駅のホームで
駅のホームで見かけた彼女は可愛かった
大学で初めての夏休みなのだろうか
茶色いメッシュを入れたショートカットが可愛い
半袖の真っ白なワンピースが可愛い
爪もきれいに切ってあり、薄く口紅をつけているのも可愛い
左手の腕時計を見ている彼女の後ろに、男が立った
彼女のストーカーだろうか?夏なのにマスクをして、長袖で肌を隠している
青のジーパンに黒のスニーカー、野球帽と逆に目立つだろう
彼女は後ろに立たれたことに気が付かないのか、スマホを取り出すと、LINEを起動させたようだ
もうすぐ電車が入ってくる
その時、後ろの男は彼女を突き飛ばし、走って逃げて行った
それと同時に、電車のキキーッとブレーキをかける音と共に、グシャリという音がした
メッシュのショートカットは、顔の左側が潰れて赤く染まり、右目が飛び出している
真っ白なワンピースは赤黒く染まり、今も染みが広がっている
左手の爪は割れ、左足は90度折れ曲がり、白い骨が飛び出している
右手は血に染まり、右足の茶色いサンダルは脱げてしまっていた
駅員が、急いで助け起こそうとしたとき、胴体が千切れ、上半身から内臓がこぼれ出し、下半身からは腸があふれでてくる
犯人はあっさり捕まったようだ
俺は彼女に語り掛ける
「あまり死体を見ないほうがいい。姿が引っ張られるぞ。」
彼女は、死体を見るのを止め、犯人のほうをにらみつける
「恨んでいるか?」
彼女はしばらく黙った後うなづいた
「仕返しをしたいか?」
彼女はまたしばらく黙った後、首を左右に振った
「死んでまで一緒に居たくないもの。」
彼女はそういうと、薄くなって消えた
俺はそんな彼女がうらやましかった
ぐしゃぐしゃの自分の腕を見て、自殺なんてするんじゃなかったなと