表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

マフィアたち

 理容師は喫茶店のドアをくぐり、息子の姿を発見した。相変わらず仕事をせず、店主と話ばかりしている。

「ドッド」

 父親は、語気を強めて息子の名前を呼んだ。ドッドは、能天気な顔で振り向いた。

「また店の中で死体が出たの?」

「なぜ分かった」

「父さんが俺に話しかけてくるのって、その時だけだから」

 理容師は胸中に、乾いた風が吹くのを感じた。大人になっても親の家から離れない、と冷たく扱ったことを後悔したが、謝るのもバツが悪く、話を続けた。

「“ビッグフット”が殺された。よりによって私の店で」

「そういうことは警察に話してよ」

「また私の店で殺しがあったとバレると、“人食い理容室”から“殺人理容室”にあだ名が変わりかねん」

 どっちも変わらない。ドッドとジュリアは思ったが、今更理容師の几帳面さをあげつらってもしょうがない。

「警察の検分前に現場をいじるのは犯罪だよ」

「なに、死体の位置を“店の中”から“店の前”に変えるだけだ。瀕死のマフィアのボスが最後に向かったのは、頼れる元幹部の店だった、という筋書きでな」

 親父もジョークが上手くなったな。ドッドは内心で苦笑した。店内の痕跡を抹消し、死体を移動させるのは、彼にとって難しいことではないが、警察は確実に疑う。

 検分を行えば、死体がいきなり理容室の前にワープしたように見えるだろう。

「素直に警察に話した方が良いわよ。進んで悪いことないわ。

 あなたの店に死体が増えたところで、みんな慣れたようなものよ」

「客足が遠のくかもしれないだろう」

「事件が起こる前から大して繁盛してなかったでしょ」

 辛辣なジュリアの言葉に、理容師は黙り込んでしまった。その隙にドッドは喫茶店の受話器に手を伸ばしたが、配線が切断されていることに気づいた。

「これが本当のワイヤレス…」

「え? 何か…ってウチの電話が!」

 ジュリアは悲鳴を上げた。ドッドは間髪入れずに父親を殴った。

「…父親を突然殴るなんて、ひどいじゃないか」

「家族の俺はともかく、ジュリアに迷惑かけるな」

「私だって自分の店を守るために必死なんだ」

 息子と父が睨みあっていると、喫茶店のドアが乱暴に開かれた。くすんだ金髪の、小柄だが恐ろしい顔つきの若者が立っていた。

「理容師、店を放って何してる?」

 彼はコルテスの忠実な部下だった。

「あんたんとこのボスが貸し切ってる。正直迷惑だ」

 相手が事情を知っているのを分かった上で、理容師は答えた。マフィアは少し黙った後、尋ねた。

「アンタがやったのか?」

「私なら少なくとも店の外でやるよ、リヴォルバー」

 名前を呼ばれたマフィアは薄く微笑んだ。

「だろうな…犯人の顔を見たか?」

「一瞬のことだったからな、顔は見ていない」

 マフィアの男は携帯を取り出し、仲間に連絡した。外では、他のマフィア達が血眼になって犯人を探している。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ