忸怩2
「常滑紫空.....か。ところでその名前いつどこで知ったの?確か君はネットやテレビをあまり見ないはずだからその手の情報には疎いと思っていたのだけれど」
「僕の唯一の友達に教えて貰ったんですよ。電話だったのでどんな顔をしている人が行方不明になったのかはわからないですけど、物騒ですよね」
「あぁ、そうだな。これはもし、の話だけれど、もし家出だったとしたら帯正くんはどう思う?」
「家出だったとしたら....帰らせるように言うと思う。どうやって今過ごしてるのかはわからないけど、家ってすごい居心地がいいし、少女なんだから家にいた方がいいよって優しく伝えると思います。」
そういえば、
「咲姫さんの家庭環境ってどうだったの?もちろん家が昔はあったんだよね?」
「私の家庭環境か....そうだな、あまりいいとは言えなかったよ。それはもう家出したいと思うほどにね。でもまぁ、昔はそんな時代じゃなかったからできなかったけどね。あぁ、私が不老だからといっても別に親がなにかの能力を持っていたというわけじゃないよ」
自殺をしたいと思うような人間の家庭環境がよかったはずはないのだからこの質問は些か野暮だったかもしれない。
「いやいや、大丈夫だよ。なんてことは無いさ。でも、そっか。やはり家に帰った方がいいと諭すんだね」
「そうしますね。家って言うのは居心地がいいから。多分親と少しの諍いで家出するんだと思うけど、家に帰ってみると意外と温かくていい場所だって再確認できるんじゃないかって思うので」
「そっか。そんなものなのかもしれないね。あ、私は今家出しているわけじゃないからわからないけれどね。そもそも家がないわけだし」
それは確かに。
「それにしてもきみの友だちなかなか鋭いね、ちょっと興味があるよ」
「鋭い?確かに聡いとは思うけど、どういうこと?」
「いや、わからないならいいんだよ。多分明日になったらわかる事だし」
なぜこう女子は隠し事をするのだろうか。もしかして女子の特性なのか?
いやまぁいいんだけど。
このあと僕達はたわいもない会話をして一日を終えた訳だが、咲姫さんの顔はこの話をしたあとどこか曇りがあるように感じていた。まるで、何かを決心して不安でいっぱいであるかのような、そんな物憂げな顔をしていた。僕はこの時に一声をかけてあげられていれば、きっともっと事情は簡単に収束したのかもしれない。