表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

平等的出産装置③

「ねぇ聞いてよ、本当に痛くなかったんだってば」

リビングで夕食を作りながら、妻は言った。

そういえばこいつはあの機械を知らないんだった。

「でも、そういうの聞いたことあるぞ?『痛くなかった』って。」

「・・・・・・ふーん。でも、良かった。」

あの機械のおかげか、妻は血も何も出ずに出産を終えた。

そのためか入院はせず、家に帰ってきた。

赤ん坊は病院。

「夕刊でーす」

と、玄関から新聞屋の声。

「はーい」

妻がにこやかに玄関へ歩いていった。

その時、

「ええ、入院!?」

と、妻の声。 

小さく会話の声が続いた後、戻ってくる妻。

「どうしたんだ?」

とりあえず聞く俺。

「新聞配達の人が変わってたから、『前の人はどうしたの?』って聞くと、『入院した』って・・・・」

青ざめながら、言う妻。

ちなみにその『新聞配達の人』は妻の幼馴染で、いつも夕刊を届けにきては妻と親しげに話していた。

前なんかは家に入れて紅茶を出したりなんかもしていた。

「なんで、入院なんかしたんだ・・・・・?」

「それが・・・・・」

ソファに寝転がりながら、こっちを向く妻。

「・・・・・いきなり股間押さえて『ウウッ』て呻いたんだって・・・・・それでお医者のところ行ったら・・・・・」

「行ったら・・・・?」

「・・・・・・金玉、潰れてたんだって」

ショックのせいか躊躇せずに、妻はそう言った。

「・・・・?何故いきなり・・・・・」

ハッ、と私は思った。

私はあの装置で痛みを受けなかった。

妻も、あの出産で痛みを受けなかった。

それはあの医者が妻にくる全ての『痛み』を俺に回した結果だ。

『すべての痛み』を、『赤ん坊に精子を与えた者』に回した結果。

・・・・・・私は全てが悲劇へと繋がりそうになった思考回路を、

「・・・・・それは気の毒だな」

とりあえず、切った。

お読みいただき、ありがとうございます。

今思えば、わざわざ三つの話で構成しなくても良かったかも知れません。

関係ない話ですがこの医者が個人的には大好きでした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ