コングラッチュレーション
「俺達の優勝にかんぱ〜い!!」
俺とセレナ先生はワイン、生徒らはジュースを持って乾杯をする。生徒は一応酒類を飲まないようにとされているが、実際のところは甘々らしい。そのため何人かの生徒は自身のグラスにワインを注いでいる。
「にしてもこんな高そうな店大丈夫なのかよ、先生」
レックスが、からかうように言ってくる。
「大丈夫大丈夫、お前らから徴集するから」
「はぁ!?奢ってくれるんじゃなかったのかよ!」
「冗談だって」
俺は高笑いをして一気にワインを飲む。
「実はな、大会優勝で賞金が出たんだよ」
「まじかよ!」
「まじまじ」
俺は親指を立てて応えた。実際、賞金が出るとは聞いていなかったので予想外の収入だった。
「いくら?」
「100ベニー」
「…………え?」
「な?ケチだろ?」
俺はやれやれといった表情でレックスを見た。レックスは目を点にして呆けている。
「ま、安心しろ。助っ人を連れてきたから」
そう言って、俺は後ろの方を見やる。
「え?あれってルシア先生とノア先生とレナ先生ですよね?なんでここに?」
イヴが会話の中に入ってきて尋ねてきた。
「もうすぐ修学旅行があるだろ?そこに付いてくる先生が俺達とあの三人。お前らあんまりあいつらのこと知らなさそうだし、親睦を深めるために呼んだんだよ」
「で、本音は?」
「という名目上、5人で割り勘すれば一人あたりが安くなる」
「「ははは……でしょうね」」
それを聞いてレックスとイヴは微妙な反応をする。
「ま、んなことどうでもいいから楽しもうぜ」
次々に料理が運ばれてきた。バイキング方式なので俺はいち早く皿を持って料理を取りに行く。
「取りすぎ、先生〜」
「うるせぇ!俺の金もはいってんだ、よこせ」
「もぅー!」
「俺だって!!」
男子共は俺と同じようにありったけの料理を皿に乗せてむしゃむしゃと食べる。女子は馬鹿だなと呆れながら料理をキレイに食べる。
今宵の夜はまだ始まったばかりだ。
「ふぅ〜食った食った」
パンパンに膨れ上がったお腹を摩りながら爪楊枝で歯に詰まったものをつつくり回す。
「先生」
「ん?」
イヴが他のクラスメイトと話している途中で抜けてきて俺に話しかけてきた。
「あの……」
イヴはなんかモジモジとした様子で顔を赤らめている。
「その……ありがとうございました」
イヴは頭を下げて御礼をした。
「ん、」
俺は軽く手を挙げて、返事をする。
いや、こういうときってどうするのが正解なのかわからないんだって!だって「どういたしまして」もなんか違う気がするし、「さぁ、なんのこと?」っていうのもキザでダサいしさ!
「その、先生があの時推してくれたお陰でみんなに恩返しも出来ました。まぁ、元はと言えば先生のせいですけど…」
イヴは皮肉交じりのことを言いながらも感謝の気持ちを真っ直ぐに伝えてくれた。
でもさ、『あの時』っていつのこと?
いや、別にいいんだよ?本当、ちょっとわからないだけでさ。イヴを推す?あの時?いや、俺そんなことしてねぇーし…
何を勘違いしてるんだ?
「みんなの反対も分かってました。それでも私に最後に行かせてくれてありがとうございました」
「お、おう…」
最後?いや、俺最後のときは教頭にカンカンに怒鳴られて、急に的になれとか言われてそっちの方にいけてなかったんだけどな…
ん?じゃあそこに居たのって誰だ?
まさか、幽霊!?
ん?幽霊……幽、霊
「あ!」
「え?どうかしましたか?」
「あ、いや何でもない」
そうだよ幽霊、じゃなくてイリアだよ!あいつが俺に成り済ましてやがったのか!あ〜道理で話が解らないわけだよ
「じゃ、じゃあこれで」
イヴは御礼を言うのがよっぽど恥ずかしかったのかまだ顔を真っ赤にして俺から離れた。
「レンヤ先生は人気ですね」
丸テーブルの隣に座っているセレナ先生が声をかけてきた。
「そうか?」
「そうですよ、最初の頃とは比べ物にならない程に」
「そういや、そうかもな」
最初の頃は……あれ?窓を突き破ったことしか覚えてないぞ?
「私からも御礼をさせてください。あの子達を優勝させてくれてありがとうございました」
「いやいや、セレナ先生も魔術とかは指導してくれてたし」
「それでも、ですよ」
セレナ先生は何が可笑しかったのかクスクスと笑う。
「あ、そろそろ時間ですね」
セレナ先生が時計を見て言った。この部屋は10時まで貸し切りなのだ。
「じゃあ最後に、ルシア…先生これを」
俺はカメラをルシアに渡す。
「うわ、これ久しぶりに見た…」
ルシアはボソリと呟いてまじまじとカメラを見る。
セレナ先生はそれがなんだか解らない様子でキョトンとしている。
「お〜い!お前らこっち来い」
一番中央にクラス全員が集まる。
「あの、丸いとこに向かって笑顔な」
「え?」
「どういうこと?」
生徒らは意味不明のようだがこれは理屈では説明できない。
「まぁ、取り敢えず笑顔笑顔」
そう言って俺はピースをする。それにつられて生徒もピースをする。
「じゃあいくわよ、ハイチーズ」
パシャという音と共にフラッシュが焚かれる。
「おぉ〜上手く撮れたな」
全員の笑顔がその一枚に写っていた。
(結構俺もこのクラス好きだな)




