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「司郎くん……」
小学生の時からの癖で、僕が牛乳パックを丁寧に折り畳んでいると、不意にお声がかかった。ちなみに声音は女子。
「お昼食べちゃったかな?」
「食べちゃったね。ほら……」
僕は中身の無くなったパンの袋を見せる。
「せっかくお弁当……つくって来たのにぃ……」
とても悲しげだ。でも食ってしまったものは仕方がない。つか、知ってた。今日も来るだろうって。
彼女は朝比奈 萌。
何故か僕を好きになった、稀有な女子だ。
二週間前位に告白されて、それから猛アタックされてる。意味がわからん。
「ナキリならまだ食えるんじゃね?」
「司郎くんにつくってきたの!」
うーん……。
僕は彼女の事をよく知らない。何かどっかで見た気もするけど、隣のクラスなんだし、見ていてもおかしくはないだろう。
見た目も可愛くて、手作り弁当を作って来れる位には料理も出来て、何かあなたに尽くしたいオーラをまとってる。
でも、振った。
「ヒフミ、そう邪険にするな。せっかく作って来てくれたんだ。持って帰って夕飯にでもすればいい」
「お前ってそう言うフォローはするよね」
とは言え、思春期男子としてはどう接して良いものやら。
その、なんだ、彼女とかテレるじゃん?