イヴ
「先生の野郎、勝手に決めやがって」
レックスが拳を握りしめて言った。
「じゃあ、誰が行く?やっぱり、ランガかな」
リディアがランガを推薦する。他のみんなもその意見に問題なさそうな表情をする。
「待って」
そんな中、イヴが手を挙げた。
「私に行かせて欲しい」
「え、でも…」
リディアはイヴの意見に賛同をしかねる。先の魔術でかなりの不調であったからだ。
「分かってる。だからこそ行かせてほしい。前の分まで取り返すから」
イヴは頭を下げてお願いをする。が、やはり優勝が掛かっているということもあってか、なかなか頷く人がいない。
「じゃあ頼むぞ」
「「っ!?」」
ここで、真っ先の答えたのは意外にもランガだった。
「……でも、」
「俺の魔法は聖だぞ?長距離に当てるのは向いてない、それだけだ」
「…!?ま、まあそうだね…」
「でも、さっきだったらレックスの方が当ててたくね?」
誰かがポツリと呟いた。
「それは……」
イヴは必死に手を抜いていたと反論しようとするが、これは返って悪手だと悟る。じゃあなんで手を抜いたって話になるからだ。
「そろそろだぞ〜、お前ら!というかイヴ!」
そうやって悩んでいる間にレンヤ先生がやって来てイヴを呼んだ。
「え、なんで、先生なんでイヴちゃんなんですか?」
「は?一番上手いからだろ?何いってんだ?」
「でも、さっきの結果じゃ…」
「んなもん、俺が手を抜けっつったからだろ」
「「「………え?…………はあ!?」」」
クラス中の生徒が息ぴったりにハモった。
「まぁ、お前らが聞きたいことは優勝したら教えてやるから、じゃあイヴ行って来い」
俺はイヴの背中を押す。
イヴら少し歩いた後、後ろを振り返った。
「頑張るから」
それだけを残して、イヴはまたあるき出した。
「おいおい、これやばくね?」
「レベル高すぎだろ…」
観客達がどよめく。それもそのはず、最下位の順からやっていたのだが、まさかの全員がパーフェクトを出したのである。
「どうしましょうか……」
放送の生徒も困り果てて先生方と相談をしている。
「はい、ただ今決まりました!今から的を用意します。それぞれのクラスの的がありますが、それ以外の的を撃ち抜いたら優勝です。それでは的に登場してもらいましょう!」
(的に登場?どういこと?)
扉が開いてやってきたのは…
頭の上にボールのようなものを乗せたそれぞれの担任先生方だった。
「的の方は的を撃ち抜かれないように魔法を使うことができます!尚、セレナ先生だとレベチなのでEクラスだけ副担任のレンヤ先生となっております」
レンヤ先生は嫌そうに不貞腐れた顔をしている。
「あれ…?これ凄く不利な気がする…」
レンヤ先生はお世辞にも強いとは…というかランガくんとの戦闘しかみていないが魔法とかは使えるのだろか…
「それではよーい、スタート!」
試合開始のゴングが鳴った。
生徒達は一斉に撃つ、ことはなく先生達の出方を伺っている。
他の先生はじっと攻撃が来るのを構えているが、俺は真っ先に後ろを向いて走り出し出来るだけ遠くに離れた。
そして、端っこギリギリのところで後ろに振り返ると……
「全員俺狙い!?」
4種類の攻撃が俺に次々と襲いかかってくる。俺はドッチボールの避ける要領ですべてを躱す。
「お〜っと!!CクラスDクラスが同時にアウトだ〜!」
イヴ一人で一気に二人の先生をやったのだ。
「これで残りは四天王対決となりましたねぇ〜!しかし!ここからが本番と言っても過言ではありません!Aクラスのカルバン先生は魔術教師!この帝国内にも名を轟かせる実力です!そしてBクラスのフラム先生は科学の天才!いつも危険なものばかりを作って迷惑をかける問題先生だが、実力は本物だ!次のレンヤ先生は…頑張れ〜!」
「流石だ〜!リューン選手がフラム先生を破った!残りはカルバン先生とレンヤ先生のみだ!」
「もう、諦めたらどうだ?」
リューンはイヴに向かって言い放った。
「お前はもう何度もカルバン先生に魔法を放っているが、一度も先生の元に届いていないだろ」
「……っ!」
そう、何度も魔法を放っても、全て塞がれてしまうのだ。
「その点俺はあのザコだ」
そう言って、無数の光の剣を放つ。
「悪いな、これで俺の勝ちだ」
「ッ!!」
無数の剣は一直線にレンヤ先生の元に届く。それは数秒間連続で攻撃を繰り返していた。砂埃が舞って辺が見えなくなる。
「残念だったな。まぁ、あんなクソ教師じゃ仕方、むっ、……なんで呪文を唱えているんだ。決着は着いただろ」
だんだんと砂埃が晴れていく。
「………ん?あれはー」
砂埃に一人の影が動いている。
「まさか!」
「どりゃあ!俺はまだ負けてねぇぞ!撃て!イヴ〜〜!!」
レンヤ先生が飛び出してきた。そして何故か一番隅にいてたのに急に真ん中によってきた。
「っち、もう一度ーー」
「ごめん、お先」
イヴが呪文を唱え終わって魔法を放つ。それは一直線にカルバン先生の頭上のボールへと向かって。
「ふん、そんな魔法カルバン先生が掻き消すだろ」
リューンが言った通り、カルバン先生は氷の魔法でその魔法を掻き消そうとする。が、
「邪魔じゃ、その氷!!」
レンヤ先生はその氷の魔法の軌道に入り、殴った。
「嘘だろ……」
そしてそのことによって本来イヴの魔法を打ち消す予定が途中で遮られた。結果、イヴの魔法はそのままカルバン先生の的にちょうど命中したのだ。
「レンヤ先生はザコかもしれないけど、クソ教師じゃないよ」
そう言って、イヴはレンヤ先生の元に駆け出した。
レンヤ先生は
「痛てぇ!俺の右腕が!俺の俺のが!」
氷ががっつり右腕を貫通して、かなりの血が流れていた。
「先生!」
「イヴよくやったなあもう無理限界」
滅茶苦茶早口で言ってレンヤ先生は倒れ込む。
「っ!!早く回復ポーションかヒールを…」
「焦らなくてもいいわよ、どうせ死なないしコイツ」
「あ!その声はルシアだな!早くなんかくれ!まじでくそ痛い!」
「はいはい」
そう言ってルシアは瓶に入ったポーションを俺の口に放り込んだ。
(なにこれ、まっず!)
良薬は口に苦しとかいうけど、これはいくらなんでも不味すぎだろ…
しかし、ポーションなので空いた穴が徐々に塞いでいった。そして痛みも引いてきた。俺はゆっくりと体を起こした。
その途端にイヴが抱き着いてきた。
「お、おい」
「先生、ありがとうございました」
イヴの涙を流しながらのお礼を俺は一生忘れないだろう。
優勝の祝福と歓声が渦巻くこの武闘祭はようやく幕を閉じたのであった




