鷹は、何匹もの仔羊に楔が届いていた事を知る
昼休み。
「ヨネぇ」
将治は給食を片付けて直ぐ、米川の処へ寄って行った。二時間目と三時間目の間の休み時間で多少詳しい話はしてみたが、やはり大した情報は仕入れられなかった。
「あ、由樹」
外に遊びに出ようとする由樹も呼び止めた。しかし由樹が外に出ようとしていたのは何故か厭々のようで、将治が呼びとめると「何?」と目を輝かせて寄って来た。
「あのさ、今朝の話なんだけど――ヨネはさっきの話ね。正八面体ってやっぱり、差出人不明だった?」
「うん」
二人は直ぐに肯定した。
そこで横から、別の声が飛んできた。
「正八面体って言えばさ」
――朝山だった。独特の高い声が特徴的で、直ぐに判る。椅子を前後逆にして、背もたれに腹を寄り掛けて話していた。
「昨日俺ん家に正八面体が送られてきたんだよね」
瞬間、三人の眼が朝山に注がれる。朝山はそれに一瞬たじろいだが、直ぐにまた腹を椅子に預けた。
「…それってもしかして」三人の気持ちを代表したのは、由樹だった。「半透明で、中に黒い球体が入ってる?」
「そうそう! 何で分かったの?」
朝山は一旦興奮して見せた後、直ぐに訝った。当然だろう。朝山は、それらしいヒントなど一言も発していないのだから。
そんな朝山を余所に、三人は顔を見合わせた。まさか。朝山の処にも?
「…実はさ」今度は将治が切り出した。米川は先程から一言も喋っていない。「俺らの家にも届いたんだ、それ」
「えっ」
朝山は、これまで三人全員が言ってきた感想を発した。それは感嘆であり、疑問。『!』に『?』を足した感じだ。即ち、驚愕。
「……嘘でしょ?」
朝山は控えめに発した。三人を順繰りに見廻している。
「――実は俺だけじゃないんだ。正成と宮川……あと隆の家にも届いたって……今朝言ってた」
「え?」
そう言えば、朝山は今朝彼らと一緒に登校していた。
しかしまさか、田沼も? 正成も? 宮川も?
――将治は漠然と、何か厭な予感を感じていた。
死亡:零人