鷹は過去を振り返り、そして先を見据える
六月二日、朝。
「ぅおぉい……」
「国井ィ……」
「護ってくれるんじゃなかったのかよ……?」
「護ってくれるんじゃなかったの……?」
「話が違ぁう」
「お前も――」
「お前もこっちに――」
「死の世界に来ぉぉぉい……」
「っはあ!」将治は息を荒くして起き上がった。「――夢か……」
暫くしていつもの甲高い音がしたのを聞いて、将治は幾らか安堵した。今日は朝から呼び出しなどと言う悲惨な事にならなくて済んだようだ。
最早頭の中は、ヴァンの事に占められていると言っても過言ではなかった。夢の中でも、死んだ者たちが将治に迫って来て、彼を責め立てた。
そう言えば、クラスメイト達に伝えられていない事がまだ一つあった。別に知らせる必要もないのだが。
それは、〈死闘士〉についてだ。
結城は自殺しようとした時、どう言う訳か〈白い部屋〉にいたそうだ。初めは戦いの召集かと思ったが、そうでもないらしい。その場には自分一人しかいなかった上に、確かに死んだ感触があったからだ。
彼はそこで〈支配者〉を目の当たりにした。そして胸の中心にヴァンを埋め込まれ、これは特権であり、ギロチンだと説明された、と言っていた。
どう言う意味かと将治が尋ねると、結城は重苦しい口調で語り始めた。
――ヴァンを身体に装備する事を許されているのは、俺だけだって言ったよな――
最初に彼と会った時の事だ。
――さらに俺は、全ての〈ヴァン・ウェポン〉を使える。それが特権。ギロチンって言うのは、これがあればいつでも〈支配者〉は俺の事を殺せるってことだ――
――このヴァンの本体に触れるとな、生物は融解されるんだ――
正成の時の事を、将治は想起した。あの時将治が止めに入らなければ、大島は死んでいたと言う事だ。
――そしてこのクリスタル部分は、〈支配者〉がいつでも好きな時に破壊できる――
将治にもその意味は分かった。
――つまり、気に喰わない事をすれば直ぐに殺されちまうって訳だ――
「――眠みィ」
将治は回想を中断し、寝室から抜け出た。朝の時間は、過去を振り返るには短く、先を見据えるには更に短い時間だった。
朝学活、一時間目、二時間目、三時間目――飛ぶように過ぎてゆく教師達の言葉を聞きながら、今日はいつだろうと苛立っていた。どうせなら早く済ませてほしいものだ。無いに越した事は無いのだが。
そして同時に、これはいつまで続くのだろう、とありきたりな疑問を持つ。回数か、条件か……。とにかく、早く抜け出したかった。この状況から。
カチリ。鞄の中から音がした。
相変わらず無駄描写多し。




