イヴの記憶2
「なに、この魔力、大きい……」
私は目の前の明らかに異彩を放つ女に体が動かない。
「あらあら、あなたは気付くのね」
女はゆっくりとこちらに近づいてきた。
「いい、ラナ。私が食い止めるから逃げるのよ」
ラナの位置は角度的に見えないはずだ。うまくいけばラナだけでも助かる
「で、でも………」
「いいから早く」
私は小さな声で、それでも力強い声でラナに逃げるように言った。
「絶対、生きてね」
ラナはそう言うと、音をたてないように走った。
女を見るが、気付いている様子もない。
(良かった)
「さてさて、あなたはどれだけ魔王である私を楽しませてくれるの?」
「ま、魔王!?」
「あら?そうよ。私は魔王ベリアナ、よろしくね」
そう言った女、ベリアナは魔力を放つ。
っ!凄い、魔力!
立っているのさえままならない程の威圧を肌全身で感じる。
でも、ここで倒れるわけにはいかない!
まだ、ラナはそこまで遠くまで逃げてはいない。ちょっとでも時間をかせがないと
「『フレイム』!」
私は瞬時に魔法を唱える。炎が5つベリアナに向かって飛んでいく。
「もう、」
ベリアナは片手で虫を払うように私の炎を全て消した。でも、それはダミーだ
「あら?」
私はフレイムを放った後、すぐに炎で出来たベリアナの死角にはいっていた
「『バーン・ドライブ』!!」
バーン・ドライブ
それは私が使える最強の魔法。
この魔法が使えるのはA級冒険者でも数少なく、炎の魔法のなかでもとびきり高威力の技だ。
「うーん、期待はずれね、」
そう言うとベリアナは魔法で剣を造りだし、受け止めた。
「うそ、」
確実にかなりのダメージを与えられると思っていたので、体制が変えられない。
ベリアナは普通に私のみぞおちに蹴りをもろに喰らわす。
「うぐっ!」
体が宙に浮く、そのまま横腹にまたまた蹴りを食らう。
「っく!あぁ!」
私は馬車にのめり込んだ。
(あ、無理だ)
私はもう生きることを諦めた。この相手には絶対勝てない。
体中が痛い。もう、痛いのは嫌
(もう、楽に殺して貰おう)
私は起き上がるために地面に手を付く。
んーー?
ちょうどそこに本があった。そう、叔父からもらった物だ。
(最後の悪あがきでも)
私は生きることを諦めるのは最後にこの魔法だけ試してからにしようと思った。
私はよろけながらも二本足で立ち上がった。
「あらぁ?」
私は全魔力を指先に集中させる。
相手は余裕をこいている。これならチャンスはある!
「…………っ!!」
私が魔力を集中させ、魔法を構築した瞬間、ベリアナの余裕の表情が消えた。
「ちっ、なによ、この威圧……」
ベリアナは即座に魔法を構築し始めたが、もう遅い。
「ちょ、」
「いけぇーーー!!『アルテマ』!!!!!」
私の渾身の一撃が放たれた。
白い炎は地面をえぐり、木々を焼失させ、ベリアナに向かっていく。
「くっ、ぎぎゃぁぁあああーーーっ!!!」
ベリアナの断末魔が聞こえてくる。
魔法が消えた後、ベリアナの姿はなかった。
勝った?
私は地面に倒れた。魔力切れだ。
もう、体は全く動かない。そのまま私の意識はーー
「あんな攻撃があるなんてねぇ?」
っ!?
意識が途切れる寸前、凄まじい魔力を近くで感じた。これは、さっきのーー
私は首を無理矢理持ち上げて見上げる。
「魔王………!」
「そうよ?いや~さっきのは良かったわ。両手が必要になったわ」
そうはいいながらも全くの無傷だ。化け物め、
「私ね?貴方のこと気に入ったわ」
「………」
「殺さないであげる」
「…………えぇ?」
殺さない?見逃してくれるの?
「エエそうよ、………貴方はね」
「‥‥‥‥?」
「離して!!」
後ろの方から声が聞こえた。
「う、嘘‥」
その声は知っている。毎日聞いてきた声だ。
「ラナ……?」
私は妹の名前を呼ぶ
「あー、この子ラナって言うのね?ほーら、お姉ちゃんに挨拶してね?」
フードを被った男がラナを私の前にやる。
「お、お姉ちゃん……、ご、めん、」
ラナは私の姿を見ると謝り涙を流した。
「あらぁ?感動の再開ねぇ?いいわねぇ」
そう言うと、ベリアナは何処からか細長い鉄の棒を取り出した。
そして、それを
グサッ
「え……?」
「きゃぁああぁ!!!」
ラナの太ももに刺した。
「ラナ!」
「う、うぅ、」
ラナは必死に痛みをこらえる。
「私ねぇ、絶望を与えるの好きなのよねぇ」
そう言って、また鉄の棒を取り出した。
「次は何処がいいかしら?腕?足?腹?それとも目?」
「あ、あぁ」
ラナは恐怖でもう声が出ない。
「じゃあここね」
グサッ
次は手のひらを刺した。
「うあぁぁーー!!!!」
「やめてぇ!もう、私を刺して、ラナには手を出さないで!」
「ダメよ。私は絶望が大好きって言ったでしょ?今の貴方の顔
ーー最高だわ」
ベリアナは一本、また、一本と鉄の棒をラナに刺していった。
刺していくほどにラナの悲鳴が大きくなる。
やめて
やめて
ラナを傷つけないで
お願い
「あぁあぁぁ、あぁああ、」
そんな願いは叶わず、また、一本とラナに刺さっていく。
「う、‥‥お姉ちゃん」
だんだん悲鳴も弱々しくなってきた。
「ラナぁ、ダメぇ、死んじゃイヤぁ」
私は動かない体を必死に動かそうとするが、全く体に力が入らない。
「今までありがとう」
ラナはにっこりと笑った。
グサッ!!
鉄の棒がラナの心臓部に刺さる。
トドメだ
ラナの目の色は徐々に失われていく。
「なんか言いたいことある?」
やりきった顔をしてベリアナが聞いてきた。
「ぶっ殺してやる」
「ふふっ、いいわよ?」
そう言うと、ベリアナは消えた。フードの男も一緒に消えていた。
この日、私は決めた。強くなってベリアナを殺す、と。




