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第5話
『仕事とか接待とかで帰りが遅くなるとさ、「男は仕事だけやってれば許されるんだからいいわね」って、冷たい顔をされるんだ。』
ケンジは遠い目をして続ける。
『子育てってさ、かけがえのない幸せである反面、ものすごくエネルギーを費やす。嫁がさ、家事と育児で家庭を切り盛りして大変なのはよくわかる。感謝こそすれ、非難なんかするつもりはないよ。でもさ、俺だってクタクタになりながら仕事してきて、家族のために嫌なことがあっても耐えて。それなのにそんな冷たい態度が続けば、俺もちょっとキツいよな。なんのために頑張ってんのかなって。』
ケンジがビールを流し込む。
『うーん。難しいですね。。。』
ジュンペイが唸る。
『なーんて本当に贅沢な悩みだよな。わかってるんだ。理屈じゃなくて、頑張るしかないって。』
いつもの笑顔のケンジに戻った。
『まだ8時だな。よーし、』
『じゃあパァーッと行きましょうか。最近いいキャバクラ見つけたんですよ。ナオミちゃんって可愛い子が、』
『ばーか。俺は妻子のいる我が家に帰るよ。ジュンペイもいいかげん落ち着けよ。』
ジュンペイの優しさを感じながら、早めに帰路につくケンジだった。




