ヒーロー
「何やってんだよバーカ」
目を開けると私の大好きな先生が目の前に立っていた。
「……え?先生?……本物?」
夢だと思えるような光景だった。ひょっとしたら私はもう死んでいるのかもしれない。
「お前目大丈夫か?本物じゃない俺ってなんだよ?」
いつも通りの先生の調子にこれが現実であると分かった。
分かったと思うと安心してか急に涙が溢れてきた。
「お、お、お?だ、大丈夫か?」
レンヤ先生は急に泣き出した私を見てオロオロとしだす。
「あんた、何してくれてるのよ」
ベリアナが怒ったように言った。
「………お前だれ?」
「私は魔王ベリアナよ……ん?あなたは」
ベリアナは何かを勘付いたようにニヤリと微笑んだ。
「久しぶりね、レナは元気?」
「なっ!?なんでレナ……先生を知ってるんだ!?」
(こいつ忘れてるな…ま、それならいっか)
ベリアナは密かに後ろで魔法を作る。
「んあぁあっ!!」
「ッビク!」
突然のレンヤの大声によって魔力が乱れる。そのせいで予想していたより強くなってしまった。
「セレナ先生!大丈夫ですか?」
レンヤはその場に座り込んでセレナ先生の手当てをし始める。
(良かった、息はある)
「先生っ!!」
イヴは叫んだ。
レンヤは顔をあげると魔法を放つ寸前のベリアナの姿が見えた。
しかもその手にある魔法陣はかなり強力そうだ。下手したらこの場にいる全員ただでは済みそうもない。
「面倒くせぇ」
魔法は一直線に放たれ、地面を抉り出した。
(………やったわね)
動く様子もなかったので確実に当たっただろう。
「っぶねぇ〜」
「ッ!!」
後ろに振り返るとそこにはレンヤと教師、生徒らが全員避難されていた。うそ?今の一瞬で?
「ッ!」
気付いた時にはレンヤの顔がすぐ目と鼻の先にあった。すぐさま避ける動作をするが間に合わない。
レンヤの蹴りが顔面を直撃して、吹き飛ばされた。
(何故…?このままでは勝てない)
何か良い策はないかと考えるが、他の部下達は違う場所に配置しているため、ここに呼ぶこともできない。
やはりもう出し惜しみしている場合ではないかしら…
「くたばれ」
ベリアナは自分の周りに巨大な魔法陣を敷いた。
「ん?なんだ?」
ベリアナの様子がおかしい。何故か段々と魔力が高まっていっている。
「早めにやっておく…」
「遅い」
ベリアナは俺の隣を風のように走り去った。俺は直ぐに回避するが一瞬遅かったのか、少し腕が切れた。
「っぶね…」
「ちっ、」
ベリアナは舌打ちをしてまた攻撃を仕掛けてくる。
魔法もさっきとは段違いに強い。
でも、全然勝てる。
正直例で言うと柔道で黒帯の俺が中学生でちょっと有名くらいの人と柔道するくらい。え?分かりにくいって?じゃあ、相手がゴリゴリに鍛えた人だったとして、俺は銃をもっているくらい。……分かれ!
まぁ、要は余裕ってことだ。ただ、決めてにかけてしまうのだ。
下手に強すぎると、さっきから崩れそうなこのダンジョンを崩壊させてしまう可能性があるのだ。
「弱過ぎず、強すぎずって一番むずいな」
俺は独り言を呟いてそっと溜め息を吐いた。
「凄い」
レンヤ先生が闘う姿目に映る。いつもはだらしなく過ごしていそうなのに、こんなにも強くなんて…
「チッ、アイツ強かったのかよ」
ランガくんはレンヤ先生を睨みながらボソリと呟いた。
そりゃそうだ。前決闘をしたときは圧倒的にランガくんの方が強かった。というか今のレンヤ先生の方が信じられない。
「……なんで隠してたのかな?」
「………さぁな」
本当にレンヤ先生の考えていることはわからない。
「……ん、うぐっ…」
「っ!セレナ先生!」
「えっ!」
ルーダくんの看護が効いたのか、セレナ先生は意識を取り戻した。
「………あれ、ここは…?っ!!魔王は!?」
「今、レンヤ先生が」
「レンヤ先生!?」
セレナ先生は驚いたように声をあげ、戦闘音がしている方を見た。
「レンヤ先生ってあんなに強かったんですか?」
「………知らない…いつも、だらけてたし…」
セレナ先生も初めて見る光景だったのか驚きが隠せていない。
「………色々と彼って何者?」
疑問は募る一方だった。




