ブルガリヤの街
「あっ!?寝坊したー!今何時?卒業式に間に合ーーって、そうか、異世界だからないか…」
目を覚ましたら見えるのは青空。本当に異世界に来たという実感が再びわいた。
「何?うるさいわよ朝から」
「す、すまん。勘違いしただけだ」
俺の隣でルシアが目を擦りながら起きる。あれ?俺って女子と一緒に寝てたのか?
「それで朝ご……街ってどこにあるんだ?」
朝ごはんがないのをわかっていてもつらい。はやく街に行ってパンの耳でももらおう。虚しい。なんで異世界に来てまでこんな虚しく感じなきゃならねーんだよ。
「今から行くからついて来なさい!」
「おう、わかったとはならねーよ!いきなり過ぎるだろ!準備とかあるだろ!」
ルシアは冷静な態度で口を開く。
「何を準備することがあるの?」
俺は周りを見渡した。非常食はない(今食べるものもない)水筒もお金もない。
「…………………行こうか」
なんで街に行くのにこんなに虚しくなるのだろうか。
「じゃあ行くわよ!捕まって!」
言われたように左手を握りーー空を飛んだ(吹きとばされた)
どうやら、空を飛んで動くのは、コスパが悪く、遅いらしい。だから毎回吹きとばされて、移動している。だからといって楽しくはない。俺は何度も言うが、絶叫系に乗れない。だから、遊園地とか全然楽しめない。
2時間後、目的の場所に到着した。
ーブルガリヤの街ー
王国フェアリーメの東端に位置する街
「なあ、検問があるんだが大丈夫なのか?」
「………大丈夫よ」
「今の間、すごく怖いんだけど」
見た感じ、国に入るために列に並んで検問しなければならないっぽい。早速、俺たちは、検問の列に並んだ。
「身分証明書を提示してください」
優しくそうな検問官で良かった。ゴリゴリの怖そうな人だったら俺失神しそうになるもん。
「すみません、持っていないのですが」
「では、通行料として1000ベニーお支払いください」
(ぐっ!終わった、入れなー
どうやって入るか考えていると、急に手を引っ張られ街に入った。
「さっさと逃げるわよ!このノロマ!捕まりたいの!?」
(いや、お前が勝手にいれたんだろ!)
「コラー、待てー!」
「「ひぃーーー!」」
さっき優しくそうだった検問官は鬼の形相になっており…上半身の服が破れてムキムキの体が見えた。
((人は見かけによらないって言うけどあれはないでしょー!?))
俺たちは生きるために全力で逃げ回った。
「はーー、はーはー…ここまでくればもう安全だろ」
「そ、そうねー」
路地裏てぜぇーぜぇー息をきらしながら、体を休める。
「なあ、ルシア。お前街に入ったことあるんだろ?なんでああやって入るんだよ」
「身分証がないからよ。」
まじかよ。
息を整えた俺達は本命の働く場所ーギルドーに行くことにした。
ギルドは大きな建物で1階は食事や依頼、受付があり、2階は事務室などがあるようだ。
俺たちは受付で、まずギルド登録することにした。
「登録料で1000ベニーかかるのですが」
「す、すみまー「バーダクに付けといて」っえ!?」
急にルシアはベーコンという人に付けとくように言った。
「すみません、そのバーダクさんはおのバーダク·ロトント様で間違えないでしょうか?」
「そうよ」
「あ~なるほどあなたが噂の…」
ギルドの受付の人は何故か納得したように呟く。
「ん?なんか言った?」
「いえ、何ございません」
(おいおい誰だよバーダクって、それより噂のってお前今回のように何回も金借りてんのかよ!てかそれならさっき入るときもその手を使えよ!ん?ていうかさっきから殺気を感じるような…)
後ろを振り返るとすごい形相で俺たちーというよりはルシアを見ていた。女性なのに筋肉ムキムキで露出度の高い服を着ている。背中にバカでっかい斧背負ってるし。
(あっ、あの人がもしかしてー
「ル·シ·アちゃ~ん」
その人は急に笑顔(殺気はまだこもっている)になってルシアを呼んだ。やっぱりあの人はー
「誰よ、私の名前を呼ぶの…は…っげ、バーダク!?」
「ルシアー!いつもいつも勝手に私の金を使って!」
バーダク·ロトント、その人だった。
「だ~か~ら、あんたにお金を返すためにお金を借りるって言ってるの!いい加減理解しなさいよ!」
「そういってギャンブルで全部すったお前が言うか!信じられるわけないだろ!」
ルシアとバーダクさんは他の連中に迷惑がかかるということで、事務室の一つで話しあっている。かれこれ3時間この調子である。ちなみに俺は、下で食事(バーダクさんのお金でしれっと)をとり、依頼などを見て、ちょくちょくルシアたちの様子を見に行っている。
ギルド員がデザートを持ってきてくれ、それを食べながらいろいろ質問した。
ギルド員にバーダクさんのことを聞くと、なんとあの人Aランク冒険者だということがわかった。ランクは上からSSS(ギルドが面白半分で作った。誰もなったことがない)、SS(伝説級でここ100年いない)、S、A、B、C、D、E、Fまである。SSSっている?だいたいBランクにいくだけで凄いっていうレベルらしい。バーダクさんってめっちゃ凄い人じゃん。サインもらおう。売ったらいくらくらいするだろ?
するとギルド員に「そろそろあの二人を止めてくれませんか?」と言われた。
はっきり言おう、無理です。あの中入ったら死ぬよ、俺。
「俺には「デザート食べましたよね?」っ!!」
可愛い顔したギルド員がニコニコしながら顔を寄せてくる。
(はめられた!?)
「じゃあバーダクさんにつけと「バーダク様に言ってきますね♪︎」っわ、わかりましたから。止めに行きますから。はぁ、」
結局俺は重たい足どりで二人を止めにいくことにした。ついでに、もうギルド員の好意は信じないと決めた。
「な~そろそろ喧嘩やめてくれる~♪︎」
俺は部屋に入ってとびっきりの笑顔で言った。
「「あん?」」
「っひぃ!」
ルシアとバーダクさんにめっちゃ睨まれる。やっぱ無理かー
それにしても怖い、怖すぎるだろこいつらのオーラ。
「ていうかお前誰?」
「……えっと、山宮蓮夜です。ルシアの仲間です」
俺は一応異世界人であることを隠した。なぜなら、だいたいのラノベとかでは自分が異世界人とは最初ばらさないらしい。(弟情報)
「は?仲間?ルシアに?」
「ちょっと、どういうことよ、それは!」
うん、やっぱりルシアはぼっちだったんだな。
「あ。そうよ私はバーダクの借金を返すためにそいつと仲間になったのよ!」
急にひらめいたとばかりにてきとうなことを口走るルシア。ボロ出しそうで怖い。
「……本当なのか?」
バーダクさんは俺に向かって問う。
「本当よ」
いや、なんでルシアが答えるだよ。あれ?このやり取り前にもあったな。
「本当なのか?そこの奴?」
バーダクさんがこちらに向いて聞いてくる。その後ろにいるルシアの目が光る。要らないこと言ったら潰すわよと言わんばかりに。
「ホ、ホントウノコトデス」
「なんで片言になってるか気になるけど、まあいいわ、貸してあげる。た·だ·し今回だけだからな!食事代も!」
(バレてたのか、じゃあ止めに来なくても良かったじゃねーか?)
「じゃあ今回、500万ベニー貸して?」
「「っおい!」」
俺とバーダクさんの声が重なり、バーダクさんに「お前も大変そうだな」っっていう同情の目を向けられた。
ただ、残念なことに俺はそんなに良い人じゃない。もっと高くねだれよ!5000万って言えよ!アンカリング効果って知らないのかよ!そのあと「仕方ない1000万でいいよ」っていったら、その倍もらえる可能性が高くなるだろ!っていう意味での「っおい!」だった。
腹黒い俺に少し恥ずかしくなった。
「バーダク、武器は買ってくれる?無いと私たち死ぬわよ?」
「っ!まあそれくらいならいいか」
(あれ?バーダクさんって意外と甘い?)
「それじゃあ早速行くわよ!オークション会場に」
「「は?」」
「やっぱりやめたはなしだからね!」
(あーわかった。こいつは鬼だわ)
バーダクさんは何も反論できず、ただひたすらにルシアを睨みつけていた。