野球の極意
「さぁ、野球の諸君」
今度、俺は野球の練習を見に来ていた。格好はもちろん赤いコートに襟の長いシャツ。真ん中にはドドンとbigrenという文字が。
「で、お前らはバッティング練習な。守備の練習なんて、いらねぇぞ」
「ええ!?」
丸坊主のいかにも野球部ってかんじのシンが声をあげる。
「いや、点はランガとビッツが抑える。お前らは点を意地でも取りに行け」
俺の滅茶苦茶な指示に生徒達は戸惑いの表情を見せる。俺はそれを無視してキャッチャーのビッツの元へ行く。
「ビッツ、お前はこの練習だ」
そう言って、俺は昨日徹夜で作ったピッチングマシーンを出す。荒いボールが出てくるよう設定してある。
「これから出るボールを意地でも取れ。絶対に落とすな。その練習だ」
「まじすか、」
「それでランガ、お前は今からピッチャーの極意を教える」
「……ふん」
ランガは鼻を鳴らすが、これは分かったの意。最近になってようやく分かってきた。
「いいな、ピッチャーというのはな、恐怖を与えればいいんだ」
「………」
「つまりまず一球目、デッドボールすれすれの危ないボールを投げろ」
「は?」
「顔に近ければ近いほどいいからな」
俺の作戦はこうだ。
まずデッドボールギリギリのボールを投げて相手を脅かす。それだけだと物足りないので、睨みを効かせながら「ちっ、あと少しだったのに…」と言いながら土を蹴る。これでバッターは足が竦んで打てないだろう。よって後は点を取るだけ。
「………酷すぎる」
「はあ?野球経験者の俺の作戦だぞ!?」
まぁ、経験者っつっても小学校の時に2ヶ月くらい習ってた程度だけどな。
「もういい、お前は試合で観ろ」
「はあ?先生に向かってお前ってなんですか!?これだから最近の子は!」
ランガが睨んで来たので俺はさっそうとバッティング練習の場所へと向かった。
が、特にすることもないのでベンチに座って眠りに落ちた。




