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光のしまなみ、夏のさざなみ  作者: 双鶴


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第26話 スランプと、悠斗のあったかい声

校内展示まであと一週間。

写真部の部室には、撮影した写真が机いっぱいに並んでいた。


「この構図、いいね」

「こっちは光が綺麗」

「展示の順番どうする?」


ひよりとすずは楽しそうに写真を並べていたが、

湊だけは黙り込んでいた。


ひよりが気づく。


「湊くん……どうしたん?」


湊は写真を見つめたまま、小さく呟いた。


「……なんか、全部“普通”に見えるんだ」


ひよりは心配そうに覗き込む。


「そんなことないよ。

 湊くんの写真、すごく綺麗やん」


でも湊は首を振った。


「違うんだ。

 すずさんの写真は“音”がするし、

 ひよりの写真は“温度”がある。

 悠斗の写真は“動き”がある。

 でも俺のは……ただ撮っただけみたいで」


すずが静かに言った。


「……湊くんの写真は、まっすぐ」


ひよりも言う。


「そうよ。

 湊くんの写真、好きやよ」


でも湊の表情は晴れなかった。


(……どうしてだろう。

 撮れば撮るほど、自分の写真が分からなくなる)


そんな湊の肩を、

ぽん、と叩く手があった。


悠斗だった。


「湊、お前さ……」


「……?」


「スランプやな」


湊は驚いた。


「分かるの?」


「分かるわ。

 俺もサッカーで何回もなっとるし。

 “上手くなりたい”って思った瞬間に来るんや」


悠斗は椅子に座り、

湊の写真を一枚ずつ眺めた。


「湊の写真ってな、

 “素直すぎる”んよ」


「素直……?」


「そう。

 見たまんま撮っとる。

 だから嘘がない。

 それが湊の良さや」


湊は黙って聞いていた。


悠斗は続けた。


「でもな、素直なやつほどスランプに落ちやすいんや。

 自分の“色”が見えんくなるから」


ひよりが小さく頷く。


「……分かる気がする」


すずも静かに言った。


「……光が迷うとき、ある」


悠斗は笑った。


「ほら、すずまで詩人みたいなこと言い出したぞ」


すずは少しだけ頬を膨らませた。


「……詩人じゃない」


ひよりが吹き出す。


「すずちゃん、かわいい」


湊も思わず笑ってしまった。


悠斗はその笑顔を見て、

満足そうに言った。


「湊。

 スランプなんてな、

 “成長期”みたいなもんや」


「成長期?」


「そう。

 背が伸びる前に膝が痛くなるみたいに、

 写真が上手くなる前に心が痛くなるんや」


湊はその言葉に、

胸の奥がじんわりと温かくなった。


「……ありがとう、悠斗」


「礼なんかいらんわ。

 親友やろ」


ひよりが笑う。


「ほんと、悠斗くんっていいやつやね」


すずも静かに言った。


「……あったかい」


悠斗は照れ隠しのように頭をかいた。


「やめろや、褒めんなって。

 俺、調子乗るタイプなんやけん」


部室に笑い声が広がった。


湊は写真を見つめ直した。


(……まだ分からないけど、

 もう少しだけ、撮ってみよう)


スランプの中に、

小さな光が差し込んだ気がした。


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