鷹は朝の時間に情報を仕入れる
《六時三十分、六時三十分》
四角い箱の中で、時計の形をしたキャラクターが体を震わせて時間を伝えていた。
《六時三十分になりました、ニュースをお伝えします》
女子アナウンサーが、厳粛そうな声で告げた。
《先日から行方不明になっていた島田洋介さん二十六歳の所持品とみられる……》
なんだ、さっきのニュースか。少し落胆した。このニュースが流れるという事は、次はAKBのニュースだからだ。
――しかし、そうはならなかった。
《えー、ここで速報です。長野県の北部で、○○中学校に通う二年生二十八名が、集団で失踪するという事件が起きました。○○中学校では本日、今週末に行われる予定だった運動会の朝練習を……》
思わず眉を寄せた。不思議な事もあるものだ。集団で家出だろうか。いや、それはありえないか。三十名近くが同じ日にそろって家出し、しかも学校にも来ないなどと……。
そう思っていたら、目の前に朝食の乗ったプレートが運ばれてきた。母だ。
「いただきます」
画面左上の時計を見れば、もう六時四十分になっていた。普段通りの時間だ。
今日の朝食はリンゴジャムパン、ヨーグルト、舞茸スープ、キウイフルーツ、ヤクルト――いつものメニューだった。将治は四等分されたパンのうちの一つを、丸々口に抛り込んだ。