平等的出産装置②
!!!
「いいですか、旦那様。奥様には内緒にしてあります。しかし、装置が発動する時にはあらかじめカウントしますので。」
・・・・・恐いことするな。
「分かりました。」
いざ、出産である。
「・・・・・うっ」
妻が呻きだした。
「・・・・・先生!もうすぐ産まれます!」
「ああ、分かってる!」
医者はこっちを向いた。
「産まれますよ、旦那様。」
先程の私の対応とは反対に、女性にはちゃんとした処置を取っている医者。
今日始めて医者らしい一面が見れた。
・・・・・あたりまえか。
「3!」
医者がカウントし始めた。
やばい、緊張してきた。
「ううっ」
呻く妻。
ヤヴァイ、緊張してきた。
「2!」
・・・・・なんだか吐き気がしてきた。
・・・・いや!何を言ってるか俺!
俺が妻に注いできた愛はこんなものではないはずだ!
なんなら痛みを全て受け取ってもいいくらいだ!
「あ、なら『痛み5』から『痛み10』にしておきますね」
「え!嘘!嘘だから!変えなくていいから!」
「ハッハァ、もう遅い!」
「んだとてめぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「1!!!!」
・・・・・ああ。さらばお母さん、お父さん。
ここまで育てていただきありがとうございました。
「0!」
お願いだから、墓には『金玉潰れて即死』なんて書かないでください。
「産まれた!」
「・・・・・・・ッ!!!!」
ああ、さらば愛する妻・・・・・子供には『かっこいいパパ』を想像させてあげてくれ。
・・・・・・って、あれ?
オギャア、と赤ん坊の泣き声。
「奥様、元気な男の子ですよ!」
「・・・・・・?」
「・・・・・・?」
「・・・・・・?」
痛く・・・・・無い・・・・・?
妻が平然としている様子を見るとやはり全ての痛みを俺に回したらしい。
・・・・・あの医者、トンデモネェ。
「?」
首を傾げ、つまらなそうな顔の医者。
「潰れませんねぇ、旦那様」
ハハハ、と笑う医者。
・・・・・・ぶん殴りたい気分である。
「・・・・・・しかし、本当だ」
妻も俺も、全く痛みを受けていない。
どうせなら俺が受ける痛みの分を医者に回したいとこだが。
「故障ですかね・・・・・?」
私が医者に聞くと、
「それは無いですな。だって奥様が痛くないって言うんなら。」
「・・・・・・・でしょうね
「まぁ、奇跡ってやつですね」
医者は笑った。