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とらべるぼーる  作者: 原雄一
第九章 中止《やめ》る
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鷹は愚行を諦める

 場に、何とも言えない緊迫感が漂う。将治たちは中学生なりの殺気を敵に送るが、マジシャンはそれをふわりふわりと避けているようだった。

 米川が一歩を踏み出した。それを合図に、誰もがマジシャンに向かって行く。将治はヴァン・ガンを構え、マジシャンを銃撃した。〈ヴァン・ランス〉を構えている者も見える。

〈ヴァン・ランス〉は長いリーチを持つ槍だ。刃の部分は短く、代わりに柄が長い。刃は円錐形ではなく、薄っぺらいタイプだった。確かに遠距離用の武器だが、遠距離で戦うつもりならば将治としてはガンの方が便利な気がした。

 マジシャンは紅い布が無い事に気が付き、大袈裟なアクションで嘆息した。まるで、自分を殺そうと迫って来る何人もの敵が見えていないようだ。

 そして両手を握ると、将治たちに見せびらかすように前に突き出した。微笑し、そして――手の中に入っていた大きな紅い布で自分を包む。将治の銃弾も、米川のサーベルも、由樹のソードも――空を裂いただけだった。

 マジシャンは将治の背後に現れた。将治は殺気を感じ、咄嗟に飛びずさる。マジシャンは刃の飛び出たステッキで斬撃してきた。将治の腕に掠る。

 将治は傷を負った右腕を押さえながらガンを発射した。マジシャンは右にステップしてそれを避けようとしたが、頬を掠めたか血が舞った。

 将治はそのまま照準を下げ、足を狙って銃撃した。敵は右足を軸に跳んだ。銃弾は客席の地面を抉り、マジシャンには当たらなかった。

 マジシャンはそのまま横に転げた。しかしそこにはランスを構えた朝山が待ち構えている。朝山はランスで地面のマジシャンの腹部を突き刺した。表情を歪め悶絶するマジシャン。ランスを強く握り逃すまいとしている朝山。

 将治は腹に刺さった槍を抜こうとするマジシャンの傍らに立った。そして朝山に目配せすると、ガンを構えた。

 ――破裂音が響いた。



 白い部屋――。

 田沼が死んだ。頼みの綱の一つでもあった田沼が。どうやって死んだのかは分からない。もしかしたら、あの布の中はマジシャンに有利なハンディキャップマッチだったのかもしれない。しかしそうだとしても――田沼が死んだという事に変わりはない。そしてそれは、戦力を失ったと言う事になる。

 さらに、結城がいないため今回手に入れたヴァン・ウェポンが何であるか分からない。次回の戦いで使えないかもしれない――。

 そう思っていたら、不意にアナウンスが入った。


《やあ、諸君》


 しわがれた声だ。恐らく老人だろう。――何者であるかは判らないが。


《私はこの戦いを管理する者、〈脳〉の一人だ。君達の戦いは見ていた》


 どこか嫌悪感を催す声だった。それとも、声ではなく内容を嫌悪しているのか。


《〈死闘士ファイター〉が死んでしまったからな。公平を期するためにヴァン・ウェポンを教えてやろう》


 将治としては願ってもない事だったが、やはり口調に腹が立つ。


《今回のヴァン・ウェポンは〈ヴァン・ライフル〉だ。その名の通り狙撃銃》


 ライフル。平和だった頃――この戦いが始まる前――将治が好きだった言葉だ。


《では、そろそろ時間だ》


 カチリ。言葉通り、転移が始まった。



 残り六人。たったの六人。この事実は重い。三十五人いたクラスが、六人――六分の一以下に減ってしまったのだ。

 そして、戦いはこれからも続くだろう。独りになるまで。あと五人、死ぬまで。

 将治は悲痛な面持ちで、人数の減ったクラスを眺めた。

 自殺しようなどと言う考えは、いつの間にか消え去っていた。自分が死んだところで、何も変わらない。この戦いは終わらないのだ。ならば、死んでではなく、生きて責任を取る。今までできなかった事をやる。それが自分の役目だと、将治はそう思っていた。

 第九章《vsマジシャン編》完結。


 死亡:二十八人

    大西 亮

    加藤 健一

    加藤 慶尚

    黒川 幸太郎

    齊藤 正成

    桜庭 俊

    杉山 克義

    遠山 英治

    田沼 隆

    野際 明久

    宮川 将太

    八島 悠二

    安西 英梨香

    石川 舞香

    大島 雪絵

    小川 文香

    唐沢 佐由里

    河本 詩穂

    柴田 遥子

    翠川 七江

    鈴鹿 美帆

    田淵 沙希

    出川 夕里

    土肥 優里枝

    御調 奈菜

    渡部 成美

    奥島 瑞穂

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