鷹と鼬と三十三匹の仔羊は檻の中に閉じ込められる
気が付いた時には白い部屋にいた。白い壁紙を貼った部屋、ではない。壁その物が白く――いやそれだけではない。天井も床も、見る物全てが真っ白だった。
この空間にある物の中で、白くないのはクラスメイトと、そしてもう一つ――部屋の中心に唐突に佇む黒い球体だった。人ひとり分以上だから、大体二メートルと言うところだろう。
将治は、そこが何処であるかを直ぐに悟った。が、口には出さなかった。まだそうと決めつけるには尚早と判断したからである。
「…あれっ」慶尚が、素っ頓狂な声を上げた。「俺のアレが……〈ヴァン〉が無い」
言いなれない言葉を口にするような――否、『ような』ではなく、実際にそうだったのだが――ぎこちない口調だったが、少し焦りを感じている事は確かだった。
やっぱりか――将治は内心で納得していた。
将治は、ちらと腕時計を覗き込んだ。――時刻は、一時十一分だった。
「なんだこりゃ?」
次に疑問を口にしたのは、杉山だった。――いや、『次に』と言うのは正確ではない。先程から、誰もが「ここは何処だ」と喚き立てていた。
将治が杉山の方へ寄っていくと、杉山の目の前に数十着に及ぶ奇妙な服が掛けられていた。動き易そうだが、何故こんな物が――将治は思った。
その時、手の中にあったヴァンが光を放ち、不鮮明な映像を投影した。画像が粗く、はっきりと識別できなかったが、その姿はゴリラのようであった。
不意に、カチリ、と言う音がした。その途端、目の前の景色が一瞬にして歪み、白い空間を脱する。しかし、辿り着いた先は教室ではなかった――。




