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その一言を言うために  作者: 白雲 θ
エピローグ
1/3

小話


良い人生だった。


そう言って頭を撫でてくれたおじいさんは、その後すぐに死んでしまった。


おじいさんとはよく話したりはしなかった。

特に懐いていたわけでもなく。

特段、嫌っていたわけでもない。


好きか嫌いか。YESかNOか。

聞かれれば好きと答えるくらいだ。


葬儀は直ぐに行われた。

黒い服を着せられ。

小部屋に連れていかれ、待っているようにと言われ待ち続けた。



幼かった私には全ての事がふわふわとした現実でしかなかった。


おじいさんが死んでしまったことも。

両親がいつもとは違う表情をして、涙を流していたことも。



葬儀が始まり、集まった親戚の人達と共に花を添える。


おじいさんは棺の中で眠っていて。


死んでいるようには見えなかった。


棺を見送り、

竈のようなところでおじいさんを焼いていた。


私は何をしているのか母に尋ねた。

母は涙を堪えているだけで、何もいわなかった。

私は何だか怖くなり母に顔をむけ、おじいさんから目をそらした。


すると母は、

「見ておきなさい。


見続けるのよ。見届けるの。」

といって私の顔をおじいさんに向けさせる。


体が動かなくなった。

目を瞑ることも。


私には、あの時間が永遠に思えた。



遺影に写ったおじいさんは笑っていて。



私はーーー











Prrr…と、アラームが鳴る。

朝、起きるために設定しておいたものだ。


パチりと目が覚めた。

そこは見慣れたベッドの上で。

私はそこから出ると、リビングへ向かった。


あともう少しで両親が起きてくる。

朝必ずといっていいほど、暖かいコーヒーを飲む両親のためにお湯を沸かし、学校がある自分と妹の朝ご飯を作る。

床は冷えきっていて冷たいが、料理をすると手だけは暖かくなるので台所から離れない。

両親が起きてくると頭をわしゃわしゃと撫でられる。

次に妹が起きると、朝ごはんを準備している私をみると絞ったような声で、

「ぉはよ…」

と言ってくる。

私はおはようと返すと妹と朝ごはんを食べ、学校の支度をして学校へ行く。


いつものように










「なんて、退屈な人生なのかしら」

そういって、悪魔が笑った。



*****





いつもどおりだった。






いつもどおり学校へ行き。

友達と話したり授業を受けたり。


昼ごはんを食べながら幼い時の事を思い出したり。


普通だった。




なのに。




何故。





なぜこんなにもやるせない。



そういって焦燥感に駈られる私は。







心のどこかで、あのおじいさんの事を思い出していた。

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