忸怩1
「おぉ帰ってきたんだね。おかえり。よく学校を頑張れたものだよ」
「いえいえ、友達いないので。そこまで褒めていただけるほど、頑張ってないよ」
「おっ、少しだけ敬語が直ってきたね。喜ばしい限りだ」
僕は何度も語るとおり友達がいないので、学校の間何度も敬語をなるべく使わないようにと練習をしていたのだった。それに、よくよく考えてみればこれから長い時間過ごすわけで、それなのにずっと敬語というのもなかなか肩苦しいだろう。
ところで、一体いつまで僕は咲姫さんと一緒住むことになるのだろうか。まさか死ぬまで一緒に住むのだろうか?
あまり未来を打算して家に泊めた訳ではなかったからあまり考えもしなかったが、そうか、そのことも考えなければならないのかもしれない。
「今日は学校でなにか楽しいことがあったかい?例えば、ホルマリン漬けにされたとか」
いやそれ死んでない!?
「ごめんごめん、いかにも死んだような顔をしていたものだからね」
それは認めるけれども。
「死体が動いてるだなんて現実世界なんだからあるわけないだろ。大丈夫僕はいつも通り何も無い日常を平然と超然と過ごしてきただけだよ」
「不老って言うのもなかなか現実世界にはなさそうなものだけど?」
そ、それは確かに....
「まぁでも、それもそうか。帯正くんのやりそうなことだね。この何をしても犯罪に問われない可愛くて美少女で不老の私を目の前に何もしないのだから、きっと何もすることがないんだろうとは思っていたよ」
「やけに自分を評価するんだな。まぁ、確かに可愛いということは否定しないけれど、可愛くても何かしようとしたりはしないよ。僕はそこまで凋落してない」
「なるほどね、つまり私は可愛いけど、君を陥れるほどの可愛さはない、と言いたいんだな。もしかすると、帯正くんの言う可愛いは、『うーん可愛くないけれど、まぁ可愛いって適当に述べておけば株は上がるし、女子ってとりあえず可愛いって言っておけば満足するのだからここはひとつ可愛いということで手打ちにしようか』という含意があるのかな?」
変なところだけ卑屈だな。
「まぁ伊達にいい人生送って来てないからね。そりゃエフェカシーも自尊心も自己肯定感もなくなってしまうってものさ」
なるほど。これが何百年の重みなのか。
うん、そういうことにしておこう。
「そうだ、ところで咲姫さんに話したいことがあったんだよ」
「ほう、それは吉報だといいのだけれど」
「実は、ここ最近行方不明の少女が出たらしくて、といっても家出かもしれませんし、誘拐かもしれないんだけど誘拐の可能性も鑑みれるから気をつけて欲しいなと思って」
「....そう、なんだ。ところで、その少女の名前は知ってるかい?」
名前を聞く理由が僕にはよくわからなかったけれどとりあえず教えることにした。