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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

魔王

作者: 霧峰 奏音


―――――――

何故私は此処にいるのか

思考を逡巡してみる

周りはすべて剣と剣のぶつかり合いの音、または殺し、殺される血の匂い。また、これが死と言う名の匂いと言えるだろう

私は一体誰なのか

私は何者なのか

そんな幼稚な思いを馳せる

「ふっ」

笑いを浮かべ、そんな思考を消し去る

誰か私を殺してくれるのだろうか

そもそも私は、私には人と同じ赤い血液が流れているのだろうか

やはり幼稚な考えを、自問自答を繰り返す

そして私はこのトランシルバニアの王だと言う事を思い起こす

「踊れ!」

私は叫ぶ

「命乞いする者も、武器を持って戦う者も、我がトランシルバニアに一度でも進行を進めて来たものは皆!殺せ!」

「命乞いしたものは皆生きたまま串刺しにして壁を築け!」

「奴隷兵には生きたまま臓物を引きずりだせ!」

「剣を持って戦う意思のある者は、己以外の首を刎ねろ!」

「逃げる者は銀の槍でまとめて貫き殺せ!」

 相手は5万騎、こちらは2万騎

数には圧倒的不利、だが私は、俺は一人で丘の上に立っている

要は誘い込めばいいのだ

そして怖気づく。『自らがその壁になるのを』

そして自分がいかに愚かだったかを痛感する

そして後悔と共に死ぬ

「死と踊れ!」

「自らの生など下らぬ!」

「死が生きとし生けるものの運命なのだ!」

敵軍のほとんどはもう死んだか蜘蛛の子を散らす様に逃げていく

「ならば生はなんなのか」

私は一人。物思いに耽る

「なれば生は生きる者への手向けならんと」

 一人、左肩に矢傷を負いながらこちらに走ってくる

「この人喰いの悪魔め!」

私は振り向いて話す

「ほう?なれば小僧、貴様が我を殺すとでも、のたまうか?」

「黙れ!!ブラドの生まれ変わりがっ!」

一つここで稚戯を思いつく

「我はブラドの息子なりと言えば解るか?小僧」

「なんだとっ!?」

名も知らぬ小僧が一喜一憂するのが楽しくて堪らない

誰にも語らなかった自分の出生を解き明かす

「私がブラド・ツェペリとヴァン・ヘルシングの息子だと言えば信じるか?」

小僧は絶句するがなおも食い下がる

「ありえない!ブラドと言えば悪の象徴、ヘルシングはその串刺し公を殺した、たった一人の英雄!しかも伝説によれば両方とも男!仮にそのどちらかが女だとしても貴様みたいな下劣な化け物を後世に残すはずがないっ!」

「そうだ。確かに伝説では、両方男。だが」

私は本当に愉快になる

「私の名はブラド・ナームルス・ヘルシング。これも正式名ではないがな」

「だが、真実とは常に淘汰されるもの。それが因果して我は生まれた」

「真実として言うなら。ヴァン・ヘルシングは女だったのだよ」

小僧が驚く

「…ッ!」

「ならば小僧、証明してみるか?」

もう、自分が狂った様に愉快だ

「我を、討ってみよ」

小僧は火が付いた様に剣を縦に振る

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

もう右肩の矢傷はどうでもいいようだ

私には止まって見えるが右手に避ける

ドシュッっと音がたち

ブシャーッと血が噴出する

ようやく私は、私の中に人間と同じ血が流れているんだと確信する

ボトリと左腕が鎧ごと落ちる

小僧はもう剣を振り切っていた

「見事。だが私は死なない」

「はぁ。はぁ。はぁ」

小僧は目を見開く

「なにっ!?」

切られた腕の血管が蟲の様に蠢き、切られた筈の左腕と結合する

「そんな………」

小僧はヘナヘナと崩れ落ちる

続けて私は言う

「しかし………」

我は不死の身体、その腕を容易く切り落としたか

「貴様は見所があると言えよう。小僧」

「なんだとっ?!」

「私の護衛を務めてみないか?」

小僧は吐き捨てる様に話す

「そう言いながら後ろから殺すんだろ。殺せ」

「良い、実に。良い」

私はその小僧に賛美を送りたい

「ククッ、フハハ、ハーッハッハッハッハ!」

「!?」

私は楽しくてしょうがない

初めて人間に自分の腕をわざと切り落とさせたのに関わらず、小僧は自ら死を選ぶと言っている

これを笑わないで何時笑う?

「お前は選ばれたのだ。この、吐き気までも誘いそうな神か、または悪魔に」

小僧は言う

「悪魔のお前でも神や悪魔を信じていると言うのか?」

答える様に私は小僧の髪の毛を鷲掴みにし、目を合わせる、綺麗なコバルトブルーの眼だ

「確かに私は死なない悪魔の様な男だ、しかし悪魔と呼ばれた男が神や悪魔に運命を握られている……そんな皮肉みたいな事もあって良いだろう?」

「そうだな、ひと思いに殺めてやっても良いんだが、小僧、まだ死にたくは無いだろう?」

小僧は少し考え……

「わかった、戻ってもどうせ首を刎ねられるだけだし、いいぜ。あんたの護衛になってやる」

利口な判断だと思う

「なれば、首筋に牙を立てさせてもらうぞ?」

「死ぬよりマシだ」

「良い、返事だ」

ガブッっと小僧の首筋に牙をかける

そして1リットル程血液を飲む

「旨い!全身の筋が目覚める様だ!!」

小僧は失血の具合で気を失った様だ

「これでお前は初めての私の眷属となったのだ」



――――――――――――――


数時間後



――――――――――――――

―――――――――

――――――

―――

――


「ハッ!?」

「小僧、目が覚めたか?」

薄暗いカーテンを閉め切っているので小僧には私の姿が突然現れた様に見えるだろう

「ッ!?」

咄嗟の事だから身構えるのも無理はない

「俺は一体何日寝ていた?」

普通に答える

「1週間と3日だ」

「そんなに寝ていたのか…」

「いや」

私は柔らかく否定する

「私に1リットル強も飲ませてしまって約10日で目が覚めるとは思っていなかった」

「私としても初めての事、故に一体どれだけの血を飲み、どれだけで吸血鬼化するのかは余り知らんのだが」

「私の父、ブラドは100cc飲めば良いと言っていた。人は普通に死ぬらしいが」

小僧は返す

「飲み過ぎなんじゃないのか?俺の血を」

「クラクラするぞ……」

「しかし。やはり、貴様は素質があった筈だ」

小僧は部屋を見渡す

「大きい城だな」

「うむ、歩兵や将校クラス以下ならここに入っただけで死刑だ」

「なっ!?」

「まぁ驚くな。もうお前は私の半身だ。十分な対応をさせる」

「なら、俺を『小僧』じゃなく名前で呼んでくれ」

「フム、小僧、貴様の名は?」

「エレイ。エレイ・ヴァンガードだ」

「ヴァンガードか。良い名だ」

「すでにエレイ、お前はヴァンパイアだ」

それを遮る様にエレイは話す

「それについて1、2質問があるんだが」

「ふむ、私に答えられる範囲で答えよう」

まぁ隠さなきゃならん事は少ないんだが

「よく、俗説では吸血鬼はニンニクや十字架、それに聖水、銀の杭に弱いって聞いてるが、本当なのか?」

「大抵の話だがニンニクや十字架などや銀の杭では我らは死なない」

「それに我々は吸血鬼と言ってもハーフだからな。エレイに関してはクォーターになっている、というのが妥当な線だと私は思うがね」

「そんなに興味があるなら私を銀の杭や太陽光で殺してみろ」

「待て、あんたは根っからヴァンパイアだが俺は違う、俺は太陽光を浴びると死んでしまうんじゃないのか?」

「なら少し待っていろ」

暗闇に体が溶ける様にもやがかかる

「後、エレイ・ヴァンガード、お前には侯爵の座を用意してある」

そしてスッ、と音もなく消える

これくらいはエレイにも覚えてほしいんだが



15分後


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

コンコン

ノックの音がする


「はい、どうぞ」

メイドらしき女性が入ってきた

「ブラド様からお話は大体お聞きました」

「なんでも、吸血鬼になったので聖水、ニンニク、十字架、銀の杭に弱いのか?とのお話をお伺いしたのでお持ちしました」

「え!?これ全部俺に試せって言ってるんですか!?」

「はい」

一部の隙もなく事もなげに言う

「ブラド様が間もなくおいでになられます、そのお話を必ずお聞き下さい」

メイドは「それでは失礼します」と残して出て行った

しかしこれを一人で試せって言われてもな……

自ら命を断とうと思った事がないからここで死ぬんじゃないかと怖気づく

「ハハハ、まだ自分が不死の身体になった事が信じられんか」

「おわっ!びっくりした!」

まさに心臓が止まるかと思った

「今からヴァンパイアとしての心の在り方を忠告をしておく」

「はぁ」

なんか話が急に飛んだ気がする

「エレイ、お前はこれらを試し、時期が来れば戦場に出陣してもらう」

「だが」

「無作為にヴァンパイアを増やすな」

「?」

意味がいまいち理解できない

「このトランシルバニア城のバトラやメイドは生粋の人間だ」

「そして。エレイ、お前はヴァンパイアになっている」

それは目覚めた時に感じた。左肩の矢傷ももう治っているし、自分の身体が普通の人間とは何かが違うと言っている

「ヴァンパイアが増えれば、当然ローマ法王庁も放っては置かない」

「直ぐにでも討伐軍を送ってくる筈だ」

「我々は当然死なない。だが、バトラやメイドはさっきも言った通り生粋の人間だ」

「討伐軍と言っても所詮は人間、最後はバトラやメイドに刃の矛先を向ける」

「悪魔に仕えた極悪非道の人間として扱われる」

「だから、無作為に吸血を行ってはならない」

そしていつ進行されるかわからない恐怖を感じ取るわけか

「彼らや彼女たちは必ず。そういった不安、または恐怖を覚えている」

「それはこのトランシルバニアの民も同じ」

「いつまた隣国から攻撃、進行を始めるかわからない」

この国がいかに最強を保ってきたのか、まだヴァンパイアになりたての俺には難しい問題だが大体飲み込めて来たぞ

「そんな恐怖を植え付けたままで国が保てると思うか?」

俺はすぐ返す

「無理だな、紛争が起きて国自体が自然崩壊するだろうな」

ブラドはフッと笑い

「流石だな、やはり君をヴァンパイアとして良かったと私は思うよ」

「だから私は敢えて残忍非道な戦略を使ってきた」

なるほど、恐怖を乗り越えようとする。いわば恐怖を更なる恐怖で塗りつぶす訳か

「悪魔の生まれ変わりの悪魔たる由縁か」

「そうだ」



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



私は言う

「さぁエレイ、それではお前が死なないという事象を実証してみようか」

エレイはビクッっと

「なぁブラド、いや。おれはもうあんたの護衛だったな。」

「改めてブラド様、俺を殺してみるって本当に俺は死なないのか?」

私は改めて言う

「普通の人間なら血液を1リットル以上飲まれて生きていると思うか?」

それにたじろいだエレイは

「うっ、それもそうだな」

続けて言う

「じゃあまず十字架を持ってみようか、死ぬほど熱いが」

「えぇ!?本当ですか?嫌だなぁ」

エレイはメイドが食器を運んで届ける台車の棚に置いてある十字架を手に持つ

「ぐぅああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

ジュウと十字架が燃え尽きる

「はぁ、はぁ、はぁ」

私は話す

「どうだ?死なない気持ちは」

エレイは息も絶え絶えで言う

「たしかに死ぬほど熱かった……」

私は小瓶を手に持つ

「これを顔面めがけて投げるが、避けるなよ?」

「うわー、痛そうって何が入ってるんですか?」

「勿論聖水」

「私ほど身体能力が高くは無い。それに再生力も低いがそれでも回復する」

「それでも動体視力も人間だったよりは30倍近く向上している

「それで避けるなって無茶だぜ……」

私は続ける

「無茶は頑張れなんとか出来るが無理は頑張ってもどうしようもない」

「私は生まれた時からヴァンパイアだったから兵士が後方から斬りかかった位なら耳で感じとれる」

「真正面、もしくは横なら太刀筋が止まって見える」

「私ほど動体視力ではないがエレイも亀の歩みの様に見えるだろう」

「それでは投げるぞ」

ヒュッ

パンッ

強すぎる力で投げたので小瓶が空中で割れてしまった

バシャッ

聖水がエレイに頭からかぶる

頭がまるで煮えた鉄を被せられた、もしくは濃硫酸をかけられた様に頭全体が溶ける

「ぎゃぁああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

そして10秒もしない内に顔が再生する

「熱い、熱すぎるぞ……」

「どうだ?死なない、いや死ねない身体は。はっきり言ってあまり気持ちよくないだろう?溶けた肉が再生する瞬間は」

エレイは顔をしかめて言う

「もう止めようよ、俺が本当に死んでしまう」

ブラドはそれを聞き流して続ける

「なら最後から2番目だ、銀の杭!」

「え!?ちょっと待って!心の準備が!!」

ドスッ

「ゴバッ」

大量の吐血をする

それもエレイの身体を銀で焼く

そして今回も10秒足らずで銀の杭は溶けて無くなり、燃え尽きた様な身体も肉が再構築される

「ハァハァハァ、ブラド公、やはりあんた悪魔だよ!!」

「しかし死ななかっただろう?お前は心の準備とか前置きが長いのだ」

フフフと笑ってみる



ドンドン!ドンドン!



激しいノックに私はまさかと思う

「ブラド様!敵が攻めてきました!急いでご出陣下さい!」

「わかった!私の剣と鎧を持って来い!エレイの白金の剣と鎧もだ!!」

バトラは「承知しました」と言い部屋を出る

そして私はエレイに向かって

「もう時間が無い!最後のニンニクは自分で食ってみろ!お前の鎧と剣はもう作ってある!もう刻限が無い!最後のヴァンパイアテストは今すぐする!」

そしてカーテンをシャッと開ける

エレイは驚いた

「死ぬっ!!」

「死なんと言っている!冗談はこれで終わりだ!」

そしてバトラが10人がかりで私とエレイの鎧と剣を持ってきた

「装着の仕方は知っているな!?装備したら即出陣だ!」

エレイも急いで装着する

不思議と鎧が物凄く重いとは思わなかった

むしろ軽い

「鎧と鎖帷子はしっかり装備しろ!」

「ハイ!」

「準備はいいか!?」

「ハイ!!」

「私は馬を持ってくる、お前はそれまでこの城に味方以外近づけさせるな!」

「わかった!」

トランシルバニア兵が城に入れまいと攻城兵器を石で破壊しようとする

パカパカと二匹馬が走ってくる

「乗れ!今回はいつもと様子が違う!」

「わかった!」

青毛の馬に一頭と一人づつのって城門前まで走る

「早く!矢よりも早く!」

私は焦った

こんな短期間に5~10万騎も集まる筈がない

だがそれは『隣国1カ国がやって来たら』の話だ

隣国が2カ国以上手を組めば話は別だ

しかもこんなに早く城門まで辿り付ける筈がない

伏兵か、裏切りか

おそらく後者だろう

城門前で

「ピアーニィ。貴様が裏切り者か」

馬から降りて言う

馬は何処かに走って行ってしまった

ピアーニィと言われた男はニヤリと笑う

「ブラド、お前はこのトランシルバニアを長く支配し過ぎた」

私はフッと笑う

「貴様が駆け付けた時にはもう遅かった、王は息絶えていた。という筋書きか?」

「わかってるじゃないか」

ピアーニィは目をむいて言う

「もうヴァンパイアは淘汰されるべきなのだ!」

「わたしに力を与えてくれるなら、と思い国を共に支えてきたが」

「お前はそんなガキに力を分け与えた!!それが許せんのだ!」

私は諭すような、茶化すような曖昧な言葉を投げかける

「貴様にヴァンパイアの力など与えてみろ、わずか3日で世界が滅ぶ」

ピアーニィはそれを聞いて激怒する

「貴様は!この私よりも!そんな異国のガキを選んだのだ!これで世界が滅んだら生きとし生ける者すべてにどう詫びるつもりだ!?神にでもなった気か!?」

瞬く間に私とエレイは槍兵10人に囲まれる

私は

「エレイ、任せた。お前でも切り抜けられる状態だろう?」

「わかりました。このエレイ・ヴァンガード、命に代えても」

ピアーニィはヘラヘラと笑う

「ハッハッハッハッハ。こんな糞ガキに力を分け与えて何になるのだ?ふざけるのも大概にしろ!!」

「殺せ!」

その笑っていた直後、私は避けていた

何かが20個ほど宙に舞う

「?」

それは槍兵の腕だった

一本残さず全て私とエレイ、それを囲んでいた10人の槍兵の自慢の肘から先が無い

「見事だ、エレイ、見事に力を使いこなしているな。後は任せた」

私はピィと指笛を鳴らす

大の大人2人、もしくは3人弱の大きさを持った大馬が敵国の兵を蹴散らしながら走ってくる

「さぁ、私はお前と出会った丘の上で待っている。そこで待っているぞ。エレイ」

「ピアーニィ、私を討つならエレイは殺さなければ、私には到底叶わんぞ」

「せいぜい生と死の狭間と言う名のダンスを踊って私にみせてくれ」

ピアーニィは兵を集め

「舐めるなぁぁぁぁぁぁ!!」

さぁ私と踊ろうぞ

死と言う名の生の極みを

私は丘の上まで馬を走らせて上がってきた

馬は自慢の前脚の毛を真っ赤にそめて膝をついている

「敵軍というすべての敵軍に勝てば、不浄の大地を築け!」

「馬に乗ってる者は槍で臓物を蹂躙しろ!」

「並行自動弓を使って皆殺しにしろ!」

「我が悪魔だという事を文字通り体でわからせろ!」

「裏切り者は四肢を生きたまま切り落とし、磔刑に処せ!」

『オオオオオオオオオオ!』と言ってトランシルバニア兵が奮起する

「捕虜などいらぬ!命乞いする者は右足を切り落とし、左の眼球を抉れ!」

「抉った眼球を串刺しにし、右足で足塚を築け!」

「一度でも我がトランシルバニアの城を開けようとした者を死体の山にしろ!」

やはり烏合の衆か

一人、また一人と戦意を失って逃げていく

しかし

死はそれほど怖いか

私は死ねないから解らないが

ピアーニィは生きている

気配がするのだ

「ハァハァハァハァ、おのれ、化け物が!」

振り返らず話す

「人間みな内側は化け物だ」

「ほざけ!貴様は神にでもなったつもりか!」

「かなりの重傷だな?もうやめておけ。お前にはもう戦う力は残っていない」

「黙れェ、私は、俺は、神になるのだ!」

ス と懐から何かを取り出す

この神々しい空気は…!

急いでピアーニィの方を見る

ま、まさか

「フン、少し顔色が変わったな、ハァハァハァ」

「止めろ!お前にそれは使いこなせん!!」

「フ、ン.知った、事か。貴様を、こ、ろせ、るならなんだっ、てやって、やる!」

キリストの楔を持っている!!

聖人キリストを十字架に磔刑した時に両手、左脇腹、両足に打ち込まれた……

ヴァンパイア殺しの楔……!

その楔は!!!

「貴様!!私が個人的に集めていた宝物庫を破ったのか!?」

ピアーニィは叫ぶ

「何年貴様の部下をやっていたと思うのだ!俺は神になる!」

私は叫ぶ

「ピアーニィ!それを使うのは止めろ!」

「貴様は神になどなれない!」

「己は己以上の存在にはなれぬ!」

ピアーニィも叫ぶ

「ならあのガキはどうなのだ?人の身でありながらヴァンパイアとしての生を受けた!!」

「くっ」

私は息詰まる。そう、エレイにヴァンパイアとしての生を授けたのはこの私自身なのだから

「先刻も言ったが、貴様を、殺せるなら、なんだって、やる!」

もう息も絶え絶えな筈なのだが、何か凄みを感じる

「止めろォォォォォォォォォ!!」


ドスッ


キリストの楔を、心臓に刺した

「ア゛ア゛ァァァァァァァァ゛!!」

心臓に刺した腕から全身に茨で纏われる

もう右手に持った白金の剣でやつを殺さねばならくなった

 近くで馬の鳴き声がする

「エレイ、只今戻りました」

「ピアーニィを殺せず誠に申し訳ない」

「なっ!?」

エレイは息を呑む

もう人間としてのピアーニィはいない

「エレイ。お前は下がっていろ」

「私が死んだらお前がトランシルバニアを護るのだ」

「待ってくれ!王、貴方は自ら死のうと考えていらっしゃるのか!?」

「違う」

私は続ける

「『キリストの楔』と言うのを知っているか?」

「っ!」

エレイは絶句する

「知っているのだな?」

「この戦いで私は死ぬかもしれぬ」

「ガァァァァアアァァァア!」

ゆっくりだが、確実にピアーニィの身体は変化していく

「私はそのキリストの楔を100年かけてすべて収集した」

「だが、その一本をピアーニィに奪われてしまった」

もうここにはピアーニィは存在しない

ここにいるのは

『聖人に近い者に成り下がった人間の末路』

「こいつは私が倒す、いや殺しきってみせる」

「だが、私とて生きて帰ってこれる自身がない」

「グゥゥゥオオォ!」

「おしゃべりは終わりだ!」

「行け!エレイ!」

「…………はっ」

「ですが王、貴方もお帰りになってください、必ず」

「善処はしようぞ」

そしてエレイは馬で走っていった

「来いっ」

「グルォォォォォォォオ!」

キリストの楔で強化されようと所詮は人間

相手の持った剣のような物をかわし、右手に持った剣で相手の右手を弾き飛ばす

ドシュッ

「ギィアアアアア!」

真っ黒な血液らしきものが右腕から噴出する

しかしシュルシュルと茨が右手を回収する

「ギュゥゥウン!」

後ろを向いて

「ガツガツガツガツ」

食べている

それに性的嫌悪感を感じる

我々ヴァンパイアとは中身も構造も違うらしい

「おぉぉぉぉおおおおおお!!」

連続で足、腕、手、頭を弾き飛ばす

首から下が燃え尽きる

「これは…っ!」

キリストの楔が見える

私はそれを左手で掴む

手が燃えるがそんなのはお構いなしだ

もはや茨人間とかした者は叫ぶ

「ギィアアアアアアアアア!」

弾け飛んだ筈の頭が叫ぶ

「ぬぅぅぅぅおおおおおお!」

ズボッっと音がして楔が抜ける

楔は私の血で消滅する

聖と闇の力で矛盾をした後、楔は私の右手は燃え、茨は消滅する

そして茨は大気に灰となる

ピアーニィは最後に

「おぉぉぉ、私は神と、王の座を失うのか…」

私は返す

「貴様はただの怪物だ」

ピアーニィは首だけで話す

「それは、貴様とて同じ」

「違う」

「我らヴァンパイアは自分の意志で思い、行動する」

「最後に笑うのは、お前達、人間だ」

「いつかは俺を、殺してくれるだろう」

ピアーニィは笑う

「なら、神は誰を選ぶ?少なくとも貴様ら吸血鬼では無い」

それに対して我も笑う

「神など、こんな戦争を生み出した神などでも無い」

ピアーニィは

「最後に、ヒトとして死ねる事を持って貴様を許そう」

そして最後に

「なら俺は、俺を殺してくれる者がこの世界に生まれ落ちるその日まで悪魔を貫こう」

「地獄で待っていろ、俺も直に向かうだろう」

そしてピアーニィは息絶えた

もうとうに今回の戦争は終わっていた

ピィと馬を呼ぶ

「誰か、私を殺して見せろ。その日が来るまで私は悪魔だ」

馬に乗ってエレイの待つトランシルバニアの城まで帰ろう

そして今後の身の振り方をエレイと話そう

いつか、また、私を、殺してくれる日まで


この作品も作者が頭の中で創作したものですが、ヴァンパイアネタです

色んな方々が創作したものと良く似ていると思います

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