ロビン
「お久しぶりですね魔王レナ様」
ロビンと名乗った紳士は深々と頭を下げた。
「え…?知り合い?」
先程レナが魔王だと知ったアイシャは困惑した表情になる。
「ロビン、ロビン………っ!まさかっ、ルーリュ様の!?」
「はい、ルーリュ様の執事で御座います」
ロビンはニコニコしながら応えた。
「誰だ、そのふっくっ〜らって奴」
俺も話についていけないので、レナに尋ねると、何故か物凄い寒気がした。
「誰のことを言っているのですか?」
ロビンはニコニコしながら尋ねた、と言ってもこの御面は目に穴が空いてないのでどんな表情をしているのかわからないが…
「やめて、私のゆう…こ、恋…びとですよ…」
「いえ、レナ様のお連れだからといって我が主を馬鹿にする発言はいただけない。それにレナ様といえど、覚醒すらしていない魔王が私に勝てるとでも?言葉には気をつけて頂きたい」
「何このやな奴」
おっと、更に悪寒がするぞ?ちょっと寒いから外にでようかな?
「レンヤは黙ってて」
ルシアの声が聞こえた。
「それで、ふっくらプリンは誰なのよ」
今度は凄まじい悪寒+よく分からないが兎に角ビキッという音が聴こえた。
「嘗めてるのか貴様らは…!」
「………レナ、コイツ話が通じないんだけれど」
「…あ……うん」
レナは何か言いたげな様子だったが、ロビンの怒りの顔を見て、色々と諦めた。
「ルーリュ様は2角の魔王。もちろん覚醒していて、1角魔王イリアと互角の力があるって言われてるわ。で、ロビンさんはそのルーリュ様が率いる魔族の幹部兼執事なの」
「へぇ〜、そんな偉いやつがなんでこんなところに?」
「趣味ですよ。呪いの御面コレクションを売るのが」
コレクションしてるのに売るのか…コイツやっぱり変だな。
「それよりこれ外せないのか?」
「私は呪いに精通してましてね。これらの御面の中には太古から作られたよく分からない呪いがあるんですよ。まぁ、それだけだと面白くないので、全ての御面に私が外せない呪いをかけているんですよ」
……何言ってるのコイツ?外せないのかって聞いたんだよ。誰が御面について述べろって言ったんだよ。
取り敢えず、コイツがつけた呪いなら外せるよな?
「じゃあ外してくれ、これを」
「では、お買い上げになってからで」
「はぁ?外せよ」
「代金は45万です」
よんじゅう..ご万?こんな御面に?
「払うわけ無いだろ!さっさと外せよ!」
俺はビシッと指をさす。
「誰に指してるのよ、それノアよ」
「ん?間違えたこっちか?」
「そこには誰もいないわよ」
「………」
だって仕方ないじゃん。見えないんだから
「まぁ取り敢えず外せよ」
「代金を」
「高けぇよ。払えるか!」
俺は詰め寄って言うが反応がない。俺はゆっくりと手をのばすが手は空を切った。
「あぁ…!もう!いいわ!」
俺は無理矢理御面を外そうとするがみっちり顔にこびり付いていて取れない。
「ねぇ、外してくれない?」
「……ま、いいですが、これは…ね」
レナが頼むとロビンはあっさりと了承して俺に近づいてきた。
「『解除』……これで私の呪いは解除しましたよ」
「最初からしとけよ」
俺はブツブツと文句を言いながら、御面に手をかける。
………ん?
いくら御面を引っ張っても全く取れる気配がない。
「おい!解除してねぇじゃねぇか!」
「いえ、しましたよ。ただ、その御面が元々取れない呪いが掛かっているのでどうしようもないだけですが?」
……はぁ?元々取れない呪い?……やばいじゃん
「え…どうすれば取れる?」
「ですから、太古からの呪いは無理だと」
「………終わった」
一生目が視えない…この世界に点字ブロックがあるとも思えないし、なによりご飯が食べられない。あれ?でもなんで呼吸はできるんだ?
「なぁ、これって口に穴あいてるか?」
「ん〜、話してるときはそれに合わせて開いてるよ」
おぉ、食料問題解決。後は目だな。
「目をどうにかしないとな…」
「え?開いてるよ?」
「本当か!?」
「あ、閉まった…」
え…どういうこと?開いてるときは確か目を瞑って…もしかして!
俺は目を瞑った。
「目開いてるか?」
「うん、開いてるよ」
「オッケイ」
この御面は目が開いているときには閉まっていて、目を閉じているときには空いているんだ!
これで視力問題解決!
俺は目を閉じる。見えない。……目を開ける。見えない。目を閉じる開ける。見えない見えない。目を開ける、見開く、ギュッと閉じる、開ける。見えない見えない見えない見えない。
駄目じゃん!!
「うん、誰かにおんぶして貰おう」