勇者パーティー2
勇者の歓迎会が終わった後はあっという間だった。
すぐに国を出る準備をして、三日後にはもう国を出ていた。
「これから魔性の森に行く。そこに魔王の幹部がいる可能性が高い」とのことだ。
この世界には公には公表されていないが魔王は8体いるそうだ(人々に不安を与えないためだそうだ)。その内の4体は西と北にそれぞれ国を持っており、勇者個人ではどうにもならないらしい。
勇者の使命はその他の4体の魔王を倒すことだ。この4体の中でも一番ヤバいのがイリアという魔王らしい。前代に最強と呼ばれた勇者が手も足も出なかった相手だそうだ。
「もし、その魔王と会ったら?」
「戦うしかない」
そう言われた。いくらなんでも無茶すぎる。
今回の魔王の幹部はベリアナという魔王だから多分イリアとは会わないと言っていた。フラグな気もするが放っておく。
散々歩いた私達は暗くなって来たのもあり、テントを張ることにした。
テントは大きいのが一つ。どうやらそこで全員が寝るらしい。パーティーってそんなもんなんだ……
料理担当はマーナ。このパーティーの中で一番上手いらしい。
「わ、私も手伝います!」
「おお、サンキュー。これ切っといて」
「はい」
私は手際よく、野菜を切っていく。包丁の音がトントンとリズムよく流れていく。
(思い出すなあ、調理実習の時)
「はい、今日は野菜炒めと味噌汁を作ります。手分けして作ってくださーい」
今回の調理実習は蓮夜くんと琴音ちゃんと一緒の班になった。この時の私はまだ、蓮夜くんのことは好きではなかった。
「わー、蓮夜くんって料理できるんだ」
「へっ、親の手伝いしてるからな。てか美咲もできるんだな」
「私も親のお手伝いしてるからね」
他愛のない話をして料理をする。
「蓮、おかしい」
「ん?どうした?琴音」
「わからない」
「はあ?どういこと?」
琴音が可笑しなことを言って、急に真顔になる。
「………いける」
「いや、なにが?」
琴音は必死に味噌汁を混ぜる。
「まあ、いっか……う、すまんトイレ」
蓮夜くんはトイレに走った。私は肉を焼き始めた。
しばらく経った後、
「美咲、助けて」
「ん?どうしたのって、え!?」
なんと、味噌汁が吹き零れていた。
「火を、火を止めて」
「わかった」
ぼぼぉ!
「なんで火を強くするの!?」
「間違えた」
ようやく火を消し、吹き零れたのを拭き取る。
「……美咲」
「?大丈夫だよ、全然いける」
「そうじゃなくて、あれ」
琴音が指を指す。その先には黒い煙が立っている。
「あ!!!」
野菜炒め!火を消し忘れてた!!
慌てて火を消すがもう手遅れだった。真っ黒になった野菜はもはや食べ物ではない。
「すまんすまん、ってええ!!」
料理を皿に盛った後、蓮夜くんが帰ってきた。そして皿に乗った料理を見て驚く。
「琴音……」
「蓮、私の味噌汁美味しいよ?」
「味噌汁……え?この野菜炒めは……」
蓮夜くんは私の方を見る。気まずくなって目を反らす。
「ぷっ、ふはは。美咲でもミスんのか、はは」
蓮夜くんは腹を抱えて笑いだす。私は恥ずかしくなる。
「さ、食べるか」
蓮夜くんは椅子に座る。
「え?食べるの?」
「当たり前だろ?だいたい、俺今日弁当持ってきてないし」
「で、でも」
蓮夜くんは私のことを無視して野菜炒めを食べる。
「うん、食べれるな」
「あ……」
そのまま味噌汁を食べる。
「ん?おい、琴音、油揚げが繋がってるんだが……」
「うどんみたい」
「お前な……まあ、旨いぞ」
「良かった」
そのまま全て平らげていく。「いらないの?」と私達の分まで食べてくれる。
「ふぅー、食った食った。ご馳走さん」
食べ終わった蓮夜くんは後片付けを始める。
「あ……」
「ん?」
「あ、ありがとう…」
「いいって。途中で抜けて悪かったな、あと作ってくれてありがとな」
ニカって笑いかけてくる。私が蓮夜くんのことを好きになったきっかけとなったのはこれだろう。
蓮夜くんはあの時お弁当持って来ていた。隠れてこっそり食べているのを目撃してしまった。
なのにあんな嘘までついて失敗した料理を食べてくれた。
そこからだろう、私が彼を気になり出したのは。
「どうした?ぼーっとして」
「いえ、なんでもないです」
私は思い出してふふっと笑う。
「へんなの。あ、そうだ。ため口でいいぞ?」
「え?」
「ため口の方がしゃべりやすいだろ?」
「わかった。よろしくねマーナちゃん」
「ちゃん付けはよしてくれ、呼び捨てでいいから」
「わかった、マーナ」
「よし、それでいい」
マーナはニカって笑う。その顔が蓮夜くんと重なって恋しくなった。
ご飯の用意が終わり、メンバーを呼ぶ。
「おお、旨そうだな」
「今夜はチンティゴか」
「いいわね」
パーティーのメンツが食器の準備などをしながら集まってくる。
「さあ、食べましょ」
「え、でもまだバーダクさんが……」
「いいのよ、あの人いつもそうだから」
「でも……」
もう、みんな集まってることだし、ご飯を食べることになった。
「美味しい」
「旨い」
みんな口々に褒める。私も食べたが、すごく美味しかった。
「……うん、美味しい」
琴音ちゃんも、小さくモグモグしながら黙々と食べている。いつも思うけど、小動物みたいで可愛い。
「ってえ!?なんで琴音ちゃん!?」
「……おかわり」
「あ、はいはい、じゃなくて!」
「?」
琴音ちゃんは首をかしげる。
「知り合いかい?」
「あ、はい」
「琴音ちゃんなんでここに?」
「空より高く海より深い訳がある。」
「?なにがあったの?」
琴音ちゃんの顔が一気に真面目になる。
「追い出された」
「え、なんで!?」
琴音ちゃんの口から衝撃な言葉が発せられる。あの国が召喚者を追放した?
「暗殺の練習しろって言われたから、王様に刃物を宛てたら追放された。おかしい」
この時全員が思った。お前がおかしいだろ、と。
「えっと…琴音ちゃんはなんでここに?」
「それは………」
「氷上琴音、貴様は今からこの陰の暗殺の一員だ」
全身真っ黒の服に身を包まれた男が言う。
「……シャイなアザラシ?」
「なんだそれは!?陰の暗殺だ!」
寡黙そうな男は声を荒げる。
「まあ、いい。この部隊は主に、諜報や伝達、たまには暗殺もすることがある。まあ、お前の元の世界のことを聞いているから主に諜報をやって貰おうと思っている」
「………わかった。蝶々を捕まえたらいいのか」
「ちがーーう!!!」
またまた大きな声で言う。
「はぁ、もう暗殺の方が楽なんじゃ……」
男は肩を落とす。
「こう?」
「なに言ってるん、だぁ!?」
男は琴音を見た瞬間空いた口が閉じなかった。なぜなら、琴音が王様の後ろに周り、首筋にダガーを向けていたからだ。
「お主、なにしている」
「……暗殺の練習」
キリッとした顔で言う。
「おい、影者(シャドウアサシンは王様に影者と呼ばれている)。どういうことだ?」
「お、畏れながらガルム王。そいつがば、馬鹿すぎて手に追えず……」
「そうか……なら追放しろ」
「え?いや、しかし……」
「儂が良いといったら良いのだ!」
「は、はっ!」
琴音は男に持ち上げられる。そして、王国の外まで一瞬で連れていかれて、そのまま追い出された。
「…………」
「残念だが、ここでお別れだ。さらばだ」
男はすぐに消える。
取り残された私は
「あ、蝶々」
蝶々を追いかけて森に入った。そして、迷ってるうちにいい匂いがして美咲たちの元についた。
「それは………」
「それは?」
琴音は少し考えた後
「蝶からの思し召し」
「……え?」
美咲どころか全員がポカンという顔をしている。何でだろう?蓮は小さい時よくわからない時は意味深なこと言ってたら良いって言ってたのに……。
「ま、まあ、えっと名前は?」
「琴音」
「琴音か、琴音はこれから行き先とかあるのかい?」
「……ない」
「じゃあ、一緒に行こう」
アルマが屈託な笑顔でそういう。それに琴音は同意して、一緒にいくことになった。




