんですか?」
マーナはグイグイと詰め寄る。
「………ぁ」
ノアは一段と暗い表情になる。それも場が静まり返るほど…
「……え?ご、ごめんなさい…」
流石のマーナも雰囲気を察したのかすぐさま謝る。
「……あ、違う違う…大丈夫だから!」
ノアは笑顔になって明るく振る舞うがどこか元気がないように思える。
「失恋したの?」
ここでズカズカと人のプライベートに立ち入ってしまうのは雫で、みんなが唖然とした。
「あ、………うん」
また、暗い雰囲気が部屋中に立ち込めた。
「…いつ振られたの?」
「………さっき」
「「っ…!?」」
とんでもない事実に周りは口を開けて、何も言うことができない。
「大丈夫ですよ!ノアさん可愛いですし!押したらいけますよ!」
美咲はノアを励ます。
「無理…だと思う。その人付き合ってるし…」
「あ……」
美咲はまさか彼女持ちの相手だとは思わなく、一瞬言葉を詰まらせた。
「………略奪愛」
と、ここでさっきまで興味なさそうにしていた雫がヒョコッと現れて、爆弾を投下した。
この言葉には周りも唖然して、開いた口が塞がらなかった。
確かにやっていることは略奪愛なのだ。
「……そうだよね…私最低だよね…」
励ますつもりが返ってノアを落ち込ませた。
「そ、そんなことないですよ!ほ、ほら
略奪愛から真実の愛になることだって…」
美咲は焦って励まそうとするが、自分で言っていて変な感じになって、途中で言葉が詰まる。
「………もう、大丈夫だから…」
逆にノアに気を遣わせて自分のフォローの足りなさに腹が立つ。
「どうしたんだい?何かあったのかい?」
丁度風呂からあがった男子達がやって来た。
「…ノアが略奪愛」
「え?」
雫の言葉足らずのせいで男子にいらない誤解を産む。
「違う違う!ノアさんが振られたの!」
「美咲……」
マーナは余計傷つけてるような気がしたが、本人はそんな気がなさそうなので黙る。
「大丈夫じゃない?ノアさん可愛いし。きっと違う良い出逢いあるよ!」
春也は楽観的に言う。
「あ〜、やっぱり男子は無理だね」
「え!?なんで!?」
結局話し合いは女子だけになって、どうやって略奪愛するか全員で考えた。
「それで、王女に戻る気はあるの?」
アリアがノアに今夜寝る部屋を案内しているときに尋ねた。
「………迷ってるかな」
「それはさっきの恋愛のことで?」
アリアは先程、部屋にはおらず、入ってきたところで何故か略奪愛しようみたいなことを言っていたので事情を聞いて今に至った。
「……うん。振られちゃたし、一緒にはいられないかなって…でも、一緒にいたいし…」
「一回その男に会ってみたいものだわ。ノアをこんなにもさせる男をね。そう言えばクメはその男を見たの?」
ずっと後ろで静かに見守っているクメに尋ねた。
「いえ、見つけた頃には泣いておられたので…」
「泣いてたのね…」
「アハハ…恥ずかしいな」
窓から見える星は今日も今日とて輝いている。私とは正反対に。
「ここが、ノアの部屋ね」
「ありがとう」
「じゃあおやすみ」
「うん、おやすみ」
そう言って、アリアは去っていく。クメはお辞儀をしてからアリアの後ろについていった。
(はぁ…)
溜め息が漏れる。
(これからどうしようかな…)
ドアノブに手を掛けて、部屋に入る。
正面にある窓が空いていて涼しい風から吹き抜ける。
「……え?」
窓の隣に人影が見える。いや、この後ろ姿は…
人影は振り返ってこちらを見る。
「…なんでレンくんがここに、?」
正しくそれはレンヤだった。
「帰るぞ」
レンヤは短く言った。
「……ダメだよ」
「なんで?」
そう言いながらレンヤはゆっくり近づいてくる。
「だって、私はレンくんのことが好きなんだよ。ルシアちゃんに迷惑かかるし…んむッ」
ノアの言葉を遮って、レンヤはキスをした。
「……ッ!な、なんで!」
「……好きなんだろうな、ノアのことが」
「え…?」
レンヤはノアの瞳を真っ直ぐ見て言った。
「ルシアのことは好きだ。でもそれと同じくらいノアのことも好きで…。でも、ルシアと付き合ってるからこういうのは良くないと思って冷たくした…ごめん」
「あと…これ」
レンヤはある箱を渡す。
「え?これって…」
開けてみると、あの時にノアが付けた簪だった。
「その……似合ってたから」
「っ!!」
ノアは涙を流した。今までの涙とは違って胸が熱くなる涙だ。
「ねぇ、つけて」
「おう」
レンヤはノアに簪を貰って丁寧に優しく付けた。
「…似合う?」
「あぁ、とっても」
二人はもう一度キスをした。
「帰ろうぜ」
レンヤが言うと
「うん」
ノアも大きく頷いた。
部屋に祝福の風が流れて部屋は閑散としていたが、どこか甘い薫りが漂っていた。
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ーーだから、ありがとね。バイバイ、アリア。 ノアより
「フッ、いい男だったのね」
アリアは置き手紙を閉じて、笑った。
「クメ、どうしたの?」
何か考え事をしているクメに尋ねる。
「い、いえ…」
「そう、なら行くわよ」
「はっ」
アリアは機嫌よく部屋を出る。その背中を追いながら、一つ気がかりなことを考える。
(どうやって入ったんだ?王宮の警備は厳重のはず…。それなのに平然と入ってきたというのか…?その男、何者なんだ…?)
考えても答えが出ないので、クメは部下に王宮の警備を厳重するように指示を出し、この件については目を瞑った。
キルラ 私の出番なし…
アルマ 誰だっけ?
キルラ 勇者『魔女』!!




