リレーの極意
「さぁ!練習を始めようじゃないか!」
俺は張り切ってサングラスを掛け、メガホンを片手に、折りたたみ椅子にどっかりと座る。
「でも、先生……」
このメンバーの中で一番速いエーミールが、心配そうに尋ねる。
「お前らの言い分はよ〜く分かる。いや、分からん」
「どっちですか…」
「まぁ、とりま練習しろ!」
俺はメガホンで無駄に大きく声を出す。
「じゃ、じゃあ走る?少しでも速くするために…」
「そうだよね、百メートルでいいよね?」
「そうだな」
エーミールとクラス委員のマコが中心となって話を進める。
「おい!!!何やっとるんじゃお前らは!!!!」
俺は怒鳴り声をあげる。
「え、いや、少しでも速くなるために百メートル走を…」
「そんなんで変わるのはコンマ秒くらいだろ!」
「コンマ秒でもみんなが速くなれば一秒は縮まると思いますよ?」
それは御最もだ。しかし、俺は人差し指を左右に振ってある紙を出す。
「これは、他のクラスのリレーの総合タイムだ」
そう言って、俺は紙をエーミールに渡す。
「これに書かれている通り俺たちのクラスは最下位だ」
「やっぱり〜」
ミナがまたもや落ち込む。
「1位との差は約6秒。これを埋めるにはそんなことでは無理だろ」
「それでも何とか他のクラスには…」
「甘ったれるな!!!他のクラスが走る練習をしないとでも!?違うだろ!」
「それは、まぁ」
「じゃあすべきことは」
俺はあるものを取り出す。
「これの練習だ」
赤、青、黄など沢山の種類のある棒。つまりバトンだ。
「バトンパスの練習で一つに付き上手く行けば一秒以上は速くなることがある。つまり全員で10人。つまり9秒以上速くなるのだ!分かったか!」
「…………」
全員シラーとした顔をする。あ、これ信じてないな…
日本の選手のことを言いたいけど、伝わらんからな……
「まあ、信じるか信じないかはお前ら次第だ。やらないなら負けても知らん」
そう言って、俺は寝る。
「な、なぁ、どうする?」
「走ろうぜ、どうせ先生のことだし、いいだろ」
「そうよね、私も走ったほうがいいと思う」
リレーメンバーは芋づる式に俺の意見じゃない方を選択する。あぁ、負けたな。
「いや、あたしは先生が言った方がいいかな〜」
ここで、ミナが唯一俺の案の賛成を言った。
「なんで?」
「理由はね〜ゴニョゴニョ」
「あはは〜、それ面白いね」
あいつなんて言ったんだ?片目を開けて見るが皆集まって静かに笑っている。そして
「先生」
ミナが俺の前にやって来た。
「なんだ?」
「先生の方式でやるんで負けたら何か奢って下さい」
「はあ?じゃあお前らわざと負けるだろ」
「あー、じゃあ勝ってもなんか下さい」
「結局なんか奢らなきゃいけなくなるだろ!ダメだ」
「え〜、ケチ」
「ケチで結構。あ、じゃあ分かった。お前らが総合で優勝したらどんな高い店でも奢ってやるよ」
「ホント!?言質とったからね!?」
ミナは嬉しそうに飛び跳ねる。そして、物凄いダッシュで、リレーメンバー、挙句の果てに他の所で練習している所に報告しにいった。
あ、これ不味いかも……
「おい!後ろを見るな!感じろ!スピードを緩めずにそのまま貰え!」
俺は熱く指導をする。
「歩幅は自身で調節しろ!掛け声も大切だ!そこ!しっかりしろ!」
俺は更に熱く指導をする。生徒達はうるさそうにしているが関係ない。勝つためにはこれくらい必要だ。
そして、このバトンパスの練習はこの先何時間も続いた。




