隠せない恋
「行っちゃったな」
俺はイヴを見送りながらポツリと言葉を漏らした。
「寂しい?」
「ま、寂しいのかもな」
そう言って俺は笑った。
「まぁ、これからどうする?宿にもどるか?」
龍生祭は今日はこれで終わりだ。そろそろ、日も暮れてきた。
「その前聴きたいんだけど?いいかな?」
ノアが尋ねた。
「ん?何を?」
ノアは俺の耳を指して、
「これ、どうしたの?」
何故か少し怒り気味で尋ねてきた。
「これは…ルシアと、回って」
俺は、イヤリングを触りながらドギマギしながら答えた。
「………そっか〜」
それで納得したのか、ノアは笑った。
「宿に戻りましょ」
ルシアは夕日でわからないが顔を真っ赤にしながら言った。
「ふぅ〜食った食った」
俺はイヴがいなくなったことにより一つ多くなった料理も全て平らげた。
「今日のもおいしかったわね」
レナも、座椅子にもたれながら言った。
「風呂入ってくるか…」
「私はちょっと休む…食べすぎたわ」
「私も」
ルシアはイヴの分の半分を食べていたので動けないようだ。
俺はノアと共に大浴場へと向かった。
「レンヤくん」
「ん?どうした?」
行っている途中ノアが話しかけてきた。
「……うんうん、何でもない」
「……?そうか?」
何かありそうだったが特に何も言ってこないので大丈夫なのだろう。
俺達は、男湯女湯で分かれて、入っていった。
ここの大浴場は本当に広く沢山のお湯があるのでとてもいい。つい、長風呂になってしまう。
散々お風呂を堪能して、最後にサウナに入る。
しかし、サウナに入ると汗をかくのでもう一度お湯に浸かる。
因みに俺は水風呂には(冷たくて)入れないので、全く整うことは出来ない。それでもサウナには入りたいけど…!
そして、風呂からあがったらキンキンのビールでクイッといく。
「くぅ〜〜!」
アルコールが身に染み渡る。超絶最高!
「あれ?レンヤくんも今上がったところ?」
「おう、ノアも一緒のタイミングだったんだな」
ノアは微妙に髪が濡れていて、色っぽい。
って、俺にはルシアがいるんだぞ!
「あ、ちょっと外でようよ」
「いいぞ」
俺達は外に出る。夜風は涼しく、ポカポカの体との調和がとても気持ちいい。
「どこ行くんだ?」
「噴水のとこ」
噴水の場所はここから5分くらい歩いたところにある。それまでの道のりには沢山の売店があって、夜でも明るい。
「ねぇ、レンヤくん」
「ん?」
途中、ノアは少し店のところによった。そして、あるものゴソゴソとする。そして、こちらに振り返った。
「可愛い?」
髪に小さな花が付いた簪をつけた姿が見える。
不覚にも簪を見てなのか、ノアを見てなのかわからなかったが、本当に可愛いと思ってしまった。
だからだろうか
「可愛くない」
そう答えてしまったのは。
「あちゃ〜、似合わなかったか〜」
ノアはしまったといった感じに簪を外して元の場所に戻す。言葉とは裏腹に本当に悲しそうな表情をしていた。
そこから、噴水の場所までは無言だった。
噴水の近くではカップルがイチャイチャしていて、こちらの雰囲気とは全く異なるものだった。
「………帰るか」
俺は噴水に背を向ける。
「……待って」
ノアは俺の裾を掴んだ。
「ん?」
「やっぱりちょっと話したいな、だめかな?」
「…いいぞ」
俺は一拍おいてから答えた。
噴水の周りにある椅子に二人横並んで座る。
噴水は水が湧き上がって、ライトの明かりをチカチカと反射させている。
「レンヤくんって付き合ってるの?ルシアちゃんと」
ノアからの質問は踏み入って欲しくない領域に手を出されたような嫌な気持ちになった。
「………ああ」
しかし、俺はなぜかそのたった二文字を言うのにとても罪悪感を感じた。
「……そっか」
それっきり、だんまりの時間が流れた。先程は気持ちいいと感じた夜風も生ぬるい感じがして気持ち悪い。
噴水から反射する光が鬱陶しいからか、見ることができず、ただなにもない地面をぼーっと眺めていた。
「ねぇ、レンヤくん」
「ん?…っ!」
俺は顔を上げてノアの顔を見る。ノアの顔は涙を必死にこらえていて、その姿がなんともいとしく感じる。
「……あれ?何でだろう…応援しようと思ったのに…」
次第にノアの目から小さな水滴が溢れてくる。
「ごめん…やっぱり」
「レンヤくんのことが好き」




