鷹は二匹の仔羊と鼬と協力し、情報を掻き集める
新章開始。でも最初の方は、序章の延長みたいなもんです。
五月二十九日、昼休み。
現在正八面体の所有が確認されているのは七人。将治、由樹、米川、朝山、田沼、正成、宮川。この調子だとまさか――クラスの全員に届けられている?
早急に確認する必要があった。女子も男子も関係無い。もし全員に届けられているのなら、全員に情報を伝達する必要があるし、持っていない者がいるのなら、それはそれで問題になる。
将治はこの考えを他の三人に伝えた。三人とも賛同してくれ、彼等は手分けして確認することにした。
将治が担当するのは男子の半分。後半から六人で、残り半分は米川に任せた。女子は社交的な由樹と、割と女子と仲が良い朝山が担当だ。昼休みはまだ十分以上残っているし、今日はどうも皆外に出て行かない。昼休み中に確認する事は可能だろう。
後半から六人とは、現在所有が確認されている七人を抜いた男子十一人の内、半分という事だ。八島悠二、望月修、野際明久、遠山英治、杉山克義が対象で、厄介なのは恐らく杉山だけだろう。
実際、そのほかの五人は割かしスムーズに行った。最初こそ眉を顰めるが、直ぐに回想する顔つきになって思い出してくれた。八島と望月、それから遠山は、正八面体の事を特に気に留めていた訳ではないようなので、思い出すのに少々時間がかかったが、原口は直ぐに答えた。返答は全員イエス。ただ一人、野際だけは――正八面体は届けられていたが――将治の質問に、一瞬ぴくりと視線を泳がせた。
昼休みの終了間際に、将治の確認作業は終わった。望月が外に遊びに行っていた為、訊く事が出来なかったのだ。朝山と由樹の確認作業は、将治よりも少し早く終わったようであったが、やんちゃ坊主が多い男子前半を担当した米川は、昼休みの本当にぎりぎりになるまで確認を続けていた。
四人はそれぞれ、後で確認しようというような視線を投げ掛け合い、集めた情報の収集は五時間目の終了後となった。
五時間目は英語だった。担当は平林和正先生。少々かつ舌が悪い。年齢はまだ二十代半ばで、若かった。
平林先生の眠たくなる授業を傍に聞きながら、将治はやはり正八面体の事を考えていた。他の三人も同じようである。恐らく、結果は将治と同じだったのだろう。つまり、全員に届けられていた。
そうだとしたら――どうするべきだろうか。直ぐにでも全員に話を伝えるべきだろうか。分からない。こんな経験は初めてだった。
――伝えよう――
数秒の後に、将治は判断を下していた。信じよう、クラスメイトを。あいつらはこんな手の込んだ悪戯をするような奴らじゃない。皆で情報を共有した方が良いに決まっている。
今度は地の文ばっかりでしたね。