イヴ、参上
「負けたね…」
カイトはレックスが負けたのを見てボソリと呟いた。
「あいつ、何してるのよ!絶対勝てる相手だったでしょ!」
格上に勝ったリディアは声を荒げた。
当のレックスは医務室に連れて行かれたので、その怒りはカイトの方へと向かった。
(うるせぇ)
ランガは煩わしそうにに耳を塞ぎながら次の戦いに備えて準備運動を始める。といっても、首を回すくらいしかしていない。
「行ってくるわ」
「一日が終わるくらいまで長引かせてよね!」
「瞬殺する」
「聞けよ!」
リディアはランガに飛びかかる勢いだが、それをカイトが抑える。
そこからは一瞬だった。
開始のゴングがなった途端に相手の魔法の嵐がランガに降り注いできたが、ランガはそれを身体強化で突っ込み、一瞬で蹴りをつけた。
「何やってのよあのバカ!」
リディアはカイトの首を絞めながらまた声を荒げる。
「落ち着いて、リディアさん」
セレナ先生はリディアを落ち着かせる。
「だってイヴがいないんですよ!これじゃあ…!」
リディアは涙目になって訴える。
「それは…残念だけど今回は…」
セレナ先生も悲しそうな表情をする。
ランガは戻ってきたが特に会話するわけでもなく、自分の席に座った。
「続いての試合は大将戦!」
放送が一段と声を張り上げ、歓声もマックスになる。
「これで、決着がつくぞぉ〜!では、選手の登場だ!」
相手側のところから一人男が会場の真ん中にやってくる。
「ん…おっと?イヴ・クライネスは?」
放送の人も不審に思ったのか、疑問の声を漏らす。しかし、いつまで経っても来る気配がない。
「んん〜〜!?まさか、まさかの対戦相手なしか!?ならば、ここで決着、不戦…」
放送の人が勝利を宣言しようとしたその時だった。
「すみませ〜ん!!」
「あ、えぇ!?」
その声に一番驚いたのはリディア達だった。
いるはずもない、イヴが走ってやってきたのだ。
「嘘…」
リディアは口を抑えて、驚く。次第には涙も溢れてきた。
「おっと!ギリギリだがセーフだぁ!では始めるぞ!試合開始!」
ゴングの音が鳴り響いた。
「イヴ〜〜!」
リディアは無傷のイヴに抱きついた。
「イヴのバカバカ!どこ行ってたのよ!心配したのよ!」
強く抱き締めながら、言った。
「……ゴメン」
イヴは小さな声で謝った。
「イヴさん…」
セレナ先生もやってきた。
「先生…」
「どこいってたんですか?親御さんもわからないって騒いでいたんですよ」
「それは…」
イヴは口をモゴモゴさせて、言い渋る。
「はぁ…分かりました。じゃあ戻りますよ」
「……え?」
「宿ですよ、龍生祭が終わったら一緒に帰りますからね」
セレナ先生は優しい声で言った。
イヴは咄嗟に「はい」っといってしまった。
「じゃあ帰ろ〜、優勝のお祝いしなきゃ!」
リディアは嬉しそうに言った。それがいつも通りで何故か笑みが溢れた。
スタジアムから遠ざかる時、ふと振り返る。
スタジアムの上にレンヤ先生の姿が見えた。
何か言ってる気がしたが、遠すぎて何も聞こえなかった。
でも、多分頑張れよとかそんな感じなのだろう。
(サヨナラ、先生)
(サヨナラ、私の初恋)
今は精一杯、学園を楽しもう。友達と共に。ポケットの中には猫のキーホルダーが入っていた。




