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光のしまなみ、夏のさざなみ  作者: 双鶴


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第27話 伊予ダービーの空と、スタジアムの熱

その日は朝から、松山の空気がいつもと違っていた。


オレンジ色のタオルマフラーを首に巻いた人、

青と黄色のユニフォームを着た家族連れ、

商店街には「伊予ダービー」の旗が揺れている。


愛媛SC対SC今治。

年に一度の“伊予の戦い”。


写真部の四人は、

加藤先生と一緒にスタジアムへ向かっていた。


「すごい人……」

湊は思わず呟いた。


「ダービーは特別なんよ」

ひよりが胸を張る。


「愛媛の人はね、

 この日だけは“街が一つになる”んよ」


悠斗が笑う。


「いや、二つに割れとるやろ。

 愛媛派と今治派で」


すずは静かに言った。


「……でも、どっちも青空の下で戦う」


湊はその言葉に、

胸の奥が少し熱くなった。



スタジアムに近づくと、

太鼓の音が響き、

応援歌が風に乗って流れてきた。


屋台の匂い、

タオルマフラーの色、

人々の笑い声。


「湊くん、撮るなら今やよ」

ひよりが言う。


湊はスマホを構えた。


オレンジと青の波が、

スタジアムへ吸い込まれていく。


(……これが“街の熱”なんだ)


すずが指さした。


「……光が跳ねとる」


湊はその言葉に導かれるように、

人々の影と光の境目を撮った。


画面には、

スタジアムへ向かう人々の背中と、

夕陽に照らされたタオルマフラーが

鮮やかに浮かび上がっていた。


「……撮れた」


悠斗が覗き込む。


「おお、ええやん。

 “試合前の空気”が写っとる」



スタジアムに入ると、

芝の匂いがふわっと広がった。


湊は思わず息を呑んだ。


「……綺麗だ」


緑の芝、

選手のウォーミングアップ、

スタンドのざわめき。


ひよりが言う。


「湊くん、前半は“スピード”が大事よ。

 選手の動きが一番速いけん」


すずが静かに付け加える。


「……影を見るといい。

 影が伸びると、動きが止まる」


湊は頷き、

選手の影を追いながら構えた。


キックオフの笛が鳴る。


スタジアムが一気に沸いた。


「うわっ……速い!」

湊は思わず声を上げた。


愛媛SCのサイド攻撃、

今治のカウンター、

芝が舞い、

ボールが弾む。


シャッターを切る。


しかし――


「……全部ブレてる」


悠斗が笑う。


「湊、ダービーは特別や。

 プロの中でも“本気の本気”やけん」


ひよりが言う。


「でも、湊くんの写真、

 “熱”が写っとるよ」


すずも静かに言った。


「……風が走っとる」


湊は画面を見つめた。


(……確かに、ブレてる。

 でも、なんか……生きてる)


前半は0-0。

でも、

スタジアムの熱はどんどん高まっていた。


湊は思った。


――後半、もっと撮りたい。


芝の匂い、

風の音、

人々の声。


全部が、

湊の胸を強く揺らしていた。


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