結婚式
「ノアよ、また外に出ておったのか。お前はもうじきポール皇子と結婚するのだぞ!王女としての自覚をもて!」
「申し訳ございません、お父様」
「ドルトン、ノアが結婚式まで外にでぬよう見張っておれ」
「かしこまりました」
「そ、そんな!」
失敗した。これでは結婚式前に逃げることができない。レンヤくんも当てにならなそうだし、私はこのままポール皇子と結婚しなければならなくなる。
「それは、絶対にいや」
しかし、何度逃げようとしても捕まってしまう。結局、結婚式の日までに逃げ出すことはできなかった。
「お嬢様、とても綺麗ですわ」
「そう………」
カラフルに着飾れているが、今の私にはモノトーンにしか映らない。もういっそ、魔法を使って結婚式を滅茶苦茶にしようかな。無理か、国内には魔法が使えないように結界が張られているのだから。
それからは、あっという間に時がたった。
「誓いのキスを」
ポール皇子と向き合う。
(あぁ、嫌だ。やっぱり無理だ……)
だんだんと顔が近づいていく、そのまま唇にーー
「はいはーい!そこまでにしようか」
なんだなんだとざわつきだす。私もなんのことかわからない。
すると、一人が「上だ!」と叫ぶ。みんな一斉に上を向く。
そこには仮面を被った長髪の男と黒い猫耳の少女がいた。
「我が名は………名は…………」
みんなが注目する。
「えっと……そう我が名はブラックキャッツ」
「そして私はこいつの飼い主ホワイトキャッツよ」
「誰がルシ……ホワイトキャッツの飼い猫だ!?」
「そりゃそうでしょ、私があなたの飼い主よ!」
「意味がわからん!」
「王をお守りしろ!そして手が空いている者はあの賊を捕らえよ!」
ボン!
「おう?なんだ!煙か!?前が見えん!王や皇子をお守りするのだ!」
そんな怒号が聞こえる。あぁ、もういい。このまま殺されてもいいや。死んで新しく生まれかわりたい。次はもっと庶民のところしてほしい。
急に誰かに抱えられる。
そのまま外に出て走っている。
「ちっ!どうする!?どこに逃げる!」
「え?決めてなかったの!?」
「くそ!ノア、どこにいい隠れ場所がある!」
突然私に声がかかる。隠れる?どいうこと?よくわからないが、「そこを右にまがって、左に細い道があって、そこから地下に隠れられる」
「おう」
男性はそう返事をして右に曲がるところを直進する。
「何してんのよ!こっちでしょ!」
「え?曲がるところあったか?」
「本当に、あんたって方向オンチね!」
そして地下に隠れる。
「ふぅーー、取り敢えず安心か、あっ!」
剣でもカスっていたのだろうか、仮面が取れた。
「あ、あなたは…」
涙がこみ上げてきた。それはボロボロと止まろうとせず、流れていく。
「ほら、もう自由だろ」
モノトーンにしか写らなかった世界がまた色を帯びてくる。
嬉しい、まさか助けてくれるなんて思ってもいなかった。
あの時素っ気なかったのに。
「ありがとう、レンヤくん」
また、涙が溢れてきた。
「落ち着いたか?」
一通りノアが泣いた後、俺は聞いた。さっきから何故かルシアがつねってくる。
「…うん、ありがと」
「じゃあ、作戦通りで」
「作戦って決めてたの?」
ルシアが聞いてくる。
「……………」
ごめんなさい、カッコつけただけです。
時は遡って
「明日、王女を盗みにいくぞ!」
「……大丈夫?どこかで頭打ってない?」
なんでこうルシアはつっかかって来るんだろう。俺だったらルシアにこんな話されたらーーうん、そう思うな。
「理由は…説明するのがめんどくさいからいいや」
「良くないわよ!」
「聞きたい?」
「……別に聞かなくてもいいわ」
(もしかして、王女のことを好きになったの!?そんなの聞きたくないわよ)
「じゃあ明日王宮に忍びこんで結婚式をやっている。そこから盗む」
「バレるんじゃないの?」
「そこで、これだ。つけ猫耳ブラック。俺は長髪のかつら。あと仮面」
「完璧ね、まあいいわ。明日王女を捕まえて、すぐ逃げるのよね?」
完璧なのか?俺的にはまだヤバいと思ってるんだけど。まあいいか
「ああ、この国ともさらばだな」
(なあ、結婚式のドレスの色ってあんなにカラフルなのか?)
(なにいってるの?あれが普通じゃない)
カルチャーショックだ。結婚式のドレスは普通純白でしょ。男は黒いスーツ着ているし。葬式かよ!
それで、いつ出ていこう。全く決めてなかったなー。プログラムとかないかな?一番カッコいいところで出ていきたいよね。
そうこうしているうちに、ノアとどっかの皇子がキスしようとした。やばいやばいすぐでないと。
「はいはーい、そこまでにしようか」
どんな止め方だよ。我ながら変だな。
あれ?見つかってない?もう一回声かけた方がいい感じ?
「上だ!」
やっと気づかれた。さあ名乗りを上げよう。
「我が名は………名は…………」
しまった!名前を決めるの忘れてた。怪盗Xか?ルパンか?どうしよ!?
「えっと……(レンヤ、ブラックキャッツでいいんじゃない)そう我が名はブラックキャッツ」
「そして私はこいつの飼い主ホワイトキャッツよ」
なにいってるだよこいつは!?というか名乗るならブラックキャッツだろ!お前の耳は今黒色だろ!あれ?俺がブラックって言っちゃてたか!
「だれがルシ……ホワイトキャッツの飼いねこだ!?」
危ない危ない、ルシアの名前を言うところだった。
そして、兵達が俺達に攻撃してこようとする。おれは煙玉を投げてすかさずノアを捕まえる。一度剣にぶつかったが、仮面にしか当たってないので大丈夫だ。
ノアをお姫様抱っこして走る。
意外と重…げふんげふん!ドレスがな、ドレスだからな!
そして今に至る。
「取り敢えずノアはこれに変装しろ」
俺はずらを取り、ルシアも黒色の耳を取る。ノアに渡した服装は、ザ·オタクセットだ。メガネも渦巻きがはいっている。
ノアはいやいやながら着ていた。前が見にくいようだ。
国の門は、俺が門番と仲良くなっており、ノアのことを風邪で寝込んでいたと説明していたので、すんなりとでることができた。
これで任務完了!