脱出…できない?
「………ねぇあの結界はなに?」
外に出て、レナが言った。
「あぁ、あれはルーリュ様のですね。勇者を逃さない…いや、五角ザンバ様を逃さないためですかね」
「…!?それって…」
「ええ、ザンバ様は負けますよ。覚醒した三人の勇者内二人がいますからね。まぁでもここにいる民の殆どは死ぬでしょうね。後勇者パーティーの数名は。」
現在覚醒した勇者は三人。〈剣聖〉〈魔女〉〈聖女〉と呼ばれる者である。因みに勇者は21人存在する。下の方は冒険者よりも弱いこともあり、かなりの勢いで減る。
「じゃあなんでこんなことするのよ?」
「それは……」
ロビンは顎に手を当てて少し思案する。
「まぁ言ってもいいですか。娯楽ですよ娯楽」
「娯楽…?これから起きることが全部遊びだっていうの!?」
ロビンは大きく頷いた。
「えぇ、そうです。もちろんザンバ様のではありませんよ。1~3角までの魔王様のですよ」
段々と雲が暗くなってくる。これから起こる惨劇を物語っているかのように。
「人が死ぬのがそんなに楽しいのかな?」
ノアが少し怒った口調で尋ねた。
「いえ、本質はそこではありませんよ。重要なのは絶望ですから」
「絶望…」
「1~3角の魔王様方はもう何千何万年と生きておられますからね。刺激が欲しいんですよ。生きるか死ぬかの刺激が。ですが、今の勇者では弱すぎるんですよはっきり言って。だから奮起してもらおうとですね」
「クソ野郎だね」
アイシャは空に向かって舌を出してべーっとする。
「一応弁明しておきますと、私の主様は強い人を探しているだけですからね」
「さっきと何が違うのよ」
「ルーリュ様は強い因子を残したいだけなんですよ。それも自分より強い因子を持つ方の」
「…ふん。目的がどうであれやることは変わってないじゃない」
仮に勇者が育ってルーリュより強くなったところで殺されるだけだ。因子を残すなんてできない。つまるところは強者に出逢いたいだけなのだ。
「………戻るか」
俺はボソリと呟いた。
「戻られるなら早い方が良いですよ。手遅れになる前に」
ロビンはニヤリと笑った。
雷鳴が鳴り響く光と音と共に奴は消えた。
「ね、ねぇ行くの?」
アイシャが恐る恐る尋ねた。
「あぁ」
「当たり前よ」
「友達も助けたいしね」
「こうなったらいくしかないわよ」
アイシャは少し苦い表情をしたが、走って戻っていく四人の背中を直ぐに追いかけた。