戦闘狂
(あれ……? どうなった?)
霞む視界に映るのは、LEDライトの眩い灯りと、黒く広がる夜空。二秒ほど経って、アサは自分が仰向けに倒れている事を自覚する。
(何されたっけ……。確か牛に近付いて、それから)
ああそうだ。と、アサは苛立ちを覚えながら思い出す。
頭突きだ。上体起こしのように、牛がその大きく堅牢な頭を思い切りぶつけて来たのだ。しかし、それだけでここまでぶっ飛ばされた訳ではない。怯み、バランスを崩し、不安定で無防備なアサに、あの牛は即座にあの巨大な剛拳を頭部に放ってきたのだ。
あの一瞬で、二撃。回避どころか防御も出来ないまま、モロに叩き込まれる始末。
(ヤバいな、吐きそう。ちょっと強いぞコイツ……)
意識はあるが身体に力が入らない。仰向けではあるが、背にある感触が地面かどうかも曖昧なほど、全身の感覚が麻痺している。
典型的な脳震盪の症状。まるで鉄骨で頭を打たれた気分だ。
(棍棒持ってる意味なくね?)
これほどまでに強力で強靭な肉体を持っていながら、更に武器を欲しがるなんて欲張りだなぁ、と思いながら、アサは視線を移す。
その先にはあまり望んで無い光景が待っていた。
器用にニヤリと笑いながら、棍棒を振り上げ大股でこちらに近付いてくる牛の姿。
『意識はあるようだな。俺の拳をまともに食らったにもかかわらず……良いぞ! 良い耐久性だ!』
『……お褒めに与り光栄でございますぅ。いや、褒めながら殺しにかかってくるんじゃないよ!』
一切の躊躇なく、倒れ込んだままのアサに牛は棍棒を振り下ろす。
咄嗟に身を捻り、その一撃は回避した。しかし、息つく暇もなく追撃が襲う。先程の叩きつけとは違い、地面を削るように迫る棍棒は、容赦無くアサを再び打ち上げる。
車に撥ねられた経験は無いが、多分こんな感じなのだろうと、意外にも冷静にアサは思った。
『ああ、やばい』
痛みやめまいに必死に抗い、アサは無理矢理着地する。その直後、跳躍し、5メートルほど進んだ場所に再度着地した。
『あっぶないな』
振り返ると、最初に着地した場所には既に牛がおり、棍棒を地面に叩きつけていた。アサが回避していた事に気付いた牛は、ニヤリと口元を歪ませてこちらを振り向く。
『本当に素晴らしいな。渾身の一撃で打ったのだが、まだ立てるとは……骨も内臓にも支障なしか』
『ふんっ! お生憎様、私達強いんだよ! 骨が5、6箇所粉砕骨折しようが、内臓にいくつも穴が開こうがへっちゃらなんだから!』
「だいぶ重傷じゃねぇか。おいウサギ、大口叩いといてなんでザマだよ、見てられないんだが」
いつの間にか隣に立っていた末広がジトリ見つめながら言う。
『うるさいな、じゃあアンタはアレに対応出来んの? デカいくせに速いんだよ?』
「お前みたいに動けと言われたら無理だな。つか、俺だったらそんなに動かん」
『……?』
「あの牛もお前も……おい、来てんぞ」
『なに、どういう──どぅわっ!』
アサと末広、二人の頭上に棍棒が振り下ろされる。間一髪で回避出来たが、体が重い、何度も続けられるか分からない。
『あのさバカじゃないの! 話の途中だったでしょうが!』
『貴様こそバカか! 俺との決闘中に余所見して会話など!』
荒々しく鼻を鳴らし、牛は両の棍棒を振り回す。
『貴様の頑丈さや俊敏さは認めるが、しかし、それだけだ! 一向に攻撃を仕掛けてこんのは一体どういう了見なのだ! 何をしても避けるばかりで反撃に来ない! こんな戦いがあるか!』
『うわっ! 言ってくれるよね! こっちだって予想外だったんだよ! そんな筋肉モリモリマッチョマンのくせに速いとかズルイでしょ!』
連続で襲い掛かる棍棒から、跳ね逃げ回りながらアサは考える。悔しいが、牛や末広の言う通り、大口を叩いた割には防戦一方、いや、正直普通に苦戦している。先手を取ったのに、初撃が不発に終わり、たった一回反撃されただけで、ここまで戦況が悪くなるとは思わなかった。
(反撃しないんじゃなくて、できないんだっつーの……でもほんとどうしよう)
ダメージの回復が間に合わない。よりによって砕けているのは肋骨、拳を叩き込もうとしても力が上手く入らない。
(まずい、詰みそう……なんとか状況打破したいな……多少無理してでも潜り込む? いやぁ、近付いた瞬間ミンチになる未来しか見えない)
『ええい! まだ逃げ回るか! 貴様ァ! 俺を失望させるなァァッ!』
激昂した牛が、更に速度を上げる。勢いを増す攻撃に、アサは軽く絶望した。
『ウッソ、まだ勢い上がんの!? ええい、一か八か!』
少しでいい、一瞬の隙をついて懐に潜り込めれば、たった一撃でも反撃できれば。そう思ったアサは、その隙に賭け、足を止めた。
『良い決断だ、真っ向勝負は好ましいぞ!』
迫る牛を睨み、荒れ狂う棍棒の僅かな隙間を探す。
そして、牛の両腕が大きく振り上げられた瞬間を見つけ、一気にアサは飛び込んだ。
飛び込んだと同時に、それが罠である事に気付き、戦慄する。
(これ……誘われたんじゃ……!)
牛が口元を歪ませている。既に振り上げられている棍棒。普通に考えればわかる事だ、振り上げられてから動くのは遅すぎる。
身長が倍近くある牛の顔面へ拳を届かせようと思えば、アサはここから更に加速して的確に的を絞る必要がある。対して牛は、重力に逆らわず棍棒を振り下ろすだけ、加速の必要がまるで無い。
冷静じゃなかった、状況に焦って攻撃を急ぎすぎた。
『未熟だな』
棍棒が振り下ろされる。流石にこれを二つ同時に叩きつけられれば、肉体の死は免れない。
分かってはいるが、既にアサも攻撃動作に入っている、今更止められない。
ああ、しくじった。
凄まじい後悔が一気に襲い掛かる。
『ぐうううううううっ!』
しかし、直後に苦しそうな呻き声をあげたのは、どういうわけか牛の方だった。
訳の分からないまま見上げると、アサの拳が牛の顎を打っている。
『は、え?』
困惑したままではあるが、そのまま顎部への打撃を連続して5回、計6回の強打を牛の顎へと叩き込んだ。
たまらず牛は大きく仰け反り、そのまま倒れてしまう。
さっきの事があるので、迂闊に近寄らず、アサは一旦距離を取る。状況も整理したかった。
『えーとえと? なんで私攻撃出来たんだ? 絶対そんな状況じゃ無かったのに』
「お前……ほんと見てられねぇ」
混乱するアサに、呆れ顔の末広が近付く。よく見ると、両手に持つ銃の先から煙が小さく上がっていた。
『えーと……助けてくれたわけ?』
不思議そうにするアサに、末広は顔を顰めながら言う。
「勘違いすんな。本当は両方とも消耗させてから、楽に狩ろうとしたんだよ。それなのにお前、さっきも言ったけど、大見得を切っといてなんだよあのザマ」
『なっ! 何回も言うな! ならアンタは私達より上手く戦えるわけ? 言っとくけど、あんなデカい棒でぶっ叩かれたら即死だからね? 私達だから耐えれてるだけで!』
「それもさっき言ったろうが。お前みたいには動けない、そもそもそんなに動かんって」
そう言いながら末広は、当たり前のように立ち上がる牛の前に立つ。
「始まったばっかりだが、選手交代だ。かかってこいや牛野郎」
ふん、と鼻を鳴らし、銃口を向ける末広を牛は不愉快そうに睨みつける。
『貴様……勝手に決闘に割り込んでおいて何を勝手な事を言っているんだ……そもそも俺とそのウサギの勝負がまだついておらんではないか』
「どう見てもお前の勝ちだろうよ、ってか、お前自分であのウサギに言ってたじゃねぇか、耐久性や俊敏さ、加えてパワーも申し分ないが……それだけだなって、とてもじゃないが通用しねぇよ」
俺達にはな、と言いながら、末広は引き金を引いた。
六回、大きな乾いた音が鳴り響く。両手に握る自動式拳銃から弾丸が放たれたのだろう、何も不思議な事じゃない。
しかし、アサは目の前の光景に驚愕した。
弾丸が放たれた直後、牛が慌ててそれらの攻撃を避けていたのだ。
『なに? なんで……私だってそうだけど、怪異に銃弾なんて効くわけないじゃん』
そもそもコンクリートブロックをも破壊できるほどの威力を持つアサの拳をモロに受けて立っているような馬鹿げた頑丈さを持つ化け物にとって、銃弾など小石をぶつけられているようなものだろう。
わざわざ避ける必要なんてない、そんな無駄な動きをするぐらいなら、受け切って叩き潰したら早いのに。
そんなアサの思惑とは反対に、牛は次々に放たれる弾丸を素早く躱している。
「確かに速いな、想定はしてたが、実際に避けられると普通に腹立つな」
『怪異狩りを生業とするだけある……中々に厄介な武器を持っているな……フフッ! フハハハハハハハハッ! いいぞ! 楽しみだ! その武器を持てるのが楽しみだぞ!』
不満げな態度から一転して、牛は満足そうに笑って言う。
「もう勝った気でいやがるよこの牛。やたら人の武器ばっかり欲しがりやがって、弁慶かお前は……そもそも何が目的なんだ」
『必要なのだ、来たる時に備えて』
「あん?」
ただの独り言感覚で呟いた事だったが、まさか答えが返ってくるとは思わなかった。牛は両手の巨大な棍棒にチラリと視線を移すと、残念そうに首を横に振る。
『コレも良い、良いが、決定打に欠ける。より強力な武器が必要なのだ……』
「その来たる時っていうのは? 具体的には」
『望まぬ支配だ、いつかは分からぬが……近いうちに確実に来る……貴様ら人間も備えるべきだとは思うがな』
望まぬ支配、その言葉を口にした途端、牛の表情から覇気が消えた。
「何のことなんだ、その支配ってのは、お前らにとってもヤバい事が起こるってのは分かったが、俺達人間にとってもってのはどういう事だ? どちら側でもない別勢力って事なのか」
『分からぬ、だからこそ備えるのだ』
「何で一番大事なところが分かんねぇんだよクソ!」
ため息を一つ吐いてから、末広は上着を広げる。そのうちポケットには予備の弾薬がぎっしり詰まっていた。
「分かんねぇならお前はもう用済みだ、ここからは遠慮なくいかせてもらうぜ」
目にも止まらない速度で銃に弾を込め、即座に牛へと発砲した。
『フンッ! 確かに厄介な武器であるが、当たらんと意味が無いぞ!』
言いながら、牛は再び素早い動きで弾丸を避ける。
はずだった。
『なにっ!?』
牛が避け、夜の闇へと消えるはずだった弾丸は、まるで意志を持っているかのように突如その軌道を変え、牛の顔面へと撃ち込まれた。
「言ったろ、遠慮はしねぇって……今更だが言っとくけどな、俺はさっきのウサギより確実に強いぞ」
『貴様……これはっ』
撃ち込まれた弾丸は、命中してなおその威力を失ってはいなかった。高速で回転し、牛の顔面を貫こうとしている。
「管理局開発の対怪異用特殊武器『タリスマン』。俺のはちょっと変わっててな、俺が器用ですげぇ奴だから扱える代物になってんだよ、こめる弾によって能力が変わる」
行くぜ、と、末広は再び弾を込め直し、即座に撃ち込んだ。
しかし、放たれた弾丸のうち、いくつかは牛の足元へと沈んでしまう。
『ぐっ……ぶっ』
残る弾丸を躱そうと、頭部の攻撃も処理しきれないまま、牛は体を動かした。そして、それがまずかった。
『ぐぬぅうううううううっ!?!?!?』
足を踏み出した瞬間、強烈な閃光と共に、牛の体が痙攣し、その場から動けなくなっていた。
「特殊弾の『放電弾』とさっきからお前を苦しめてるのは『貫通弾』。どっちも命中したなら、もうお前に勝ち目はねぇよ」
トドメだ、と、末広は再度弾を変える。そして今度は慎重に狙って、引き金を引いた。
『ぎぎぎぎざばああああっ!』
動けない牛は、放たれた弾丸を受けるしか無い。末広の弾丸は、何と貫通弾によって空けられている穴に吸い込まれるように命中した。
「何の思惑があったか知らねぇけどよ、罪の無い人間を無惨にも殺した罰だ、俺と戦った事を後悔して……爆散しやがれ!」
『なん……ばっ!』
牛の顔面が、まるで沸騰しているかのように、ゴボゴボと膨れ上がる。それは全身に広がり、至る場所から血液が噴き出し始め、そして、
『ぐぎゃあああっ!』
血肉をばら撒き勢いよく破裂した。
「こんなもんか……弾、そんなに使わなくてよかったかもな」
末広は、銃を構えながら、破裂した牛の残骸へと近づいて行く。辺りに散らばる肉片や内臓、血液はまるで蒸発するように消えていく。しかし、その中に残る、一際大きな肉片だけは様子が違った。
ボロボロと溶けた粘土のように崩れ落ち、中から何かがゴシャッという嫌な音を立てて現れた。
それは、至る所が欠損し、半分腐ったようにふやけてしまっていて、一目では分からなかったが、恐らくは人間の死体だった。
「……取られちまってた犠牲者か……苦しかったろうな……アンタが家族の元へ帰れて、安らかに眠れるように尽力する」
末広は亡骸の前で目を瞑り、手を合わせ、黙祷を捧げる。そして、アサを睨みつけた。
『へぇ、やるじゃん……前も別のタイプを見たけど、アレとは段違いな威力だ……でもなんか』
「感心してる場合か? 今度はそれがお前に向けられるんだぞ」
そう言って、末広はアサに銃口を向ける。
『だから私達は敵じゃないってのバカ! ってか、よくもそいつ殺したな! まだ聞きたい事あったのに!』
「そいつは悪い事をしたな、安心しろよ、お前も爆散すれば気になってた事も気にしなくて済むだろうよ」
『お話が通じない! ねぇ、えっと……すえ……末堂さん? だっけ?』
「末広だよ、誰が大人気格闘漫画に出てくる空手道場の指導員だよ、あの人と違って俺今日死ぬわけにはいかねぇの……だから容赦しねぇぞ」
『末広さんよ、おかしいと思わん?』
「あん? 何がだよ」
アサは撃ち込まれないようになるべく間を開けずに話す。
『あの牛、妙にあっけなかったと思うんだけど』
「テメェバカにしてんのか、俺が強かったからに決まってんだろ」
『いやそれは分かる、認める、アンタは予想以上に強かった、それは認めるよ……でもさ、なんか引っ掛かる』
「だから何が」
『考えてもみなよ、明らかにダメージの通り方が不自然だったよ、自慢じゃないけど、アンタの弾丸より私達のパンチの方が絶対威力は上なはずだよ! なのに』
「そりゃ俺たちの使ってる武器の性能だ。特殊な素材が使われててな、怪異には効果抜群なんだよ」
『それなら私達もそうだ、怪異にダメージを与える一番良い方法は怪異が攻撃する事だもの。大人気ゲームの一部のタイプ相性みたいに、ゴーストにはゴースト、ドラゴンにはドラゴン的な感じで、怪異には怪異を、なんだ。だから私達の攻撃だって通るはずなんだよ』
「……だが、実際にアイツは消滅した、使ってた体もこの通り解放されてるだろうが」
『それはそうだけど、何かふしぜ』
「きゃああっ!」
二人の会話を、そんな悲鳴が掻き消した。
振り向くと、一人の少女がアサの後方にいる。
「あん? あれ? 大橋ちゃん?」
『は? なんであの子ここに……?』
そこにいたのは、アサを見て怯えた表情を浮かべる大橋静だった。
「ば、化け物……それに……末広さん」
「大丈夫だ大橋ちゃん! 君の言ってた牛の化け物は倒した! 後はこのウサギの化け物だけだ! 危険だから離れててくれ! というかこんなとこに来ちゃダメだよ!」
「……! 末広さん! 危ないっ!」
「え? ──ぐっ!」
大橋の悲鳴と共に、末広は橋の向こう、川へ向かって投げ飛ばされた。
誰に? そんな事を考えるより先に、アサは跳躍し、末広を道路へと引き戻した。とりあえず呼吸はしているが、意識が朦朧としているうえに吐血までしている。殴り飛ばされたのだ、内臓を傷付けたのかもしれない。
『なにっ!? 誰が何してどうなったのさ!』
アサが振り返るが、そこには誰もいない。巨大なネズミも大きな牛も、死体さえも転がっていない。
「きゃああああああああああああああっ!」
再び上げられた悲鳴の方へ振り向くと、そこには大橋静と、彼女に絡みつく棍棒を握った死体の姿があった。
『その……おとこの……ぶき、き、にいった、ぞ……ふはは……しかし……からだが……もたん……やはり……おまえの……もってる……それがいい』
『お前ふざけんなよ! どんだけ戦いたいんだこの戦闘狂!』
いやそれよりも、アサは大橋に絡みつく死体を見て戦慄する。
棍棒を握る手は、同時に末広の拳銃も持っていたのだ。千切れそうな指を器用に引き金に引っ掛けて、プラプラさせている。
そこで、アサは今更ながら違和感の正体に気付く。
あれほど巨大で頑丈な棍棒を、牛は一度も防御手段として使っていない。
いや、それよりももっと前、末広の初撃を受けた時、弾が棍棒に当たった牛は、何故か呻き声を上げていた。
『気付くの遅いわ私のバカ!』
姿に騙されて完全に見落としていた。人は見かけだけで判断してはならない。
牛の本体、否、怪異の正体は、あの棍棒そのものだったのだ。
正確には、棍棒に取り憑いていたのだろう。それが奴の能力なのかもしれない。それなら武器を欲しがる理由も分かる。奴の能力が、そのスペックが取り憑いた武器に依存するのだとしたら。
『アイツも……能力が変化する……!』
嫌な汗が頬を伝う。そんなアサを嘲笑うように、牛だった怪異は大橋を取り込んでいく。
『ひとまず、あたらしい、からだが、ひつよう、だ。さぁ、もう一度、存分に戦おうぞ、戦士ども!』
「やだ……だれか……たすけ」
大橋の体が完全に赤黒い煙のようなものに飲み込まれ。そして、怪異が再びその姿を現した。
牛のような角は生えているが、今度はかなり小柄で、かなり人型に近付いていた。見た目の印象は、悪魔だろうか。いやそれよりも、何より違うのは、棍棒を持っていない。代わりに、拳銃を両手に握っている。
『女体には慣れておらんが、問題なかろう、今までのデカブツと違って、今はこのような小さな筒から玉を発射すれば良いのだからな』
大橋の姿でニヤリと笑いながら、敵が言う。
『最悪だよ……どうすればいいのコレ』
最悪の第二ラウンドが始まろうとしていた。