心配
「うわっ、なんだ!?」
地面が揺れ、細かい砂がパラパラと降ってくる。
「……あ、あのさ、」
カイトは途中で足を止めた。
「やっぱ、戻らない?ほら、僕達が加勢したらあんなのだって…」
「駄目だ」
カイトの言葉を途中で遮ってギルドが答えた。
「ま、まぁ、そうだよね………。ん?あれ、おかしいな…なんで涙が出るんだろう…?」
話している途中で涙が溢れて止まらなくなった。
「ああ、僕だって分かってるさ」
ギルドはカイトの肩に手を置いて言った。その声はカイト同様、少し声が震えていた。
「でもな、これも全部レンヤ先生が繋いでくれたんだ。無力な…僕らを、もっと…無力な先生が……」
地面に数滴の水が溢れた。それは次第に多くなった。この場にいる全員が涙が溢れて止まらない。
「……ぐすっ、はぁー…だからなお前ら、早く、ここから出よう…先生が、繋いでくれた命を、役目を果たそう、」
「うん…!」
カイトは涙を拭って前を見る。
「行こう」
こうして、再び彼らは走り出したのだった。
「うぎゃあぁあ!!熱っ!火なんて吹くのは反則だろ、やっぱり!」
当然逃げられるわけもなく、対峙するが、とにかく色々と魔法が厄介なのだ。
「あ、そうだこういうときこそ銃じゃん!」
俺は銃を取り出す。これがどれ位コイツに効くかは分からんが、少しの時間稼ぎ位なら…
俺は一発、魔力を込めて放った。
そして、銃から出た魔法弾は……
ケルベロスのこめかみを貫通して、ケルベロスは倒れた。
「え?………もしかしてコイツって見かけ倒しだったのか!?」
こんなことなら生徒らを残しとけば良かったな…そう思ってしまうほど呆気なかった。絶対アイツ、ケルベロスじゃなくて三叉犬とかそんな雑魚そうな名前だったんだろうな
「取り敢えず、生徒らの方へ……」
俺は後ろを振り返る。まぁ、どうせ他の魔物も雑魚だろうし、アイツらならいけると思うが俺も戻るか
け、決してサボるために出口に向かうんじゃないからな!
善は急げと言うので俺はすぐさま走り出した。
「ふ〜ん、貴方達が最初の到達者たちね」
門を開けて進んでいくと何処からか声が聞こえてきた。
「っ!貴方は何者ですか!?このダンジョンも貴方のせいでおかしくなっているんですか?」
セレナ先生は全体に聞こえるように大きな声で言った。
「ええ、そのとおりよ」
そういった途端に辺りが明るくなった。一斉に篝火に火が灯ったのだ。
「私は魔王ベリアナ。よろしくね」
中央に堂々と立っていた女は自分が魔王だと名乗った。
「『ファイアボール』!」
炎の玉が無数にベリアナにめがけて飛んでいく。
「なによ、煩わしいわね」
ベリアナは蝿を払うようにして魔法を掻き消した。
「なっ!」
「イヴさん!今は話し合って…っ!?」
急に攻撃を仕掛け出したイヴを注意していたが、途中で言葉を詰まらせた。
いつも冷静なイヴが物凄い形相でベリアナを睨んでいたのだ。
「ちょっと!イヴ!何やってるのよ!相手は魔王なのよ!?」
リディアが再度攻撃をしようとしているイヴの腕を掴む。
「……止めないで」
イヴはリディアの静止の腕を振り払ってまた魔力を練る。
「あれ〜?いいのかしらー?私を怒らせちゃって」
「…関係ない。死ね『フレア』!」
さっきのファイアボールとは比べものにならない大きさの魔法が一直線にベリアナの元へ向う。
「『ファイアボール』」
ベリアナは面倒くさそうに手を出してファイアボールを放った。
普通フレアの方が圧倒的に強いはず、なのだが
「う、うそっ」
なんと、2つの魔法は同威力だったのか相殺されてしまった。
「ふふふっ、これでわかったかしら。実力の差が」
ベリアナは面白そうに高らかと笑った。
イヴは唇を噛み締めて、ベリアナを睨む。
「おーー、怖い、怖い」
ベリアナはわざと煽るように体をよじらせる動きをする。
「……分かりました、イヴさん。ここで魔王をやっつけましょう。皆さん手伝って下さい」
セレナ先生はイヴの本気度が伝わってきたのかそう判断した。
「ランガくんはキツイですが正面を、レックスくんとリディアさんは牽制を、ルーダくんはイヴさんに支援を、私とイヴさんで叩きます!いいですか?」
「「「はい!」」」
セレナ先生の正確な指示通りにすぐに配置につく。
「ふ〜ん、何するのかしら?」
ベリアナは特に何をするわけでもなく様子をただ眺めていた。
「「『フレア』!」」
両隣からレックスとリディアが魔法を放つ。
「だ、か、ら〜」
ベリアナはまた煩わしそうに魔法を打ち消す。
その間にランガがベリアナに迫り、高く飛び上がる。
拳を振り降ろすも、ベリアナは少し後ろに下がって避けた。
「イヴ!」
「『ヘルフレイム』!」
待ち構えていたかのようにイヴがベリアナの間近で魔法を放つ。
が、それはわかっていたかのようなベリアナは身を捻って避け、逆に間近で魔法を放った。
「なっ!」
しかし、それはセレナ先生がイヴを引っ張ったことによってギリギリ躱すことが出来た。
「ありが…」
「次が来ます!」
セレナ先生が叫んだと同時に魔法が迫ってくる。
「くっ!」
二人は左右に避けて、体制を整える。
その間に大量の魔法をレックスとリディアが放つ。
流石に全ては捌ききれないと判断したのかベリアナは少し強めの魔法を放った。
砂埃が舞って一瞬目が眩む、
「なっ!」
ランガがベリアナの目の前に現れて、一撃、腹に拳を食らわせる。
「うぐっ、」
そして、ランガの蹴りをも食らって吹き飛ばされた。
そして、その先にはイヴが立ち構えており、
「私がやられるかぁ!」
ベリアナは魔力を一気に高め放出する。
しかし、イヴは全く臆することなく魔力を練っていた。
(フッ!馬鹿が!)
魔法はイヴへと当たり、確実に死んだまたは戦闘不能の状態になったと思われる。
後はあの教師を…っ!?
一瞬前方の注意をそらした瞬間、手が横っ腹に当たるのが感じた。
「残念でした」
イヴが無傷の状態でさらに魔力を練るのをやめないでいたのだ。
「どうして…っ!」
視界の先にはさっきの教師がいた。
私のさっきの攻撃はあの教師によって相殺されていたのだ。
「くぅ…コイツゥ!」
「遅い」
ベリアナが襲いかかる前にイヴは魔法を放った。
ベリアナは横っ腹に大きな穴が空いて、その場に倒れた。
「は…、はぁ?こ、この、私…がぁ?」
ベリアナは横っ腹を抑えようとするが、血が流れるのは止まらない。
「こんな、こんな雑魚どもに…私が…かはっ、かは、ゴフッ」
ベリアナは途中で吐血して、息が上手くできないようだ。
「死ね」
イヴは最後にもう一度魔法を放つ。『フレイア』、その魔法は長時間燃え続ける、言わば苦しみを長引かせる魔法だ。
「ギャァァァ!」
ベリアナの断末魔がダンジョン中に響き渡る。
そして、数秒後ベリアナは完全に焼失された。
「勝った、のか?」
レックスが信じられないものを見たように呟いた。
「うん、勝ったんだよ」
リディアも同様に炎を見つめながら呟いた。
「やったぁ!」
「よっしゃぁ!」
皆、手を取り合って喜びあう。
「イヴ!やったね!」
リディアはイヴを抱き締めた。イヴはまだ、現実味を帯びていないのか、放心状態であったが、次第に涙が溢れてきた。
「……やった、やったよ…ラナ」
イヴはリディアの胸で泣いた。普段感情をあまり見せないイヴがこんなにも感傷的になるのは初めてのことだ。
「うん、うんうん!」
リディアはさらに強く抱き締めた。
「セレナ先生、俺達やりまし…た……え?」
レックスがセレナ先生にも共感したく、話しかけようと後ろに振り返ると、そこには……
セレナ先生が倒れていて
そこにはベリアナが嗤っていた。
「あら?気づいちゃった?」




