平等的出産装置
「おめでとうどざいます!とうとうこの日がやってきましたね!」
医者は笑いながら言った。
「ええ、本当におめでたいことです。」
否、おめでたいことである。
何を隠そう、今日は私の妻の出産予定日、つまり子供が生まれるのだ。
「しかし、出産時の痛みとはどれほどなのでしょうか?」
私が医者に聞くと、
「それはもうこの世の痛みとは思えないですよ・・・あなたのイチモツから子供が出るようなものです。」
なんと恐ろしい!
「しかし、そのたとえは間違っているような気がしてなりません。」
私はきっぱりと断言した。
「そ・こ・で!」
それを医者はきっぱりと無視した。
「じゃんじゃじゃ~ん」
そう言うと、医者は変な形をした機械を袖から出した。
・・・・・四次元ポケットか、お前の服。
とにかく、
「なんですか、その機械は?」
「よくぞ、聞いてくれました!」
このくだりを待っていただろう、嬉しそうに言う医者。
「この機械は平等かつなんとも進歩的な機械なのです!」
「いったいどのような・・・・・?」
「なんとこの機械は出産時の女性にかかる負担を分けようというものです。胎児は卵子、精子でできています。しかし、痛みを10とすると通常は勿論女性のみがこの『痛み10』を受けますなんと理不尽な事か。男ばかり性不純交遊を楽しんで、挙句の果てには女性しか痛みを伴わないなんて!しかし、この機械を使うことにより胎児に精子を与えた旦那様も痛みを受けるのです!」
「ただのとばっちりじゃァないですか。」
「・・・・・ようは出産時の女の負担を旦那様と仲良く半分こってこと。『女性の痛み10』を『女性の痛み5』と『旦那様の痛み5』。これで分かりました?」
少々キレ気味の医者。
「なるほど・・・・・ちなみにそれを使った時、私への痛みはどれくらいなんですか?」
「そうですねぇ・・・・・分かりやすく言いましょうか」
「お願いします」
「金玉が潰れます」
「恐ろしいな!」
オブラートに包め。
「勿論本当には潰れません。あくまで『痛み』の話です」
いや、分かってますけど。
そのフォローを入れることによって恐怖が一段と増した。
「・・・・・どうします?使いますか?」
「・・・・・むう」
私は考えた。
恐らく、そんな痛みを受けたら私はその場で倒れ、入院ではすまされないかもしれない。
・・・・・しかし。
「愛する妻のためです!そのためなら私は金玉潰れようが関係ありません!」
「よく言った!つかオブラートに包め!」
・・・・・さっきから馴れ馴れしいな、この医者。
「そんなわけで、奥さんにも報告しておきます」
「あっと、それはやめてください。」
「・・・・・何故です?出産した後に夫が呻きだしたらホラーもいいとこじゃないですか」
・・・・・俺が倒れるのは前提なんですね。
「・・・・・いいえ!私は耐えて見せましょう!私の美談を後で妻に話すためにも、あくまで内緒でお願いします!」
「・・・・・恥ずかしいです、やめてください」