噛んだレモンのソルフェージュ
ブラウン管灯るホウセンカ
見守る子犬はまだ暗い
白線の中は安全区
妖精の国の叫びが聞こえた
ガラスに空白を映写する
あるいは忘れられた秘密
巨人は道中迷子になった
雷は隣の家に落ちた
第五人格が切ったエース
揃えて貼ってスローダウン
第二人格が釣ったアミア
木星超えてタイムアウト
不対五芒星と
アッシュマリーンと
抗白熱層と
全ヒエロニムスと
ジュークボックス鳴りやんだ
ガラスの向こうは不完全
消えゆく微熱と嘘と電磁波
噛んだレモンのソルフェージュ
オゾン層突っ切って
秋のセミは静か
アンドロイド匿って
揺れる水滴は強か
脚を澄み
ウツボカズラ
甲の誉れ
腐乱したバショウ
罪は巻き戻りミツバチとして
凍結した朝を静かに迎え
墜落音の幻聴を合成した
庭の隅には一息の花
バドミントンした
トットテルリ去った
救急車濡れた
ハクビシン振り返った
鍵っ子が駆け抜ける
五線譜が崩壊する
スズメの微睡み、到達不可能点
マンドラゴラの嘲笑に捧ぐ
紙コップ潰れ
成層圏が収縮する
十円玉歪み
創造と驟雨の特異点
スマートフォンと枯草菌
考古学者とジストロフィー
盲目のウサギは海を嫌った
明日は透明な雪が降る
不意に過ぎ去った構造体
0ミリの隙間にカラスウリ
上昇する微笑が凍ってゆく
別れは太陽の裏に張り付いていた
最終列車が増殖する
幽霊は祝福の小石を投げた
地面には花柄のビジネス手帳
めくれたページには少しの友愛