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第30話
ケイコとケンジのメールのやり取りは、数日間続いた。
「お祝いしたいんで」
と誘うケンジ。嫌がられない程度の強引さ。
「気持ちだけで充分ですよ」
とはぐらかすケイコ。メールのやり取り自体、ケイコにとっては久しぶり。多忙な生活の中の、ささやかな至福の時間になりつつある。やはり、いけない相手だと頭ではわかっていても、自分に好意を持ってくれていることは素直に嬉しい。
ケンジにとっても、久しぶりのメールのやり取り。年度末にさしかかり多忙を極める日常。家族には見せられない弱さやストレスがたまる日々。ケンジも、心のバランスを保つために、何かを必要としていた。心のすき間を埋めてくれる女性の存在。それが、ケイコだった。
結婚して、消えていた男としてのギラギラした部分に、火がつきかけてしまっていた。
そして、ケイコの誕生日から2週間後、二人は飲みに行く約束を交わしていた。




