ダンスの幕引き
更新が遅れてしまいました。楽しみにしてくれている方がいたら本当に申し訳ありませんでした<m(__)m>
「マスター!?」
ミザが悲鳴を上げ、こちらに向かってこようとするが、右手でそれを制し、
「来るなよ?見た目ほどひどい怪我じゃないから」
言葉とともに怪我をした左手を軽く振ってアピールする。少し痛みがあるが、戦闘に支障はないので問題
ない。
しかし、どういいうことだ?俺が傷を負ったさっきの攻撃は今までの攻撃と何1つ変わったところは無かった。ゆえに、今までと同じ受け方をしたのだが、それで怪我をした。ということは何か秘密があるはずなのだが…。
「考え事をしている暇はありませんよ?」
「くっ!」
どうやら考え事はさせてもらえないらしい。眼前に迫った剣先をバックスッテップでかわすが、完全に避けたと思われる攻撃は前髪を僅かに切り刻んだ。おかしい、やはり先ほどから間合いを測り間違えている。さらにステップを続け、会長の間合いから完全に離脱する。
「そんなに離れてしまっては、あなたも攻撃できないんじゃないかしら?」
クスクスと笑い、こちらを挑発しながらも会長は構えを崩さない。少しでも油断してくれれば、すぐにでも決着はつけられるとは思うのだが、どうやらそう簡単にはいかないらしい。溜め息をつきたくなるが、やめておく。それこそこちらの隙になってしまう。しかし、このままというわけにもいかない。早めにあの不可思議な間合いの読み間違いを修正しないと、最終的にこちらの負けは目に見えている。逃げてもいいなら簡単に逃げれそうではあるが、俺から挑んだ勝負である。逃げたいとは思わないし、なによりやられたままで終われるよう性分ではない。せめて機刃の能力が使用可能であればどうにかなるのだが…。能力?まさかと思って聞いてみる。
「会長、まさかとは思いますが機刃の能力を解放していますか?」
「ええ」
それはもうにこやかに返答してくれた会長に俺は頭が少し痛くなる。
「ちょっと待ってください。なにさも当然のように答えてるんですか。普通新入生相手にそこまでしますか?」
俺はやや呆れながら会長に問いかける。おそらく人間相手ということで、刃引き≪リミッター≫をかけてはいるのだろうが、それでも戦闘経験が少ない『であろう』新入生相手には、まず間違いなく過ぎた力である。
「仕方ありません。能力使用なしだと勝てなさそうなんですから。こちらも保たなくてはならないメンツがありますし、能力も本来の使用法ではありませんから」
悪びれもせずにそう語る会長に今度こそは溜め息をついてしまう。
「分かりました。そちらが能力を使用するのであれば、こちらも遠慮することはありませんね」
「といいますと?」
「こちらも機刃の能力を使用するだけですよ」
そう言って俺は会長にいきなり突っ込む。いきなりの俺の突進に驚きながらも会長は俺に突きを放ってきた。狙いは俺の右目辺り。致命傷にはならないようなところばかり狙ってきていたはずなのでおやと思い会長の表情を見ると、そこに浮かんでいた表情は恐怖のものであった。おそらく俺のいきなりの行動に反射的に行動してしまい、こういった結果になったのだろう。しかも、この距離では止めることももうできない、それゆえの表情。
「避けてー!!」
会長も無駄だと分かってはいるのだろうが、気づいたかのように俺に向かって叫ぶ。そんな会長を冷静に観察しつつ、俺は自分の持つ機刃の能力を解放する。その瞬間、今まさに俺を貫こうとしていた刃は俺の左手に持つ機刃へと吸い込まれるようにその切っ先の進路を変え、ガギィッと鈍い音を立てて受け止められた。
「えっ?」
目の前のことが信じられないのか、茫然としている会長の眼前に右手の機刃を持っていき、俺は告げる。
「これで、俺の勝ちですね?」
これで、会長とのダンスは幕を閉じた。
これにて、会長戦は終了。会長やエッジの能力の詳細はもう少し後で出てきます。