一匹の仔羊は狼と化し、傲慢に戦う
男はモニターに映る二十三名の子供たちを見て、くつくつと低く笑った。今度はどう楽しませてくれるだろう、と楽しみになったからだった。
「〈支配者〉」
「ん」
「紅茶をお持ちいたしました」
「ああ」
青年――無論、以前の青年ではない――が男、〈支配者〉の前に置いた。「失礼します」と言う事も忘れない。
「まったく、君はよくできた子だな。前にいた奴は全然使えなかった」
〈支配者〉は、以前手伝いをしていた青年の顔を思い出した。そして、彼の末路を思い出し、また低く笑った。
青年は控え目に退出して行った。ドアに向かう途中で少しつんのめったようだが、この暗い室内では仕方がないだろう。〈支配者〉は紅茶を啜った。
モニターの中では、砂が揺れ動き、地面が震動していることが見て取れた。もうすぐアリジゴクが現れる。奴は特殊な身体を持ち、今の彼らでは斃せない筈だが――。
さあ、どう出る?
* * *
砂が飛び散り、壁を作った。その向こうからは身体が幾つも連なったアリジゴクが飛び出してきた。耳を劈くような、高く不快な鳴き声を上げる。
『ギィアアアアアァアァァァァァァァァァアァ』
思わず誰もが、耳を塞いだ。アリジゴクはぎょろりと首を動かし、将治達を睨みつけた。明らかに、餌を見極める眼をしていた。
と、突然アリジゴクが飛んできた。あの身体はどこまで続いているんだと訊きたくなるほど長く、どこにそんなバネが仕込まれているんだと問いたくなるほど速かった。狙いは西嶋のようだ。
西嶋が悲鳴を上げた時、黒川が横からパワードナックルを喰らわせた。顎と言うのか口と言うのか、アリジゴクの先端、二本の突起のすぐ脇にヒットした。アリジゴクは吹き飛び、砂を弾き上げた。上から降って来る砂が将治にもかかる。
黒川はそのまま追撃に向かい、又もや頭にパワードナックルを叩き込んだ。が、アリジゴクは殆ど微動だにせず、反動に少し首を揺らした程度だった。
それどころか、アリジゴクはさらに身体を伸ばし、反撃に出た。次のターゲットは無論黒川。
黒川は顎の下からパンチを叩き込み、アリジゴクを吹き飛ばした。アリジゴクはその勢いを利用し、今度は桜庭を狙った。
黒川は砂を巻き上げて走り出し、桜庭に襲いかかろうとするアリジゴクを殴りつけた。黒川は、桜庭の拳がアリジゴクに向けられていた事に気付かなかった。
そう言えば、半分くらい振り仮名振って無い奴がいますね。ごめんなさい。
もう誰に振ったのか分かんないので、放置します。ほんとにごめんなさい。




