次なる虎は、麒麟
将治らは白い部屋にいた。真っ白い空間。黒い球体が一つあるだけの空虚な空間。
「やばい、あの服を着ろ!」
将治は右方向を指さした。その先には、昨日杉山が見つけた何着もの服が掛かっている。しかし、数が減っているような気がするのは気のせいだろうか。
いや、そうでは無かった。全員がその服を着てみると――背中の部分に書いてある番号に、出席番号を当てはめて着てみると――数もサイズもぴったりだった。つまり、″何者か″が、死んだ人間の分を除外していったという事になる。
誰からともなく前のチャックを閉めた。首元まである長いチャックだ。恐らくこれで、敵の攻撃を防ぐのだろう。着てみてさらに実感する。これは明らかに、布製ではなかった。
不思議な点はもう一つある。右手の部分だ。そこに、何やら人の手のような形をした物が付いているのだ。先は指が入れられるようにか、丸くなっていた。――いや、右手についているのは右利きの者だけで、どうやら左利きの者には左手側についているらしい。それを手にはめて拳を作るのには、少し抵抗がある。
ヴァンから映像が投影された。昨日のパターンから推測すると、ここで投影された敵を斃せと言う事なのだろう。将治は、いや恐らくその場の全員が、できるだけ弱そうなものが投影されるのを願った。
投影されたのは伝説の動物、『麒麟』だった。中国の伝説上の生物。獣類の長とされるそれは、形は鹿に似ていて背丈は五メートルもあると云われる。顔は龍に近く、凶暴そうな歯をむき出しにしている。さらに言えば、普段は温厚な生物であるのだが、彼らの中にそれを知る者はいなかった。
カチリ。あの音がした。景色がめくるめく変わってゆく。落ち着いた先は、『天空』だった。いや、『雲の上』と言った方が正しいだろう。そこはまさに、誰もが一度は乗ってみたいと望んだ雲の上だったのだ。
綿菓子のような雲が、ゆったりと風に流されている。その上に立っている将治らもまた、ゆったりと空を流れていた。




