ちょっと寄り道
「今日はありがとうな」
「いえ、こちらこそ奢ってくださりありがとうございました」
もうすっかり日も暮れてそこらの飲食店が賑わいを見せている。
「あの、ちょっと行きたい場所があるんですけど……一緒に来てくれませんか?」
「ん?まぁいいけど…?」
イリアは嬉しそうにニッコリ微笑むと俺の手をとって夜の街に連れ出した。
俺はイリアの後ろをついて行く内にだんだん人気が多くなってきた。
「どこに行くんだ?」
「それは、」
イリアは立ち止まるとこちらにクルッと振り返って「着いてからのお楽しみです♪」と言った。
そしてもう一度俺の腕を取って歩き出した。
「ここは……」
人気の多さは人混みへと変わっていった。
その騒ぎの中心からは何やら大きな太鼓のような音がする。
「じゃ~ん、この街アリュンカのアリュンカ祭〜!」
「へぇ〜すげぇな」
たくさんの人が露店や見世物などに行き交っている。
「ですよね!まあ私も初めてなんですけど」
「そうなのかよ……」
だから店でオススメを聞いてきたのか…
はぁ、こんなんがあるんだったらルシアとか連れてくれば良かったな〜。まぁ、あいつらも仕事があるか。
「今違う誰かのこと考えていませんでした?」
イリアは俺の顔を覗き込むような体勢をして聞いてきた。
「…え?ま、まぁそうだな」
「てことは好きなんですねその人のこと」
「は、はあ!?べ、別に……てか思い浮かべたの一人じゃねーし!」
「ふ〜ん。やっぱり面白い人ですね」
イリアは怪しむような素振りを見せるも追求する様子もなくただニヤニヤと笑っていた。
「そこの仲睦まじいカップルさんや、一発どうだい?」
隣にある射的屋のおっちゃんに話しかけられる。
「カップルじゃないですよ〜」
「そうかい、そりゃ済まなかった。でもどうだい?目玉はこのネックレス。こりゃ高いよ〜さぁさぁ」
厳重に管理をされているネックレスを指しておっちゃんは饒舌に話す。
でもこういうのって取れない仕組みか安物なんだろ?
「せっかくなんでやりましょうよ」
「………まぁやるか。おっちゃん、一つ」
「まいど〜。一番大きな熊のぬいぐるみを撃ち落とせばネックレスだよ〜。玉は3発。頑張って!」
いや、こんなコルクの弾丸で落とせるわけ無いだろ。
まぁ、でも他の商品を狙っても面白くないので俺はぬいぐるみに標準を合わせる。
パンっ!
コルクの玉はまっすぐ熊のぬいぐるみにめがけ飛んでいく。そしてそれは熊の額に命中………せず、少し上をすり抜けていく。
「惜しいね〜。さぁあと2発」
「惜しかったですね〜!次は当たりますよ!」
「ああ」
俺はさっきより少し射口を下げる。
パン!
今度はしっかりとぬいぐるみの額に命中する。
「凄い!」
が、ぬいぐるみは落ちるどころか全く動かない。
「あ〜残念。さぁ後1発」
「当たったのに……」
イリアは残念そうにする。
「大丈夫だって。カラクリは分かった」
「え?カラクリ?」
「ああ。まあ、見てろ」
俺はぬいぐるみではなく一番外れそうな小さい鉛のようなものに標準を合わせる。
パン!
それにめがけコルクの玉は一直線に向かい撃ち抜いた。
するとそれが落ちるとぬいぐるみも一緒に落ちた。
理由はかんたんその鉛とぬいぐるみが見えないくらい細い糸で繋がっていたからだ。たまたま見えたので俺はそれを狙ったってわけだ。
「どうだ凄いだろ」
「あんちゃんには負けたよ。ほれネックレスだよ」
「サンキュー」
俺はおっちゃんからネックレスを受け取り振り返る。
「これお前にや………え?」
さっきまでの騒々しさが嘘のように閑散とした風景が広がっていてイリアもいなかった。
「は?なぁ、おっちゃん」
振り返っておっちゃんに訪ねようとしたが、おっちゃんもまたいなくなっていてそれどころか店すらなかった。
「……………嘘だろ?」
しかし、俺の手にはネックレスがある。あ………る?
ずっと持っていた筈のネックレスはそこにはもうなかった。
「………はははは。酔ってたのか?馬鹿だな〜俺は」
何処から酔ってたんだ?イリアに会ったときからか?
じゃあイリアって誰だったんだ?




