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とらべるぼーる  作者: 原雄一
第五章 死守《まも》る
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虎の拳を彼らは避け続ける

 やがて阿修羅が見つかった。三面六臂、間違いなく阿修羅だ。六本の腕の内二本は合掌しており、残りの四本は高低差をつけて広げていた。目は瞑っている。

 ――しかし、おかしい。

 この阿修羅は、剣を持っていないのだ。いや、阿修羅が剣を持っていない事がおかしいのではない。寧ろ通常の阿修羅であれば、剣など持っていない。しかし、先程ヴァンから投影された阿修羅は剣を持っていた筈だ。

 更に、阿修羅の顔は一説によると、『怒り』『悲しみ』そして『意志』を表すと言われている。しかしその三つの顔の中に、目を瞑っている顔はない筈――。

 ギシリ、と軋みながら阿修羅が動き始めた。長年錆び付いていたようで、腕を動かすのに抵抗があるようだ。将治らは即座に構える。

 やがて合掌していた手が放たれ、それを合図にしていたかのように全ての腕が自由になった。――同時に、瞑っていた目が見開かれた。

 将治がびくりと身を硬直させたのも束の間、阿修羅の右手が奥島を吹き飛ばした。右手と言っても三本あるが、一番下のものだ。奥島の身体は金剛力士像を砕いた。頭からは血が流れ、頸が不自然に曲がっている。

 阿修羅はまた止まり、思案深げに辺りを見回した。そして、周りの者たちが剣を構え威嚇していることを認めると、顔が入れ替わった。――怒り。

 阿修羅の拳はほぼノーモーションで飛んできた。右、左、左、右右、左右右――。右の次は左、左の次は右などと言う規則性はなく、ただただ地面を砕き続けた。

 将治達は避けるしかなかった。あまりにも速く、避けると言うよりも偶然当たらなかったと言った方が正確かもしれないが、とにかく速すぎて攻撃を当てる事も――それ以前に繰り出す事も出来なかったのである。

 阿修羅の拳を避け続けていた彼らだったが、やがて疲れが見え始め、出川の足が止まった。阿修羅はすかさず拳を繰り出し、出川の身体を吹き飛ばした。今度は千手観音にぶつかり、その腕が飛び散った。

 阿修羅の首がまた入れ替わった。――悲しみ。

 そしてめくるめく戻っていく。――怒り。

 また阿修羅が床を殴り始めた。将治達は、できるだけ距離を置こうと走り続ける。阿修羅の拳が、長剣を持った銅像を打ち砕いた。それでも彼らは逃げ続ける。

 阿修羅の手がそちらへ向く。真ん中の右手だ。そして、ブロンズの剣を取った。

 その手が横に振られると、壁が抉れた。将治は反射的にヴァン・ソードを前に出し、それを防いだ。それでも威力で後方へ吹き飛ぶ。タイル張りの床が将治の背中をこすった。

 ぐっ……、区切りが微妙だ……。

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