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その一言を言うために  作者: 白雲 θ
エピローグ
3/3

BADEND




家の電話がなっていた。


随分と眠ってしまっていたようで、日は落ちてしまっていた。


体が怠い。そして重い。

風邪でも引いてしまったのだろうか。

真っ直ぐに歩けず、リビングに行くのに時間がかかってしまった。

リビングにつく頃には音は止んでいた。


どうやら電話は、タイミング良く仕事から帰ってきた母が出ていたらしい。

仕事関連の電話なのか、肩苦しい言葉遣いをしていた。

一応、おかえりと声をかける。

勿論、電話中なので返事は帰ってこない。


たっている気力がなかったため、適当な場所に座り込む。


眠気が襲ってくる。

本格的な風邪だろうか。

そうして眠りに身を任せ、私の意識は消えていった。


視界の隅でおじいさんのときにみた、母のあの表情を見た気がした。








*****





目が覚めると、どこか見覚えのある部屋だった。


周りを見渡すと妹が寝転んでいた。

体を丸め、こちらには顔が見えない。

泣き疲れて眠っている時の様子だ。


何か嫌なことでもあったのだろうか。


そう考えていると、ここがどこだか思い出した。

そうか、ここは葬式の時にきた小部屋か。


ここに来たのは2回だけだが、何故だか覚えていた。


誰かまた死んだのだろうか。

行方不明になっている親戚や厄介事の種だったりと、色々な人がいるが、妹が泣くくらいだ。身近な人が死んだのだろう。

身近な親戚は限られている。

両親の可能性は低いだろう。

何故ならば、あの二人はこっちが胸焼けを起こすほどにラブラブで、父が死ねば母が自殺する勢いだ。反対の場合は分からないが。

電話をうけていた母の反応をみるに父ではないだろう。


ほっとする。



きっと、眠っていて起きない私を引きずってきてくれたのだろう。ありがたい。

まだ本調子ではないが、頑張れば真っ直ぐに歩けるぐらいには回復している。


両親が来るまで待っているとしよう。

妹がねむっているのだから今度は自分が起きていなくては。

そう思い意識を保っていたものの、私は待たしても眠ってしまっていた。







次に目が覚めると、葬式の真っ只中だった。


流石に寝ながら死者を送るなんて失礼な真似はできない。

そう思い体を起こそうとした。

体が先程よりも重く、動きずらくなっていた。


家族は見当たらなかった。

と思えば、どうやらこことは離れた席にいたらしい。

そこからは遺影が良く見えていて、誰が死んだのかハッキリ分かりそうだった。


1歩、踏み出す。

体はまた重みを増した。


1歩、踏み出す。

体が動きずらい。


やっとのことで家族のところへつき椅子に座ろうとした。

椅子は見当たらず、自分の意識はまた。



消えていってしまった。







チラリと見えた遺影には、見慣れたら顔が写っていた。





*****



体が動かず。

首も動かず。

真っ暗な暗闇の中にいた。


何かに縛られているわけでも、無さそうだ。


体が全くと言っていいほど動かない。




しばらくして、光が差し込んだ。


光が眩しく、覗き込んでくる影の正体が分からなかった。

だが、次の瞬間には分かった。


母の手だ。

母の手が私の頬を優しく撫でた。


母は昔、よくこうして熱に魘された私を心配してくれていた。


顔が見えない。


何故私の頬を撫でるのか。

私は、風邪をこじらせたのだろうか。

だが風邪にしては体は重いしなんだか眠いし、動こうとする気力すらなくなってしまっている。

インフルエンザだったりしたならば、母が頬を撫でてくれるのには納得がいく。


母はこれまで1度もインフルエンザにかかったことがなく、家族の誰かがインフルエンザになったら母がつきっきりで看病をしてくれていた。


しかしインフルエンザにしても風邪にしても、最近は縁がなかったものだからすっかり耐性が無くなっていたのかもしれない。



だからこんなにも症状が酷いのだろう。


きっとここは病院やらそれ関係のもので、私は度々起きては夢を見ての繰り返しだったのだろう。


ならば早く寝なければ、


早く治して、




また『わたし、こんな長い前置きは飽き飽きしたの』





「え?」





体の重みが消える。


周りの音が消える。


自分の鼓動すら聞気取れなくなる。


さっきまで横になっていた筈なのに、

さっきまで動けなかかった筈なのに、


どうして私は立っているんだ?




黒い服を着た親戚達はこちら側を向いている。

探せば父と妹もいた。

母は私の目の前で膝をつき何かの頬をなでている。


『あら、貴方まだ勘違いしてるの?』


勘違い?

何を?


『ずっと見ていたけれど、ここまで引きずるのも珍しいわね』


見ていた?

自分を?

この声はどこから聞こえるんだ

だれが話している


『貴方も薄々気づいてるんでしょ?』


何をだ。

自分は何も気づいていない。

わからないから困惑している。

声が出ない。

みんなも動かない、喋らない、反応しない。

こんなのは可笑しい、ふざけてる。


『後ろを向けば全てが分かるわ』


私はその声を聞き、後ろを向く。



そこには沢山の花の中で卑しく笑う悪魔と、見慣れた自分の顔で出来た。自分の遺影があった。





『残念だけど、貴方は死んでしまったの。けれど安心して』



悪魔がこちらに目を向ける。

蛇に睨まれたように動けない。

動かない。

悪魔は嗤う。



『転生させてあげる』



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