次なる虎は、親友
最終決戦、開幕。
六月七日、昼休み。
白い部屋にて、彼らは黙々とバトルスーツに着替えた。最近黙って着替える事が多い。それはこの孤独感、或いは虚無感の所為だろう。
本来、由樹は寡黙な方ではない。むしろ騒がしい性質である。しかし、残り二人しかいないと言うこの孤独感が、由樹の口を閉ざしているのだろう。尤も、それによって虚無感は更に増幅するのだが。
二人が着替え終わったのを見計らったように、ヴァンから映像が投影された。相変わらず不鮮明でよく見えない。――が、この時だけははっきりと見えた。将治は目玉が落ちそうな程目を剥いた。
咄嗟に由樹のヴァンを見る。由樹も将治のヴァンを見ていた。そして、驚愕の色を強くしていく。
将治のヴァンから投影された映像は、間違いなく由樹だった。由樹のヴァンからは将治の映像が映し出されている。
つまり。
戦えと言う事か。生き残った二人で。親友同士で。
《ははは。驚いたかね?》
いつもの男の声が響く。口を閉じた後も笑いを押し殺したような音が続いた。
「てめぇ、どう言うつもりだこの野郎!」
由樹が激昂した。
《どう言う? 分からないのか? つまり、お前たち二人に殺し合えと言っているんだよ》
声は悪びれる様子もなく言い放った。それがどれだけの意味を持っているかを知っていながら。或いは、知らないのだろうか。言葉の重みを。
《お前たちは殺し合わなければならない。何故なら、戦いが始まって二十分以内に決着がつかない場合は、舞台となる新大西中学校舎に仕掛けられた爆薬が同時に炸裂するからだ》
「なっ……」
《くはは、驚いたようだな! 信じられないか? だが事実だぞ! 我々は本当に学校に爆薬を仕掛けた! あれが全部同時に爆発すれば、学校は全壊だな! 中にいる人間はもちろん全員死ぬ! あはははははははは!》
最早壊れていた。狂気としか言いようがない。しかし、それだけにそれが事実である可能性は高いだろう。狂った人間は、時として正確で緻密な、かつ陰惨な仕掛けを施すものだ。
それに、この男は『我々は』と言った。あれは明らかに自然に出てきた言葉だ。つまり、複数犯である可能性はかなり高い。そうであれば夜中の学校に忍び込んで爆薬を仕掛ける事など造作もないだろう。最悪の場合、教師に紛れ込んでいるかもしれない。
《あるんだろう? 普段から溜まっている、相手に対する鬱憤が。それを晴らすいい機会じゃないか! いくら親友と言ったって、ストレスが溜まらない訳じゃないからな!》
くっくっく、と男は笑った。
《さあ、殺し合えよ。親友同士で》
カチリ。決戦の時。




