無限書架
ボルヘス氏の手記によると、そこにある書籍のすべてがサイズも文字数も同じだということです。
映像化すると、味気ないかな?
無限図書館には、無限に書架が並んでいます。
無限の書架には、今までに書かれたすべての書物が収められています。それらは無限に相応しい数を誇ります。
勿論、その冊数は誰も数えたこともなければ、数えようとしたこともありません。
ひとが書物という形でさまざまな事象を、光景を、時間を、情愛を記録するようになってから、ほんのわずかな期間ですのに。
書物の増えるのはあっという間です。
書架に一冊。置かれた次の瞬間には一段埋まり、瞬きする間もなくすべての棚に収められます。
無限に増えているのは、書籍なのか、書架なのか、それともこの図書館なのか。
誰にも知り得るものではありません。でも誰も気にも留めません。気に病んだところで何の意味もないのです。
肝心なのは、これらの書物から何を得るのか、ただそれだけなのですから。
それはあなたもご存じでしょう。
一枚の粘土板、一片の草紙、一葉の羊皮紙。一巻の巻物、一冊の冊子本、一枚の金属盤。
あなたに馴染み深い形状がどんなものであろうとも。
その内に蓄えられたものこそが、無限そのものだということを。
マイクロチップとかメモリーとか、小さくまとめた媒体で、御大の生存時にはまだ一般的でない大容量のものであれば、理論上ありですか。
むしろ現代なら、クラウドの海にという、わりとメジャーな感覚な気もしてきた。