その0
人間は目的を持たずに生まれてくる。
だから、人間は生きていくことに迷う。
何のために生まれてきたのか。
自分が生まれてきたことに意味はあるのか。
本当に自分はこの世界に必要なのか。
考えだしてもキリのないことへ迷いこんでしまう。
答えを出したとしても、それが正しいのかどうかをはかる方法もない。
その答えは自分の中の確信であって、正解なのかなんて分からない。
そんなことを言いだしたら何も分からなくなってしまう。
地球にある真実のどれだけが正解なのかさえ。
でも、信じたい。
生まれてきたことには意味があるんだ、って。
この命には意味があるんだ、って。
そう思わないと、生きてなんかいけない。
意味のない人生なんて意味がない。
たとえ、それが自分の中の確信でしかないとしてもいい。
私が生きていることには意味がある。
ちゃんと。
そうだとしたら、きっとそれはあなたのためにあるんだと思う。
そう、私の命はあなたのためにある。
だって、これはあなたに救ってもらった命だから。
あなたがいなければ無かった命なんだから、今ここにあるかぎりあなたに捧げたい。
全てを捧げたい。
なのに、うまく伝えられない。
人間って不器用だから。
本当に伝えたい思いの全部を伝えられないし、本当に伝えたい言葉の全部を伝えられ
ない。
でも、伝えたい。
あなたに伝えたい。
私はあなたのために生きてる、ってことを。
あの日、あのとき、あなたを初めて目にしたときからずっと変わらないことを。
生死をさまよっていた中でも、あなたのことだけは分かってた。
薄れてく景色の中でも、あなたのことだけは記憶していた。
あれから私に生きる意味ができた。
どんな苦しみに襲われようとも、どんな辛いことが起ころうとも、あなたがいてくれ
れば乗りこえられた。
あなたがいたから生きていられた。
あなたは私の全てだった。
だから、私はあなたのために生きてきた。
それが私の生きる意味だった。