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見学者

あれから1カ月がたった。俺はヘンテコ親父からアンナさんの弟子になろうとしたが、全力で止められて仕方なくヘンテコ親父の弟子を継続した(給料は2倍。べ、別に給料が上がるからとかじゃないからな!ほ、ほんとだからな!)はじめは慣れない作業だったがようやく独りで武器が作れるようになった。


一方ルシアはというと初日は高難易度のクエストをうけ、失敗し、今は泣く泣く薬草集めをしている。


さて、今日は何を作ろうか。俺の仕事は基本的に新しい武器の作成。師匠の変なプライドで普通の武器を作らせてくれない。


「やっぱり刀だな」


日本といったら刀。日本刀!どんなんかはよく知らんけど、多分片方を刃にすればいいだろう。


俺はカンカンと鉄を打っていき、素早く作っていく。試作品は貰えるため、俺好みの刀をつくる。


「よし、完成か」

「おお、作れたか弟子よ。それはなんだ?」


近くで武器を作っていた師匠が覗きにくる。


「これは、刀と名付けます。通常の剣は両刃なのに対してこれは片刃です。その分軽く、振りやすくなっています」

「ほう、うーん面白味がないな、没だ」


なんでだよ!お前が作るものよりはるかにいいぞ!


「そんなのより俺のを見ろ!この剣を!」


それはなんの変哲もない剣だった。


「これはただの剣ではない。根元にライトが付いていて夜でも相手が見える」


おぉー、意外とまともなの作るんじゃねーか。


「どうだ?いいだろ?」

「流石ですね師匠!して、欠点は?」

「これにはない!」


嘘だろ!?いつも、ただーっが入るのに!?これ本当に凄い代物じゃねーか!


「ほら、よく見て学ぶがいい、弟子よ」

「ほうほう、なるほどーー、ん?」

「どうかしたか?」

「いや、これだと光が刀身に一直線にしか進まないかと」

「?それがどうした?」

「これだと夜に剣だけが光っていて逆にモンスターにバレやすいし、何より光消せないんですか?」


そう、この剣は剣のツバから光がでている。つまり、剣だけ光っている。もっと言えば振れば光が動いてうっとうしい。第一明かりならランタンで十分だろう。


「じゃあそれをささげよう、弟子よ」

「いらんわ!」







「師匠、俺思うんですよね」

「どうした?弟子が欲しくなったか?」


「違いますよ。師匠は転職して定食屋をやればいいとおもうんです。鍛冶はアンナさんに任せて」


ちょうどお昼になり師匠のところでご飯を食べている。これがまた、なぜかうまい。鍛冶なんか辞めればいいのに。本気でそう思ってしまう。


「何を馬鹿なことをいっている!俺は鍛冶職人に誇りを持っているんだぞ!」

「売り上げの大半はアンナさんのなのに?」

「………そ、それは。そう俺は大器晩成だからだ!いつか俺の作品が世界中の目をひくようになる!」


駄目だ……。もう手遅れだ。大器晩成っていったってもうおっさんじゃねーか。成功するときにはもう長くないだろ。


「休憩は終わりだ。アンナと俺は店にいるから、お前はまた新しいのを作れ」

「はーい、師匠」





次は何を作ろうか。やっぱ銃か。一番強いもんな。


どうやってつくるんだ?まあいいか、適当に作ろ。


早速作業に取り掛かる。









「へいらっしゃい、どういったものがご覧で?」


フードを深く被った一人の少女が店を訪れた。


「えっーと、作業の見学ってできますか?私、一度武器を作っているところをみてみたいんです」


「…………………」

「やっぱり、駄目ですか?」


フードの少女は残念そうにする。


「アンナーーー!!!やっぱり俺の時代が来てる、来てるぞーー!!」

「うるさいわよ、そんな大きな声出さなくても聞こえるわよ親父!」


アンナが耳を押さえながらこちらにやってくる。


「うちの、うちの武器をつくるところ見学したいんだとよ!」

「えっ!そうなの!?」

「は、はい…」


まずい!アンナは直感的に思った。親父の変な武器を作っているところを見られるとイメージダウンだ。ただでさえ親父の作品は奇抜で、店にだすのもまだましなものだけだ。


本当は自分が打ちたいところだが、そうすると親父が落ち込む可能性があるーというよりは確実に落ち込む。どうするべきか。


そこである名案が浮かぶ。


(ちょっと、ちょっと親父!)


親父を引き寄せて耳打ちをする。


(ん?なんだ?)

(やっぱり親父の腕は凄いじゃん?だから簡単に世間に見せてもいけないんじゃない?)

(そ、そうだな!俺の腕を真似されてはかなん!)


チョロい、チョロすぎる!助かるんだけど、ちょっとは抵抗しろよ。私の父ながら呆れてしまう。


(そこで、親父には弟子がいるじゃない)


親父はピカーン!と来たようでお客さんのところに走っていく。


「俺の腕を見せてやるから誰にも言うなよ!店番は弟子とかわっぷ!?」

「ごめんなさーい。親父は忙しいので、親父の弟子がいま作品を作っているので、どうぞごゆっくりご覧になってくださいー」

「わ、分かりました…」


(もー!この親父は何いってんだよ!馬鹿なのか!?馬鹿なんだけど、おかしいよ)










うーん、わからん。やっぱり銃ってどうやってつくるんだ?弾替えるのめんどくさいし、魔力弾でも放てればいいか。それならここうしてああしてーーん?誰かに見られてる気がする。


後ろを振り返るとフードを深く被った人がいた。


「あのー」

「邪魔でしょ、う…か……っ!」


声から女だということは分かったが。なぜか声がだんだん小さくなっていった。


「?大丈夫か?」


下から覗いて見ると………王女じゃん!


「はあ!?ノアんむっ!」

「大きな声出さないで」


んむんむむむ(分かったから)ふむふむふむむむ(手を離してくれ)

「だから黙って下さい」


ふむっふ(違うって)!!ふむ(手を)!」

「だから、静かに」


「うー、うーん…………」


呼吸がーーーー



「あっ!ごめんなさい」


俺はやっとの思いで手を離れた。


「はーー、はあー、はあーーひどいめにあった」



てかなんでこんなところに王女がいんだよ!


「お前この前はよくもー」

「申し訳ございませんでした」

「謝るの早いな!プライドとかねーのかよ」


「はぁー、もういいか、上品に話すの疲れるから普通に話すね」


なんだよ、この切り替えの速さは。


「王女が何してるんだよ」

「ノアでいいよ。それは、礼儀の勉強が大変だから逃げ出してきたんだ」


舌をだしてペロッてする。


「で、どうして見学に?」

「店の奥に入れば見つからないかなて考えたんだけど、まさかーー名前なんだっけ?」

「山宮蓮夜だ」

「レンヤくんに見つかっちゃうとはね」


いきなり下の名前とかコミュ力えぐいな。


「で、王宮を抜け出してきた本当の理由はなんだ?」

「えっ?」


ノアは意外と顔にでやすいタイプだな。


「まあ、別に話さなくてもいいが。俺には関係のない話だからな」

「………」


俺は銃を作る作業に戻る。とんとんカンカン音が響いてく。ノアは少しうつむいている。


「ねえ、なんでレンヤくんは優しいの?私が王族だから?」

「んーー?なんでだろうな。強いて言うならノアのことを嫌ってないからかな」

「変わってるね」

「うるせー」

「じゃあ、また明日も来るね」

「そうか」


ん?明日?なんで来るんだ?そんなに会話が弾んだ気がしないんだが、まあいっか。明日のことは明日考えよ。


結局銃は完成せず、明日に持ち越すことにした。







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