ダンジョン
新年明けましておめでとうございます。久しぶりの投稿ですが今年も宜しくお願いします!
「あーー、だるい」
「レンヤ先生、気を引き締めてください。明日行くダンジョンがいくらレベル4でも何らかの原因で危険な場所になっていたとしてもおかしくないのですから」
「じゃあなんで修学旅行にそんなとこにいくんだよ!」
俺は今、修学旅行に行く場所の下見としてダンジョン近くの街に来ていた。『休日』なのにだ!家のこととか家のこととか家のこととか色々しなきゃならないことがたくさんあるのにだ!
「はっははーっ!仕方ないな。あいつらは戦いが大好きだからな!」
豪快な声でゴリ先生ことゴリラが笑い飛ばした。あ、逆か。ゴリラことゴリ先生か。
ゴリ先生は今回のダンジョンの下見のメンバーだ。ゴリラみたいな体格しているくせに教科は家庭科だ。絶対調理器具とか破壊しそうなのに何故か繊細で料理は上手いらしい。
「あらあら、皆さんお揃いね」
と、そこへ今回のリーダーのカレン先生が来た。魔術科の先生でいかにも大人の女性って感じの人だ。胸元を開けて色っぽさも醸し出している。
「ちょっと、カレン先生、生徒がいないからってさらけ出しすぎですよ?」
「まあ、いいじゃない、今日は明日に向けての最終確認と飲み会なんだから」
そう。初日はダンジョンの打ち合わせという名目上でただ飲み会をする。普通では許されないことだが、ダンジョンではいつ危険が迫ってくるか分からないので、最後の晩餐的な感じの意味もあるらしい。
「じゃさっそく飲むわよ」
「というか~、なんでレンヤ先生は~、教師に~なったんですか~?」
完全に酔っぱらっているセレナ先生が俺に聞いてきた。
「え~と、なんでだったけ?」
「え~」
「そういうセレナ先生は?」
「ん〜〜」
セレナ先生はジョッキを空にしてから眠るような姿勢に入った。
「え?聞いてない?」
「………zzz」
俺はもう一度尋ねたがセレナ先生はもう寝てしまっていた。他の先生も酔い潰れているし、本当どうしよ?
俺は酒をチビチビ飲みながら鮎っぽい魚の串焼きを食べる。日本にいた時はバーベキューとかで食べていたが、その時はそんなに旨く感じなかった。でも、今は酒のつまみとして最高の料理と化している。
「……はぁ、なんであいつらはダンジョンに行きたがるんだろうな」
俺は今日何回言ったかわからない愚痴をこぼす。
「…、レンヤ先生はダンジョンはどんなものだと思いますか?」
さっきまで寝ていたセレナ先生は急に尋ねてきた。俺は一瞬驚くもセレナ先生の問について考えた。
「…………クソみたいなものだな」
頭の片隅にあるダンジョンを思い浮かべながら言った。
「………そうですか。まあ、実は私も嫌いなんですけどね」
「へぇー、そうなのか。意外だな」
「そうです、ね………」
セレナ先生は少しだけ顔を上げる。心なしかいつもより疲れているようにも見える。
「………やめるか?」
「い、いえ」
「そうか、なんで嫌いなんだ?」
「………人が死ぬからです」
セレナ先生は小さな声で、それでもはっきりとした声で言った。
俺は昨日の事を思い出す。生徒達に万が一ダンジョンで死ぬことがあっても一切学園は責任を取りませんといった内容のプリントを配布した。
そんなプリントが配布されたってことは実際ダンジョンで生徒が亡くなったことがあるのだろう。
「じゃあなんで学園は修学旅行にダンジョンなんかを入れるんだろうな」
「…………生徒達に人気だからでしょうね。実際、この学年の全てはダンジョン探索ですし」
「俺には理解出来ないな。海とかで遊んだほうがよっぽど楽しいに決まってるのに」
俺は酒を新しくついで一杯を一気飲みする。
「生徒達は強さを求めているんです。王国騎士団、王国魔術団、冒険者、になるには実戦が必須ですからね。でも、彼らはダンジョンの本当の恐ろしさを知らない。生徒間での実戦練習とは違って相手はどんなことでもしてくる。卑怯なことでは待ち伏せとかですかね。殺気も感じ取れないのにどうやって対処するって話ですよね?今回のダンジョンレベルは4。これは中級冒険者が行くような場所なんですよ?中級冒険者より彼らの方が強いかもしれません。でもダンジョンでは経験が物を言うんです。それなのに、それなのに……、」
セレナ先生は最後に聞こえるか聞こえないかのギリギリの声で「生きて卒業して欲しい」と言った。
「………………っち、」
俺はその言葉に何も返すことが出来ず、無性に自分のことが腹ただしく感じた。
俺は酔って動けないでいる3人を一人ずつ宿屋まで運ぶ。ゴリラは起きとけよ、と思ったが仕方ないので転がして運んだ。ん?だって担げるわけないからな。
最後にセレナ先生を運ぶ。肩を貸しながらゆっくりと。
??
俺の隣を通り過ぎていった小さい銀髪の少女。
何故なのか分からないが、
俺の心臓がバクバクして止まらない。
何か嫌な予感がする………




