次なる虎は、笛吹き
六月四日、三時間目。
昨日あれだけ主張した痛みは、朝起きた時には消えており、将治は何とか登校する事ができた。学校に来た人数は少ない。数日ばかりの欠席ではなく、もう永遠に登校する事はないのだ。その数二十人。今日登校したのは、残りの十五人だけだった。
将治には、ずっと引っ掛かっている事があった。『あいつ』の事だ。これまで、事あるごとに過剰な反応を見せてきた『あいつ』。自身も気づいていないのだろうが、将治には分かっていた。
そして将治は、それに関してある仮説を立てていた。しかし切り出すタイミングがなかなか無く、これまで素通りされてきたのだった。
今日こそ聞きだす。真実を。あいつが隠している事実を。
否、『隠している』と言う表現は――あくまで将治の仮説が正しかったとして、の話だが――正しくなかった。おそらく彼に、『隠している』と言う意識はない。無意識のうちにそれが胸の奥底に沈んでおり、何かがあると折に触れて心の芯が反応するのだ。
将治は腹を括り、『あいつ』の許へと歩み寄った。
「野際――」
カチリ。最悪のタイミングだった。
白い部屋――。
結局将治は、野際に訊きたかった事を訊けずにいた。バトルスーツも着ねばならないし、ヴァンから投影される映像も見なければならないし、その敵に対する対策も講じなければならないし――。
ヴァンから投影された今回の敵は、少年だった。鍔広で背の高い帽子をかぶり、縦に太い縞模様の入った服を着ていた。服は緩く、帯を締めない着流しという感じだった。それに縦縞が入っている。
少年は、片手に笛のようなものを持っていた。形状としてはリコーダーのような縦笛で、クラリネットに近い。口元には薄ら笑いを浮かべているが、帽子を目深にかぶっているため目は見えなかった。
カチリ。視界が歪んだ。




